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やっぱり謎解きイベントのストーリーがつまらないワケ

下記noteを書いてから、早いことでもうすぐ5年。

こちらは、「ある映画館からの脱出」があり得ないことだらけでムシャクシャして書いたものでした。(今思い出してもマジでつまらなかったな)
そこから年月を経て、当時バリバリにリアル脱出ゲームが好きだった人は卒業し、また新しい層が流入し、古参老害は相変わらずぶちぶち色んなことを言っています。

そんな中、不意にツイートしたこんな内容に、よくわからんけどみんな共感してくれました。

というわけで、今回はこのツイートの補足として、「あれから5年、結局謎解きイベントのストーリーはつまらない」ということをダラダラ語っていこうと思います。

体験型イベントって、何を体験するの?

体験型イベントの多くで「ゲームやアニメ(映画や漫画や小説などのフィクション)でしか体験したことのないことを、あなた自身が自分の肉体を使って体験する」ことが出来ます。

(たぶん現代日本ではflashの脱出ゲームをやったことがない若者が多いんでしょうが)リアル脱出ゲームはflashで作られた、ブラウザゲームの一種である「脱出ゲーム」をリアルに体験することができます。少しずつ発展していく中でよくある魔王・勇者モノを体験できるシナリオや、よくある恋愛ものの体験ができるシナリオや、よくある……

おっ?

ここでいう「よくある」は「物語の類型」というよりも「お約束」であることが多いです。

典型的なものは、遅刻しそうになった主人公が走って学校へ向かう途中、十字路で少女 (少年) とぶつかり、それが出会いの始まりになるというタイプのボーイ・ミーツ・ガールである

↑百万回は見ましたね。

さて、このお約束ですが、私は百万回見た気がするんですが、全日本人が百万回見たことがあるでしょうか?

お約束の通じる範囲

お約束が「特定の物語パターンで頻出する展開」であるとすると、そもそも特定の物語パターンを知らない人はお約束と認識されないものです。

「16歳になった!→勇者としての旅立ちだ! 王様に挨拶しにいって酒場で仲間探しだ!」という魔王・勇者モノのお約束(テンプレ)は、ドラクエ3やその後のドラクエ3フォロワー作品を知らなければわからない。「ラベンダーの匂いだ……」といったところでXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX(ネタバレを避けています)。

ちょっとこの例は特定の作品にこだわりすぎていますが、もう少し幅が広いことを言えば……

「嵐の夜、山荘に閉じ込められた10人の男女」と言って、殺人事件が起きて10人の中に殺人犯がいる……ことはありません。「嵐の夜、山荘に閉じ込められた10人の男女」を突然ゾンビが襲い出してもいいじゃない。なんだその屍人荘の殺人は。

それ以外にも、たとえば「好きな女の子の家に電話をして、親が出て焦った」という「お約束」がありますね。……ん?意味がわからない?LINE通話しろ?おっしゃるとおり。これが通じるのは30代以上じゃないでしょうか。固定電話があった頃の「あるある」「お約束」ネタです。

とにかく、お約束は通じないことがあります。世代・性別・趣味趣向の差は大きくなります。

となると、「お約束をもとに商業ベースで多くの人の共感を得るためには」どうすでばいいでしょう。

物語共感力・想像力偏差値50はどこだ?

実際はこんな作り方はしませんが!

結局、一番「多くの人がお約束を理解し、共感できる」ためには「物語共感力・想像力偏差値」というものが仮にあったとして、それが50以下の「お約束」「ストーリー展開」で行われる必要があります。

個人的には、こんなイメージを持っています。

勇者が魔王を倒す ◎

勇者が魔王を倒そうとするが、実は魔王はいいヤツで裏ボスがいた ○

勇者が魔王を倒そうとするが、実は魔王はいいヤツで裏ボスがいて、それはいわゆる「作者」というやつで、物語を生み出されなければ魔王という存在も勇者という存在も生み出されることはなかった、すべての根源悪は作者であり読者であり △

勇者が魔王を倒そうとするが、実は魔王はいいヤツで裏ボスがいて、それはいわゆる「作者」というやつで、作者を構成するタンパク質物質はそもそも海から生み出され、地球が生まれた頃に戻り、いや宇宙ビックバンを引き起こしたそもそもの<ゆらぎ>が作者でありその作者は魔王であり勇者でありすべての根源は一つの同一存在であり、時間の過去も未来もフィクションも現実も一切の区別がなく ×

適当に書いてますが、読書家の皆さんに言わせれば……ぶっちゃけこれ最近どれもまあまあ見ますよね? でも、体験型イベントとして成り立つかどうかはってはなしです。

もちろん「限られた時間のなかで複雑なストーリーを理解できない」という論点もあります。というか一番下はなんだ。

あまりに見の蓋もないことを言うと……

「夢に潜って事件を解決だ♡」というのはあるあるで通じるが、パプリカやインセプションのプロットを体験型イベントにすると死ぬ。


しかし、本当にそれだけでしょうか?

「お約束」が「特定の物語パターンで頻出する展開」である以上、「特定の物語パターンが大好きな人」だけを集めることにより、より多くのお約束のパターンが物語共感力・想像力偏差値50に含まれることになります。

ミステリファンを集めれば、あんまり説明なく「秘密の通路は一個までだよね~」とか言ってもいい気がします(ホントか?)し、アイドリッシュセブンファンを集めたら「四葉環のそばに王様プリンがないのはおかしい、これは誰かの変装だ!」とか言ってもいい気がします(伝わらない)。

「特定の物語パターンが大好きな人」を集めるのは、宣伝であったりタイトル付けであったり、よりストロングスタイルをキメるならば事前に色々アンケートをしてもいいわけです。

本当に謎解きが義務教育レベルで構成されているなら、義務教育レベルの学力があるか試験して一定の得点が取れなかった人はゴメンナサイしてもいいわけです。

こうした方法は、実際特定ジャンルのオフ会であったり、業界勉強会的なののお遊びであったりでは行われています。

とはいえ、(学業や学問はともかく)物語ジャンルであればなにかの解釈は1人1人違うものです。自分の中では「これは王道」であるものは王道ではなかったりしますし、はたまた頭の中がどうなってるのかわからない系ヤバヤバマンが作った読むドラッグ的なシナリオはどうしても体験型イベントには向きません。キマっちゃいます。

結構多くの謎解きイベントでは「ストーリーシートを読み込むことで物語が見えてきて大謎の解き方が見える」なんてことがあります。つまり、予測可能な物語なのです。(そして予測不能な物語をED映像とかでぶっこむと不満に繋がります♡)

おわりに

「体験型イベントのストーリーはつまらん」ということをダラダラ書きましたが、断っておくと「だからダメだ」と言っているわけではないです。「そういうもの」と理解した上で、どう面白いものを作るか、どんな面白いものが生まれてくるかっていう話です。

「王道を作ればいいんだろ」で終わってしまうことが多い、体験型イベントのストーリー展開で、さらにもう一歩進んでほしい。

私はこの話が大好きですが、世界中の謎解きや体験型イベントが全てこれになったら大声で泣きわめきます。


おわり

三月ちゃんをいろんなイベントに出張させることが出来ます。ヤバそうなイベントに自分で行く気はないけど誰かに行ってきてほしいときに使ってください。