日報 2月2日
記入者:明明
今年の節分には、ちょっとした思いを込めていました。
「鬼は外〜」の“鬼”について、
ミンミンが今日思ったことを記します。
“鬼”と呼ばれるものの正体が、仮に、
人の内側に溜まったアク(灰汁)の塊みたいなものだとしたら、
アクは、
日々の行いの中で少しずつ溜まっていく行き場のない感情を、
どうにか昇華させようとして生まれた生命体なのね。
小さなアクたちは互いにくっついて、
ぷくぷく泡立つ。
一人じゃ心細い感情の泡粒だったけれど、
たくさんの小さな仲間とくっつけました。
それで泡たちは、みんな安心できました。
地球が太陽を一周する頃には、
アクは、自分でも驚くほどの大きさに成長しています。
安心するためにくっついていただけなのに、
もう離れ方すら忘れてしまっています。
ひたすら肥大するしかないアクは、
昔小さな泡粒だった時の自分を思い出せません。
行き場のない感情を慰めるために生まれたアクは、
自身の行き場のない想いを悲しみます。
日々解消できる中くらいのアクたちもいて、彼らは、
ちょっとした体調不良とか、対人関係のいざこざとか、
そういう日常のいろんな現象に化けて現れてくれます。
「ああ、アクさんか。いっぱい吸収してくれていたんだね」
そう言って最近の自分の行いに想いを馳せてみたら、
中くらいのアクは満足してスゥっと消えていきます。
アクは日々昇華できるものだと思っていたんだけど、
今年はね、節分だけは特別だと思ったの。
一年かけて体に溜まった巨大なアクさんは、
やはり威勢良く解放してやるべきだと思ったんです。
子どもの頃は、豆をまく所作が楽しかった。
床に落ちた豆を拾っては食べ、食べては拾った。
年の数なんて余裕で超えていたな。
イベントとしては愉快だけど、
今年はそれだけじゃ足りない気がする……そうだ、
全身全霊をかけて、
この身を清める日にしよう!
そう思ったのでした。
今日は電気回線の設備関係に強い知人、
通称べっこうメガネ君が会社に呼び出されていました。
彼は、半日電話につきっきりで、
電話回線契約会社とやりとりしてくれました。
だから、私は言ったよ。
「今日、近所の温泉にでも行かないかい?
豆まきもいいけど、体の中から綺麗さっぱりするのもいいなと思って!」
彼はちょっとあってから、
壁に貼ってあるばかでかいカレンダーに目をやりながら言ったよ。
「一日早く行って、験(げん)を担ごうって寸法ですね」
……私、なぜ今日を2月3日だと思っていたんだろう。
とんだ勘違い。赤面。嗚呼。羞恥心がうずく。
べっこうメガネ君は優しいので、
夕暮れ、一緒に歩いて温泉に行ってくれました。
アクさん、一年分の垢を落としてね。