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【2011年6月28日Cafe&Bar Brilliant】
 わたしと松乃さんがbrilliantに到着したときは、すでにお店は大賑わいだった。
 フロアに入ると10名くらいのお客さんが椅子にも座らず動き回っているのが見える。
 そしてログの嵐。
 嫌いではないのだけど、この中でしゃべるとなるとちょっと苦手。
 メインフロアにはエントランスのワープパネルからの移動だから、ロードのためにパネルの上でしばらく動けないのだけど、そのすきにそばにすすっと寄ってくる女性マイキャラがひとり。
 わたしたちが動けるようになるのを見計らったように声をかけてきた。
「いらっしゃいませー^^ おまちしてたわー^^」
 わたしはまだ数件しかMMのバー巡りはしていないけれど、こういった気配りと所作ができるオーナーのいるお店はひとつしか知らない。sophiaさんのお店だ。
 もっとも、奥でフレンドリーに招き入れるいわば洋風のsophiaさんと、かいがいしく玄関まで出向き迎え入れる和風の四季舞さんと接客のタイプに個性が出ている。
「こんばんはー」
「ばんちゃ^^」
「松乃さんいらっしゃーい。ようりさん、やっとお会いできたわー 見て私の首。キリンみたいになっちゃってないかしら^^ 待ち遠しかったわー」
「わたしも会えてうれしいです^^」
「きょうは楽しんでいってねー 不束者だけど私がんばっちゃうわー^^」
 わたしたちがあいさつをしていると、他の客から茶茶がはいる。
「あー、じゃあ今夜はグダグダだな。ぶーちゃんはお間抜けだから」
「そうそう、ポンコツ四季舞が頑張ると大抵グダグダになる」
 ちょっとひどい言いぐさだけど、いつものことなのか四季舞さんは手慣れたように返す。
「ひどいわー(;´Д`) ようりさん聞いた? イジワルよねー。まあ、お間抜けなのは本当だから困っちゃうわー(´-ω-`)」
「ジョーダンだよ ぶーちゃん。ようりさん、はじめまして。四季舞は楽しい良い子だから、よろしくねー」
「カンジのいい店だから贔屓にしてやってよ^^」
 なるほど、四季舞さんの人柄か、気の良いおっちゃんも常連なのだろう。
「あ、なんかいまのですごく良い雰囲気のお店ってわかっちゃいました^^」
「あら、ようりさんありがとう、うれしいわー^^ もしそう感じてくれるなら、それはお客さんのおかげなのよー。そうだ失礼じゃなきゃ、ようちゃって呼んでいい?」
 距離の詰め方!
「もちろん! ようちゃって年齢じゃないですけどw」
「あらかわいいわよー^^」
 すると、よく知る名前がログに飛び込んできた。

sophia:
 四季舞はそんなとこで立ち話してないで、はやくこっちに案内してあげて
sophia:
 松乃さん、ようりさん、Cafe&Bar Brilliantへようこそー^^

 うわ、sophiaさんおるやん。
「sophiaさんだ! なんでっ!?」
「びっくりした? お手伝いよ^^」
 Brilliantのカウンターの中にいるsophiaさんは、自分のお店にいる時とはまた違った雰囲気だった。
 これ、「MMの“着せ替え”にセンスとかwww」みたいにMMアイテムでのコーデセンスを理解しない人にはわからないだろうな。
……まあ、わたしの思い入れってのもあるだろうけど。
「ようちゃはsophiaとお知り合いだったわね。うちの営業日にはだいたいいつもお手伝いしてもらってるのよー^^」
「えーーー!!」
 すかさずsophiaさんが微毒を放つ。
「腐れ縁ってやつなの^^」
「何年になるかしらねー でもsophiaそれはこっちのセリフよ(´艸`*)」
 四季舞さんはそう言ったあとに付け足す。「でもホントにあの子にはお世話になりっぱなしなのよ^^」
 おそらくわたしに耳打ちするようなシチュエーションなのだろうけれど、もちろんオープンチャットだからsophiaさんにも丸聞こえだろう。
「四季舞ズルイわよ、自分だけ株上げて。ようりさんたちこっちよー^^」
 sophiaさんの呼びかけをきっかけに、四季舞さんはわたしたちの前に立って誘導してくれた。
「カウンターでいいかしら?」
「はい^^」
「今夜はBrilliantで主催したイベントの表彰式だったのよ^^」
「えっ もしかして貸し切りでしたか?」
「ううんぜんぜん^^ 楽しんでいってねー」

