物語・観自在編 その6(「黄金の華の秘密106」)

過去と現在、現在と未来の関係性について、ひとつの物語を通して観察してみましょう。上手くいけば、あなたにも過去と現在、未来が同時に存在しているという事実を模擬的に体験できるかも知れません。

まずは今世(今生)のということに限定しておきます。

(過去世や未来世との関係性は後日に譲ります。)

いま田舎暮らしの貴方は、やはり田舎暮らしの恋人と二人して都会行きの列車に乗っています。生まれてはじめての旅行です。

列車の中では向かい合わせに座っており、貴方は進行方向を背にして座っています。

のどかな田園風景の中を列車はゆっくりと過ぎていきます。

景色は変わり映えのしない自然の景色ですが、時折農作業の為の小屋や民家が現れては過ぎ去っていきます。

先ほどから二人の真横に見える景色は、絶えず今の風景です。何か一つ二つ印象には残っているのですが、慌ただしさの中にいろいろと忘れ去られていきます。

貴方がさっき見えた小屋について事細かに恋人に話し始めると、恋人は怪訝そうな顔をして

「何故、そこまで(過去のことを)詳しく覚えてるの? まるでたった今までずっ~と見ていたみたいね?」

と応えました。

貴方は「何言ってるの? 僕には今でさえ(過去の)あの小屋は見えているんだよ。」

と応えました。

「(貴方には過去が)見えるの?!」

恋人はそっと呟きました。

しばらくは相変わらずの景色が続きましたが、やがて少しずつ民家が増えてきました。

すると突然恋人が目を輝かせながら、

「なんて素晴らしい景色なんでしょう!未来都市みたい!」

と叫びました。

しかし、貴方には恋人が突然何を言い出したのかサッパリ理解が出来ません。

と言うのも、窓から見えるのは遠くの自然(過去)と真横を過ぎ去る木造立ての民家(現在)だけなのですから。

貴方は、ただ、恋人の話に目を白黒させるばかりです。

ところが、それから10分もしないうちに驚くべきことが貴方の目の前に出現したのです。

驚くべきことは2つありました。

1つは、目もくらむような超高層ビル群とその近未来的なデザインの数々でした。

もう1つは、と言うよりも、これこそが貴方が最も驚いたことなのですが、貴方の恋人は、僅か10分とはいえ、未来に貴方が出会う景色をほぼ正確に、事前に言い当てていたのです。

「君はひょっとして未来が霊視できるのかい?!」

貴方は、恋人の顔を覗き込んで訊ねました。

恋人はしばしの間を置いて、「ええ、そうみたい」と応えたあと続けてこう言いました。

「でも、貴方だって、過去を霊視出来るでしょう?!」

二人は互いを見合いながら声を出して笑いました。

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