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【謎】謎には答えなんて必要ないんだが?

扇情的なタイトルをつけるとアクセスが増えると信じているので、あえて強いタイトルにしました。別にそこまで「謎に答えは必要じゃない」過激派ではないということを最初に宣言しておきます。

この春(もう夏だが)、謎解きファンの間で話題の「宝探しと謎解きの違い」や、「持ち帰り謎にはヒントが必要」といったあたり話題から一歩発展させて(というより基本に立ち返って)考えたいと思い、今回の記事を書いています。

謎とはなにか

みんなが大好きなWikipedia大先生によると、「謎」はこう記されています。

謎(なぞ)は、
・物事が不可思議なこと。
・言葉遊びを用いたクイズの一つ。→なぞなぞ
・謎 (曲) - 小松未歩のシングル曲。La PomPonによりカバーされている。
・謎 (アルバム) - 小松未歩のアルバム。上記の曲を収録

下2つはともかくとして(名曲ですね)、普段私達が「謎」と聞いて思い浮かべるのは「物事が不可思議なこと」「言葉遊びを用いたクイズの一つ」あたりでしょう。
ことさら、謎解き界隈においては「謎」と言えば「専門的な知識や技術を必要とせずに、主にヒラメキなどで答えがわかるパズル・なぞなぞ・クイズの類」であると認識されていると思います。
しかしがながら、「謎」をそうしたパズル的なサムシングだと言い切っていいわけはありません。

謎解きはパズルじゃない。

「謎」という言葉がよく使われるのは、他にはミステリ(推理小説)の界隈が思い浮かびます。あちらで「謎」と言えば「不可解な状況」であったり「説明がつかない事件」だったりします。

他にも、「邪馬台国の謎」だったり「ピラミッドの謎」なんて歴史や都市伝説の界隈でも「謎」というワードは頻出です。「宇宙の謎」「深海の謎」なんてものもよく聞きますね。こちらは「現時点で解明されていないこと」です。はてさて「女心の謎」は男には一生わからないもので……うんぬんかんぬん。

そろそろ「コイツ何言ってんだ、馬鹿か」というみなさんの視線を感じます。何も本気で「だから謎に答えはないんだ(ドドーン)」とかをやるつもりではありません。とりあえず、「謎」という言葉は幅広いはずだったよね、ということを最初に投げておきます。

暗号とはなにか

ちょっと話をずらして、「暗号」という言葉について考えてみましょう。謎解きイベントを説明する際に「暗号を解いたりして~」と説明したことがある方も多いでしょう。

暗号というものは、簡単に言ってしまえば関係者以外が読めない特殊な手法、と言ってしまっていいでしょう。今はインターネットが普及し、パスワードの暗号化あたりがよく聞かれますが、ちょっと(?)前であればやっぱり暗号と言えば軍事的なものだという印象が強かったですね。最強の頭脳集団日本陸軍の残した暗号が誰にも解かれずに残っていて……なんて、ワクワクしますね!

特定の鍵を使って復号しないと読めないもの、そもそも異なる記号を用いて記すもの、暗号にはそこまで明るくないので細々と書くと学がないのがバレてしまうので割愛します。

いずれにせよ「味方」は解き方(復号キー)を知っているから読めるけれど「敵」が見てもさっぱりだ、というのが暗号です。

つまりは、何が言いたいかといえば暗号はそもそも「読ませないためのもの」ですよね。

宝探しの謎

私が現時点で一番大好きな宝を探すための暗号文はこちらです。

神と仏がおうたなら
巽の鬼をうちやぶり
弥陀の利益をさぐるべし
六道の辻に迷うなよ

わかるひとにはすぐわかる、マイ・フェイバリット・ランポである「孤島の鬼」の一節です。
孤島の鬼は若い時分は「BLだ!これは最高のボーイズラブだ!!」と愛しく読み、長じてからは「これは宝探しだ!ドキドキワクワクの冒険譚だ!」と興奮しながら読んだもので……逆じゃないかって? 逆ではないです。

「弥陀の利益」とあるとおり、これはお宝が隠されている場所を示すです。しかし、この文章だけを見てウンウン唸ってもさっぱりわからないタイプのやつです。にもかかわらず、文章だけでワクワクしませんか?「神と仏がおうたなら/巽の鬼をうちやぶり」というワードチョイスのセンスだなあと思います。(実際孤島の鬼を読むと「エッ!? 急に宝探し!? ナンジャソリャ!?」と思うかもしれませんが、それが乱歩らしさというものです)

はてさて、「宝探し」と言えば、一番の名作と言えばスティーブンソンの「宝島」でしょう。

主人公の少年ジムは、彼の両親が営む宿屋にやってきたビリー・ボーンズが残した、フリント船長という海賊が残した宝が眠る島の地図を手に入れます。なんやかんやあって、ジムは信頼できる大人といかにもあやしい大人たちと船に乗り宝島を目指すことになります。

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こちらが実際の宝島の地図です。なにがキュンと来るかって、島の色んな地名の名付け。この画像は青空文庫から引用しておりまして、原語になっていますが、偕成社文庫版の翻訳もいい感じです。

実際の宝の位置については、地図に「赤インクで書いた十字記号が三つ」書かれています。そのほかは、裏面に文言が残されているだけです。

「北北東より一ポイント(註二九)北に位して、遠眼鏡の肩、高い木。
 骸骨島東南東微東。
 十フィート。
 銀の棒は北の隠し場にあり。東高台の傾斜面にて、黒い断巌に面を向けてその十尋南のところに見出すを得。
 武器は、北浦の岬の北方、東に位し四分の一ポイント北に寄れる砂丘に容易に見出さる。
J・F。」

