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料亭Hの店じまいは、私を驚かせた。2023年上半期、一番の出来事だった。 料亭Hは、とある商店街の中にある。3階建ての建物で、門構えは木の引き戸、なんともいえない趣があった。それは大正10年創業という重みからきていたのかもしれない。初めて訪れた人は、思わず立ち止まってしまうだろう。私もそうだった。 私の住まいは、料亭Hの前を通って、商店街を5分ほど進んだマンションにある。ここに決めたのは、もちろんマンションが気に入ったからだが、料亭Hや商店街が醸し出すこの町の雰囲
「同行援護従業者(ガイドヘルパー)」として働き始めて半年。週3日、視覚障害者の同行支援をしている。 木曜日は、87歳の全盲の男性Aさん。 朝8時50分、ご自宅へ行くと、いつも決まって玄関ドアを開けて待ってくれている。 「Aさん、おはようございます。今朝の体調はいかがですか?」 Aさんは、いつも玄関に腰をかけている。すでに帽子をかぶって、リュックを背負い、ジョギンクシューズも履いている。 「はられさんかい? 今朝はとても気分がいいよ。血圧は112の77。脈拍は62。体温