新店OPEN※ この記事は開店から2日ほど経ってから書いたまま、公開しわすれていたものです。

なににつけてもうまくいかないという時期は、確かに人生において何度かある。
しかし、こうも長く続くのはどうなのか?

思い返せば今年の7月、生まれてはじめて「輩にやかられる」という経験をしたのを皮切りに、どうもやることなすことうまくいかない。

ちょっと前までは、怖いくらいに何をしていても飛ぶ鳥を落とす勢いで、急成長を遂げていた私だったけど、まぁその反動が来たんだろう。

うまくいかないからといって、時は流れるし、チャンスも待ってはくれない。
今ちょっと不調だから、とやりすごせるほど、人生は長くない。
やってきたチャンスの正体を見極めているうちに、そのチャンスはするりと指の間をこぼれてすり抜けていってしまう。

毒をもっているのか、刺すのか、かみつくのか。
やってきたチャンスの品定めをしている暇もないのだ。
不調であろうと、私は前に進むことを考える。
そしてその選択が、たとえどんなものであっても、後悔はしないと決めている。
反省はするけど、後悔はしない。
そうやって、今まで私は自分を嫌うことなく生きてきたのだ。


12月。
新しい店をオープンした。
「おめでとうございます」といわれるたびに、なんとなく違和感があったのは、それがはたしてめでたいことなのかどうなのかを、自分自身でも測りかねていたからだ。
やったーという気持ちには、到底なれない不安定な気分。
それは、その時々でだした「ベストである」という選択の先にあった、正体不明の憂い。

新しいお店は、わくわくする新しい試みのつまったお店だ。
しかし、いろんな要因が重なって、ベストな状態でオープン日を迎えられたわけではない。
なにをおいても重要な「餃子焼き機」が使えないという痛恨の状況で、ただ日付が過ぎてやってきたオープン日だった。

餃子屋なのに餃子が焼けないばかりか、そもそも油をひいて調理することもできない。
なぜかというと、駅という特殊な場所のため、特殊な設備を設けないと、防火の観点から油を使う調理ができないのだ。
その特殊な設備をつけるための、換気扇のカバーがなく、納期が不明のまま、オープン日がやってきた。

開店前日は不安しかなかった。
事務的な作業に追われて、開店日の用意がまるでできていなかった。
例えばレジに値段を登録する作業。
レシートプリンターをつなぐ。
つり銭を用意する。
そんな基本すら何も間に合っていなかった。

当日さながらにシミュレーションして、ごはんを何度も何度も炊いてはおにぎりを作ったが、これだという満足のいく仕上がりにならなかった。
いつも炊いている炊飯器と違うからか?
水がちがうからか?
炊く量が多いのか?
前に試作したとき、おいしかったあのおむすび。
なんであの味にならないんだろう。

ひとつひとつ試しては答えを探っていくが、なかなか原因がみつからない。
そうこうしているうちに、夜が明ける。
今できるベストを尽くすしかない。
とにかくやれることをやろう。
最善を尽くそう。

あと数時間で夜が明ける。
開店を楽しみにしてくれている人がいる。
その期待に応えられる私だろうか。

ふと、お客様に手紙を書こうと思い立った。
思い立ったら書かずにはいられなくなって、書いた。
書いたはいいけど、コピーするにもぜんぜんプリンターが動かない。
Wi-Fiの具合が悪いのかと有線でつないだら、立てかけてあったテーブルが倒れて、線がひっぱられ、プリンターもパソコンもぶっ飛んで床におちた。
もう、やることなすことうまくいかない。
試行錯誤を繰り返し、やっとプリント出来た数は60枚。
たったそれだけしか渡せなかった、お客様への手紙も、なぜかファイルを開くことができなくなって、読むこともままならない。

さっき、Googleの口コミが★2でついた。
よく2もつけてくれたなと思うくらい酷評だった。
ごはんが固いし糠の匂いがするとあった。
多分おむすびやへのコメントだろうなと思った。
ああ、そうだった・・・。

いつもお店では当たり前に出していた七分つきの玄米ご飯。
それを私がお客様に使え切れていなかった。
「お客様はこちらが思っている以上に、こちらのことを知らないので、そこを説明しないと不親切だ」と、商売の師に言われたことがあった。
伝えているつもりでも、伝わってなかったらそれは何も言わなかったのと同じか、むしろ悪い。せっかく七分にして持ってきてくださった農家の方にも申し訳ない。

寝食を惜しんで懸命に働いていようが、どれだけ商売に打ち込もうが、お客様には全く関係ない。
それでもこんなに頑張ってるのに、全然状況が好転していかないのはなんでなのかと、神に問い正したくなる。
不調が長すぎて、もう飽き飽きしてしまった。

そろそろ、明けてほしい。

※この記事は開店から2日ほど経ってから書いたまま、公開しわすれていたものです。





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