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2014年7月7日(初日)19:00

開演前、座席に座って、天井からのライトを浴びて、幕が上がる前の舞台を見上げてるだけで、「幸せ…」しみじみとかみしめました。
綾野さんの主演舞台「太陽2068」のことが発表されたのが今年の1月28日。約半年後の今日この日を無事迎えられて本当によかった。綾野さん語録を借りるなら、「生きててよかった」!

■初めてのシアターコクーン

蜷川舞台も初めて、シアターコクーンも初めて、でした。

広さは通っていた高校の講堂と同じぐらいで、この雰囲気、文化祭の演劇部講演を見に行って以来だ…なんて思ってしまいました^^;(レベル違う)

席に着くと、やたら通路を人が歩くのが響くなあ、椅子も揺れるなあ、なんて思っていたら。前方床下は空洞なんですね!(席も可動?)
そして、舞台が始まって驚きました。昼と夜に分かれた世界がビジュアルでそのままに、上は古い家屋が並ぶ村の風景、下はアクリルのイスとテーブルに青い電飾が輝く都会の風景。

座席の高さはちょうど2つの世界の境界あたりなので、キュリオの剛さんからは見下ろされ(きゃっ)、ノクスの成宮さんからは見上げられるという…贅沢な話!

■キャスト

六平さん、山崎さん、伊藤さん、中嶋さん、みなさんとっても素敵で。怪演な方も多数で、ほんとにもう同時に出てこられるとどなたを見ていいのか目移り状態!

夜の世界にすっと現れた成宮さんの美しいこと! 彫像のような完成された美形で…今まで生で見た人の中でいちばん綺麗な男の人と言っても過言ではないぐらい。生まれながらのノクス、森繁という役にぴったりです。舞台下に降りての芝居の時、この段階では消えているはずだった、演出で投げられた石ころ状の小道具が1個残っていたのを、さりげなくすっと蹴って舞台下に落としたしぐさが、めちゃくちゃカッコよかったです!

あっちゃんも可愛い! でも普通にしてたら身近にいそうな女の子という感じ…でもそれは登場時の結(ゆう)が普通の女の子だからだったのかも。
ラストの変化が本当に素晴らしく、妖しく色っぽく、「ああこれが天下を取った前田敦子なんだー!」と興奮しました。
血に濡れた美しさ、征治(山崎さん)につかみかかる時にぴくぴくとひきつった頬、ノクスになる決断をしたとき玲子(伊藤さん)に抱きしめられてこぼれた涙、どれも印象的。
泣き出しそうな喋り方とか、野性的な叫びとか、あっちゃんを活かす舞台になっていて、もちろん違う役でも良い女優さんなのでしょうけれど、とくに活きる役というか、最高の初舞台だったのではないかと感じました。

■そして綾野さん…

そして、われらが綾野剛! 綾野さんを見るといつもそうですが、その時の役にしか見えなくて、綾野さんがいるというより、「あ、鉄彦だ」という感じ。カーテンコールになるまで、舞台上にいるのは鉄彦で、綾野さんはいなかった。

声がすごくきれいに響いて、ベテラン演劇人の中でも違和感なんてまったくありませんでした。
鉄彦はとっても愛嬌のある役柄で(18歳!)、おしゃべりもしぐさも可愛い。ここまでコメディ寄りなのはイヌゴエ以来!?でも、激昂する場面はぴりぴりするような怒りが発散されているし、叔父の克哉(横田さん)に暴力をふるう場面では、まなじりが裂けちゃうんじゃないかと思うぐらい目を吊り上げた狂気の表情。
いろんな綾野さんを見ることができて、いろんな綾野さんの声を聴くことができて(変な声も多数・笑)、見ごたえがありました。

*余談…3日前のけいこから入ったという例のシーン、客席ではドラえもんのしずかちゃんみたいに「きゃあ」と手で顔を覆う人も。ああ、みちゃった…(マエバリ的なことしてたのかなあ…してなかったような気が……)

■綾野さんについて、印象的だったこと

綾野さんについて、代名詞のようなシーンといえば「涙」。いろいろなドラマで魅せられてきました。今回、泣くシーンはあるのですが、直後暗転することもあって、涙の印象はそれほど強くない。
それより、汗の美しさに、まいりました。
森繁(成宮さん)の手首をやむなく切断してその血を浴びた後、中央では別の話題が進行しているあいだ、舞台の隅でずうっと震えているのその途中から、急にあごを透明な滴が何度も何度もつたうのが見えて。汗だと気づくのに時間がかかるほど、すごくきれいで。

