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日報 2月6日

記入者:かくなみ みほ


小学校の6年生のとき、
わたしは放送委員会に所属していました。

登下校のアナウンスや掃除の時間の曲流しなど、
校内放送のほとんどを司ることが仕事でした。

中でも、給食の時間に流す放送の時間が好きでした。
思い出深いのは、「ヒット曲」を流す担当になったときです。



まず、録音のためのカセットテープを買ってきます。

その後、近所のレンタルCDショップへ出かけます。

「今週のヒットソング」が並ぶコーナーにて、
シングルからアルバムまで、ひとまずすべてチェックします。

ヒットソングの中でも、何か味わい深さを感じるもの、
「このジャケットかっこいいな」など直感に訴えてくるもの、
ちょっと昔の曲だけど、CMとかでこの時期よく聞くもの、

など、独断と偏見により3〜4枚を選び、借ります。

当時はMDも主流でした。借りてきたCDは、
もれなく自分のMDレパートリーにも加えられました。



家に帰ってからが、またお楽しみでした。
CDコンポに借りてきたCDを入れ、カセットテープを装着。

【CD→カセットテープ】
という録音専用ボタンがあります。これを押す。

すると、ガチャガチャ!ガチャガチャ!
という機械音を鳴らしながら、
指定した曲目から録音が始まります。

この、
ガチャガチャ!という音が、
幼いわたしを得意げにさせました。

「わたしは、とても精密で、特別な仕事をしている!」
そんな気分にさせてくれたのです。



そんな風にして録音した曲を校内全域に流す瞬間は、
またこの上ないものでした。

「ブーイングだったらどうしよう」
という緊張もありましたけどね。

いざ放送室の機材に自分のカセットテープを装着すると、
さっきまでの緊張のドキドキが、興奮のドキドキに変わるのです。

まるで放送室はコックピットでした。

給食中の各教室へ、
わたしの選んだ「ヒット曲」が流れている。

わたしはその時間を、深く、静かに味わいました。



給食時に流したヒット曲は、
たしか友人と2人で担当していました。

「たしか」がつくほど、記憶が曖昧です。
でもとても心地よい時間でした。

わたしはときどき吃るけど、
それをも超えて、放送の時間は楽しかった。

なんでこんなに美しい思い出になっているのか、
自分にもよくわかりません。



お昼の放送が終わると、ようやく給食にありつけます。

その、ちょっと冷め気味のおかずやご飯が、
またたまらずおいしいのでした。




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