宝島においては、「宝探し」は実は物語で大きなウェイトを占めているわけではありません。現代の宝島といえば漫画「ワンピース」ですが、ワンピースにおけるワンピース(ひとつなぎの大秘宝)も、最初のうちは「おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世のすべてをそこに置いてきた!」という一言しか情報がない状態で物語が進んでいきます。

では、宝探し譚において重要視されているものは何かと言えば「冒険のワクワク」であり「友情、信頼、裏切りといった人間のドラマ」、そして「機転を利かせて危機を乗り越える爽快感」です。宝探しにおける、地図や暗号を解き明かし宝を見つけるのは、まさに「機転を利かせて危機を乗り越える爽快感」の権化のようなシーンです。

「謎解きイベント」における「謎」

「謎解きイベント」は広義とし、とにかく何でもかんでも含めると想定します。

「謎解きイベント」における「謎」は、簡単に言ってしまえばゲームにおける「フラグ」です。

ロールプレイングゲームでは「村人Aに話しかけることで、フラグが立ち村から出られるようになる」みたいなことがあります。この「村人Aに話しかける」が「フラグ」です。謎解きイベントにおいては「謎の答えをチェッカーに渡すことで、次の謎がもらえる」という「謎の答えをチェッカーに渡す」がフラグになります。

※書いてて思ったけど「謎の答えを渡して謎を貰う」って狂ってるな。

謎解きイベントを広義にしていき、体験型イベントへしていくにつれそれは明らかになり、「NPCに〇〇と伝えて情報(ゲームの進展)を貰う」という風に形が変化していきます。

ちょっと話がややこしいのは、謎が果たす「フラグ」は、ぱっと思い浮かぶような「村人に話しかける」といったことだけではなく「ボスを倒す」といった意味合いも含まれます。
過激謎好き集団が「謎解きイベントの醍醐味は謎だ」と言うのは「RPGの醍醐味はボス戦だ」と言っているのとだいたいニアリーなものだと私は認識していますが、そりゃそうですね。苦難を乗り越えるその苦難が魔王ではなく大謎として(魔王が大謎を出すこともあるけど)プレイヤーに降りかかります。

ただし、このパターンは「スタートがあってゴールがある」いわゆる「ロールプレイングゲーム型」でのみ成り立ちます。謎解きイベントでは多くのパターンが「目的があり、それをクリアできるか/出来ないか」で成り立っていますので、かなりロールプレイング型と言っていいでしょう。(※勇者が魔王を倒せたらクリア!みたいな)
謎解きイベントにおいては、あまり数は多くありませんがそれ以外の形式も存在します。

とにかく謎を解くことが目的のもので、たとえば解けた問題数を競い合うもの。相手より早く解けるかを競い合うもの。相手ではなく自己ベストを目指すもの。こうしたパズルゲーム型や格闘ゲーム型っぽいイベントにおいては、謎はフラグではなく、それ自体が目的となります

謎が謎である謎

"Why is a raven like a writing desk?"

日本語訳すれば「カラスが書きもの机に似ているのはどうして?」となります。こちらは、ご存知「不思議の国のアリス」において帽子屋がアリスに問いかけたなぞなぞです。このなぞなぞは、物語中で答えが提示されません。そのままアリスはハートの女王と出会い、夢から目覚めます。
※アリス研究やなぞなぞ研究でこのなぞなぞの答えっぽいものは幾つか出ています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%BD%E5%AD%90%E5%B1%8B#%E5%B8%BD%E5%AD%90%E5%B1%8B%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%9E%E3%81%AA%E3%81%9E

謎は答えが出ればそこで終わります。
小説は最後のページをめくれば、映画はエンドロールが終われば、絶対にそこで終わってしまいます。

ここからは手元に底本がないので記憶だけで適当に書くのですが、清涼院流水の「コズミック」(たぶん。ワンチャン別のJDCシリーズかもしれない)で「小説は途中でページを閉じて読むのをやめてしまえばそこで終わる。そのあとにどんな結末になるのかは読者にゆだねられてしまう」みたいなことが書いてあったはずです。

びっくりすることに、人はすべての本を読み終わらないのです。漫画の連載を最後まで追わなかった作品がたくさんあるんです。そうしたときには、読者の永遠にそのお話に終了はないのです。

答えがない謎ということは、一生噛み続けられるガムです。

しかし、無味のガムでは誰も噛んでくれません。

"Why is a raven like a writing desk?"という答えのないなぞなぞが現代まで忘れられず、様々な答えをこじつけられているのかと言えば、そこにはアリスと言う美味しすぎる味付けがされているからです。
実際はキャロル自身が「あとから思いついた」答え“Because it can produce a few notes, though they are very flat; and it is nevar put with the wrong end in front!”もあったりしますが、別にこれは答えじゃないですもんね。

まとめ

ある特定状況下でない限り、謎に必要なのは答えと言うよりも見た瞬間にワクワクさせること。

奇しくも、まさに「面白いよりおもしろそうが強い」のである。



三月ちゃんをいろんなイベントに出張させることが出来ます。ヤバそうなイベントに自分で行く気はないけど誰かに行ってきてほしいときに使ってください。