涙のようにコントロールできるものではないと思うけれど、鉄彦にとって重要なシーンで、それまでは目に見えるほどの汗はかいていなかったのに急にひっきりなしに汗が流れ始めたのには、なんだか圧倒されてしまいました。

*余談…その後、下で夜の舞台が進行している間、照明が落ちている上の舞台の隅に座ってタオルでごっしごっし汗を拭いている姿が、萌えでした。。(もちろん鉄彦としての姿であって素ではないですが)

■ストーリーについて

この舞台は、まずは、あっちゃんが主役というか、生田結の物語としてきれいに始まってきれいに閉じていると感じました。ダークというかホラーな結末だけれど。六平さんがおっしゃる「きらめく親子愛」の物語にちゃんとなってましたね!

鉄彦の物語は、むしろあの舞台の外に向かって走り出して行ったラストシーンから始まるのではないかと。1回目見た時点ではそんなことを思いました。

ほとんど主犯格として叔父のリンチ殺人(結果的にウィルス感染で死んだ)に関わったわりには、ストーリーや台詞上そのことについて葛藤とか後悔とかまで思索が深まっている描写がなくて、それでいいの!?と、そのあたりが消化不良になって…
結の変化の異様さを目の当たりにして、初めてキュリオとして生きることを考え始める。そして森繁との旅はどうなるのか…。

鳥肌ものの演出、ステージ後ろの搬入口を開け放して、彼方に渋谷の街の今の夜景が見える中、爽快に走り抜けていくラストには明るさとともに暗い未来への一抹の不安も感じて、周りの拍手を聞いて初めて我に返るほど、なんだか茫然としてしまいました。ふたりはこの世界を抜け出して駆けて行って、こちらは置いて行かれてしまったのか…うーん、次に観た時どう感じるか楽しみな部分です。

ただ、この一瞬だけが美しいというか。未来が明るいとは限らないけど、今のふたりの友情には真実があるんだろうなあ。ふたりで星の話をするシーン、ふたりでガイドブックを見ながら話をするシーン(下の写真)どちらもとても良いシーンでした。

簡単にはいかなけど、こういう美しい瞬間はたしかに存在する。

*写真は合同取材記事からお借りしました。*余談…芝居中この懐中電灯で剛さんに照らされる幸せったらもう(お変態)

■その他、いろいろ雑感① ノクス剛さん見たい

予想通りノクス衣装でも登場したあっちゃん、さすがの美しさ。透け感のある黒い生地で裾がバルーンシルエットになったミニワンピース、同素材のジャケット、スエードのニーハイブーツ。それまで結んでいた髪をおろして、唇も艶やか。
…くーっ、パラレルワールドで、ノクスになった鉄彦を見たいっ。
似合いすぎるほど似合うことでしょうね。

■その他、いろいろ雑感② まつがい

台詞の言い間違い箇所をあげつらうのは趣味がよくないと思うものの、綾野さんはわかった範囲で1回だけしかなくて(←すごいと思う)、しかもとても可愛かったので…

「キュリオを守りたい」というべきところ反対のノクスを守りたい、と言っちゃったとき「ノクスを守りたい…!違う!キュリオを守りたい」と、けっこう激しい台詞の勢いのままに力いっぱい「違う!」と言われて、自分に突っ込みを入れてるような感じで可笑し可愛かったーー
剛さんに違うと言われなければわたしは気づかなかったかもしれない笑

■その他、いろいろ雑感③ 投げた!

成宮さん、初日から大サービスで、着ていた森繁の門番ジャケットを客席へ! 今度はぜひ鉄彦のタオルを…っ。

■カーテンコールとスタンディングオベーション

ラストシーンで、すぐに万雷の拍手。乱れ飛ぶブラボーの声。スタンディングオベーション!

そしてカーテンコールで出てきたのは、もう鉄彦じゃなくて綾野さん。満足げで幸せそうな表情に見えてこちらまで幸せな気持ちに。初日、きっと100%の満足や幸福じゃなくてさらなる先を見ていらっしゃるんだろうけれど、とにかく初日は、無事終わりました!

座長だから当然なんだけど、キャスト一同で礼をするとき方向の指示をするんですよね(*^^*)いろいろな舞台で見慣れたその様子だけど、綾野さんがするとなると、また感無量で…ひだり、みぎ、センターと、頷きながら、何度も両手を掲げて、ひざに手をつけてお辞儀をして…目に焼き付けました!
そして、舞台挨拶でおなじみ去り際の一礼は今日も健在、成宮さんと左右に分かれて舞台袖で2人が一礼して締め。

初日がこの素晴らしい出来で、この先どこまで進化していくのか。千秋楽まで楽しみです!

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