藤崎ゆめな:
 こんばんゎん

 なんでゆめなさんもおるん!? びっくりした。
「えー ゆめなさんもいたーw」
「ほいん^^」
 ゆめなさんは相変わらずのようだ。
「ゆめなんともお知り合い? その子はうちにときどき遊びに来る妖精さんねw」
『むふむふしか言わない』とか『妖精さん』とか、わたしの知る知性的でしっかりとした考えを主張できるゆめなさんはMMには存在しないのだろうか。
 もしかしてだけどゆめなさん、わたしと真面目にメッセージで語り合ったこと、黒歴史化してないかな。
 なんか悪いことしてしまった気分。
 でも絶対に良い人だから、わたしも全力でゆめなさんのキャライメージを守ってあげなきゃ。
 あ、フレ申請。
 ゆめなさんからフレ申請だ。
『ようりさん、フレンド申請いい?』
 やっぱりちゃんとしゃべれるんだよなあ。
『うれしい! こちらこそよろしくー^^』
『今度からようりさんの家にも遊びに行っていい?』
『うわーぜひぜひ!! ほとんどいないか、いても改装ばかりで入れないかもだけどw』
『^^』
『あ、もし連絡くれるときはメッセでおねがい。TELほとんど出ないから^^;』
『知ってるw』
 なんか、社交辞令じゃないフレンドが少しづつ増えていくなあ。みんな松乃さんのおかげだよ。
「わー なにこれ双子じゃんwww」
 わたしとゆめなさんが申請画面から戻ると同時にそばに近づいて来た子がいきなりそう言った。「あんたたち、双子みたいwww ぎゃはは」
 わたしとゆめなさんのことか。
「あら、言われてみればホントね」
 sophiaさんが言った。
「まあー 本当だわー すごくかわいい」
 四季舞さんも言った。
「双子www マジだwww」
 松乃さんまで。
 たしかに背格好はわたしとゆめなさんは似ている。
「むふー むふー」
 ゆめなさんが着替えのモーションをすると、パープル系のコーデになった。
 今夜のわたしも全体にパープル系のコーデだ。きっと双子と言われ、わざわざ似た衣装に着替えてくれたのだと思う。
 ゆめなさんがMMファッションを普段から楽しんでいることは、メッセージを交わすうちによく知るようになった。
 はじめてsophiaさんの店で偶然会えたときも、わたしのコーデに合わせて着替えてくれたっけ。
 あのときはわたしは自作のパンツドレスで、上下と靴もトータルなワンアイテムだったからまったく同じコーデになったけど、今夜の私はMMアイテムの組み合わせだ。
 さすがにまったく同じコーデは無理だろうけれど、結構近い見た目になっている。
 きっとふだんから荷物のほとんどは洋服が占めているのだろう。それほど着せ替えが好きなのに違いない。
「着替えたwww マジなんなのこれかわいーwww ねえ持って帰っていい? てか持って帰らせてーwww」
 最初にわたしたちのことを双子と言ったこの女性は、“ぽよよん”さんというらしい。
 周りの反応を見ると、悪い人ではなさそうだ。
「ねーようりちゃん フレ登録して」
 距離の詰め方がすごいけど。
 ホント……
 松乃さんとお友達になれてから、どんどんわたしの世界が広がってゆくなあ。


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