性病 or DIE
不意に覚えた違和感は自宅でちんちんを触った時だった、慣れたはずの感触は少しだけ、でも確実に普段のそれとは違っていた
これが例えば首の裏だったら、傷かなんかできちゃったかな、触らないでおこう、とスルーして数日後また触って確認するくらいのことだけど、ここは違う、ここだけは違う、ちんちんが今までと違うことなんてなかった、今すぐ目視せずにはいられない!!!
黒いぶつぶつがある!?!?!?
え、え、あれ、あれ、え、あれ、あれ?
なにこれ?ナニコレ?何これ!?
ちんちんの付け根、棒とチンゲの生え際、数は4、少し硬い、なにこれ!?
親指が真っ先にスマートフォンの検索画面に
陰部 黒 ぶつぶつ
と打ち込んでいた
目にうつる画面には聞きなれたことない単語、性病の羅列、しかも画像付き
なんだこれ、なんなんだ、どれかか、どれかなのか、不安の感情が心を埋め尽くす、やばい
いくら考えてもわからない、こんな時には誰に頼ればいいんだ、そうだ専門家だ、医者だ、病院に行くしかない
スマホの検索を近場のクリニックにしてすぐに発見、今の時間でもやってる、スマホを投げて服を着る、今すぐ診断を受けたい、こんな不安はそうない、今すぐ助けてほしい
「初診で予約してないんですけど大丈夫ですか?」
受付でこう言った時も不安は続いている、予約なんかじゃなくて黒いぶつぶつの正体が知りたい、一刻も早く診察してくれ
「大丈夫ですよ、保険証お願いします、あとこちらの問診票を書いてください」
保険証を差し出し問診票を受け取る、心はうわついたままだけど椅子に座って書き出した
住所、名前、年齢、電話番号、そのあとには質問が続いている
本日はどういった症状ですか?
陰部に黒いぶつぶつができました
いつ頃からある症状ですか?
さっき気づいたのでわかりません
そう書いてペンをボードに挟み、受付に渡した
「では少々お待ちいただけますでしょうか、順番になったらお名前をお呼びしますね」
貧乏ゆすりで不安は落ち着かない、意味がないことはわかっていてもスマホで検索してしまう、焦っていてもどうしようもないけどどうにかしていないとこころがどうにもできない
家でも見たページを何回も見直していると名前が呼ばれる、ああ、早く教えてくれ、俺はいったいどうなっちまったんだ、焦る気持ちを抑えて診察室に入った
「いまドクター来ますのでこちらにベッドで横になってお待ちください」
そう言って看護師がカーテンを閉める、診察室のなかは広く、何台かあるベッドに案内された、靴を脱いでベッドに横になる、高い天井は白く部屋は明るい、目に見える情報はすぐさっきまで調べていた性病の名前でかき消される、いまなら聴診器がなくても耳を当てただけで心音がわかるだろう
「失礼します」
カーテンが開くとさっき案内してくれた看護婦さんがいた
「すみません、もしかしたらエコーとるかもしれないのでベッドを移動していただいてもいいですか」
性病ってエコーとんの?全然知らないけどそうなの?あの赤ちゃんとるやつ?
「わかりました」
なにもわかってないけどそう言って別のベッドに移動した
違うベッドに移動しても天井は高いし白いしそれも性病の名前にかき消されるしドキドキは止まらないし、何も変わらない、早くしてくれ、と思うと同時に声が聞こえてきた
「失礼します」
男の人の声だ、カーテンが開くと、髪を7、3にセットした信用できそうな医者が目の前の椅子に腰かけた
「よろしくお願いします、早速ですが患部を確認してもいいですか」
「はい」
そう返事してズボンとパンツをおろした、脱いでいる最中に先生は青い手袋を手にはめていた
「では確認しますね」
青い手袋がちんちんにふれる、ちんちんを持ち上げて俺のぶつぶつをみつめる
「うん、ううん」
先生の口からもれる言葉を耳が逃さない、ううんって何?おれはどうなっちゃったの?
「あー」
なんのあーなんだ、不安は最高潮にたかまっていた
「これ、ただのイボですね」
帰り道はハンバーグを食べて帰った
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