機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 感想


最初にこの企画の存在を知ったときに思ったことは「正気か?」だった。まあ大体の方も同じことを考えたのではないんですかね。もともと1話30分(正確にはそれ未満の23~24分程度)の枠の中で作られたあの15話を劇場版として100分ほどに拡張するのだから、当然何を描くの?となるでしょ。とはいえ「ククルス・ドアンの島」はいわゆる一話完結な話ではあるし、ドアンは初代のエピソードの中でもまあ個性ある方だからまあなんとかなるのでは……と思えたりもしたんですけど。


最初に言っておくが楽しめなかった訳ではない。当然ながらorigin版の完全リファインしたガンダムが動いているのを見れたし、TV版のようなどこか有機的な動きをする戦闘シーンをつくっていてニヤリとできた部分はある。キャラにしても15歳のガキっぽさのあるアムロだったり、まだまだ未熟なブライトやカイさんが見られたのは正直嬉しかったよ。

それ故に感じられたのが、「古臭さ」なんですね。元がそうなんだから当たり前だろ、と思われるかもしれないがそれにしたって進歩がない。具体的に言うとシナリオ大筋の変化のなさが問題なのかなと感じました。というのも伸びた分の尺で追加された話がほとんどククルス・ドアンの本筋に関わってこないというか、いらんかったなこれ……ってなるものだったと思います。
 サザンクロス隊とかドアンと因縁あります、って感じで出てきてるけどこちらに伝わるのは「なんかドアンが裏切った」ぐらいのもので、特に掘り下げらとかはない。一応今作のドアンはシャアと並ぶぐらいのエースだったらしいので脱走されたときのショックもでかかったとか、後任の隊長が比較されてイラついてたとか慮ることはできるんですが描写としてはほぼないです。女が湿っぽいぐらいで。本当になんもないのでドアンに対しての解像度が上がるとかがないんですよね。別の話だけどボッシュ大尉とかカラバ所属だった、で一気にキャラの解像度が上がったのにドアンに関してはほぼ変わらんかった。あとサザンクロス隊の面々もなぜかドアンと一対一で戦うせいで隊長以外は負けてくので、しょうもないんですね。貴重な高機動ザクが消えてく……
あとサザンクロス隊の造形もテンプレート的な悪役という感じなのが一番残念でした。好戦的でチンピラのような外見の三下、強面大柄で激情に駆られる隊長とこれ以上ないぐらいに浅く淡泊なキャラになっているのが見てらんなかったですね。これで「過去からは逃れられんか」と言われても困るよ。アムロ周りは感情の流れとかがまだ描写されてる分、旧態依然とした勧善懲悪の流れに見えてしまう。


ゴップとマクベの会談とかも本当にあんま意味がないんですよね。ぶっちゃけ政治劇めいたものがいるシナリオでもないのにわざわざつけてるのは困惑してしまった。ミサイル周りはかなり描写が省いてるのも雑に思える。元々の残地哨者(あってる?)を倒して成り代わり、ミサイルを少しずつ解体して無力化しようとしていた、ということで合ってるんですかね(連邦に発見させておけばいい気もする)。正直主要都市を焼くための兵器なのに管理方法が粗雑すぎやしないかとも思うし……よく分からんね。

見終わったときには「正直もやもやするけどまあ見れるだけ良かったよな」程度に思っていたのに感想が割と高評価ばかりで自分の中の反逆心が暗黒面となって発露いたしました。


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