見出し画像

応援の気持ちを形にして届けたい 

 今年もついに麻雀格闘倶楽部の投票選抜がはじまった。投票選抜戦は2ヶ月間にわたる、麻雀格闘倶楽部アーケード版で最大のイベントだ。コロナ禍以降下火といわれるゲームセンターでも、この期間は稼働率が一気に上がる。おそらくゲームの売り上げに占める割合は極めて高いだろう。

 このイベントは日本プロ麻雀連盟のプロ雀士の人気競争でもある。上位票を集めたプロは年末に開催されるプロNo.1決定戦に参加できる、次バージョンでは男性はジャケット、女性はチャイナドレスを着てPVでピックアップされるなどの特典がある。一方で下位に甘んじたプロは、麻雀格闘倶楽部の出演権を失う可能性が高くなる。たとえ麻雀が強くとも、集客力のないプロは交代要員となるのだ。プロ連盟に所属するプロ雀士にとって、麻雀格闘倶楽部に出演することは目標でありステータスである。出演権を失うわけにはいかない。プロ自身の参戦率が得票数に影響するシステムのため、出演プロたちもこの期間は時間を捻出して麻雀格闘倶楽部を打ち込むことになる。ユーザーにとってもプロに取っても重大イベントなのである。

 言うまでもないことではあるが、この投票抜選戦は平成の時代に一世を風靡したAKB48の選抜総選挙を模したものである。選抜総選挙の「CDではなく投票券を売る」いわゆるAKB商法が拝金主義的だと批判されたように、投票抜選戦にもネガティブなイメージを持っている方は多いように思う。あんなもの、女流プロに入れ込んだオジサンたちから搾取するためのKONAMIの集金イベントではないかと。実際、投票抜選戦でユーザーが投票数で上位入賞を目指して2ヶ月間毎日格闘倶楽部を打ち続ければ、プレー料金は相当な金額となるだろう。辟易する人の気持ちも分からなくはない。しかし、投票イベントの祖であるAKB48の選抜総選挙は、運営がCDの売り上げ拡大目的で始めたわけではなく、ファンの要望によって生まれたものであるということをご存知だろうか。

 AKB48とその姉妹グループは従来のアイドルとは比べ物にならないほど多数のメンバーが所属している。全員が全員平等にメディアに出演できるわけではない。テレビや雑誌に出演して脚光を浴びるのはグループの中でも選ばれた精鋭たちである。かつては、秋元康の独断によりメンバーが選抜されていた。それに対して「運営側が一方的にメンバーを選定するのはフェアではない」というファンからの不満の声を受けて、それを利用するような形で生まれたのがあの選抜総選挙というシステムだった。ファンがメンバー選抜の民主化を勝ち取った結果ともいえなくもない。かくして選抜総選挙にファンは熱狂し、良くも悪くも「推し活」に対する世間の認知度が上がった。そしてAKBグループのメンバーたちは、人気によって容赦なく序列が付けられる定めとなったのだ。

 規模こそ違えど、麻雀プロも人気競争の世界であることに変わりはない。3000人いると言われる麻雀プロの中で、放送対局やメディアにレギュラー出演できるのは一握りである。その頂点であるMリーガーは36人しかいない。もちろん麻雀プロにとって一番大切なのは雀力であるが、人気も必要不可欠な要素である。実力を評価されていていも、タイトルを獲得してもMリーガーになれないプロはたくさんいる。麻雀闘倶楽格部の投票選抜戦は人気が投票数によって可視化されてしまう非常に残酷なイベントである。企業は数字を重視する。人気がないと企業に判断されたプロの先行きは厳しいものになるだろう。プロにとってもファンにとっても企業にとっても、投票選抜戦は非常に重要なイベントなのである。

 6月10日、セガサミーフェニックスから魚谷侑未と東城りおの契約終了が発表されて衝撃を与えた。クビだ解雇だと一部で騒がれたが、おそらく二人にはフェニックスに残る道はあった。公式に退団理由は明かされていないが、二人が日本プロ麻雀連盟に所属し、KONAMIとの契約上MJに参戦できないことが原因であったことは間違いないだろう。裏を返せば、連盟を脱退し団体移籍してMJに出演できるようになれば契約更新できたのではないか。しかし、どれほどチームに感謝し、近藤誠一を敬愛していたとしてもその選択はなかった。二人は日本プロ麻雀連盟のプロとして生き、麻雀闘倶楽格部への参戦を続ける道を選んだのだ。どうだろう、もし投票先を迷っている麻雀格闘倶楽部のユーザーがいれば、今年はMリーガー復帰を目指す二人を応援する気持ちで、魚谷侑未・東城りおに投票しようという気になってくれないだろうか。今までこのイベントをスルーしていた魚谷侑未のファンも、参加してみないだろうか。

 推し活にはいろんな形がある。Xのポストにいいねするだけでも立派な応援だし、応援のコメントをする、ファンレターを送る、ファンアートを書く、雀荘イベントをはじめとするゲストに行く、グッズを買う、投げ銭をする、などさまざまな活動があるだろう。投票選抜戦も、ファンなら参加するのが必須などとは言わない。しかし一つだけ確かなことは、応援する気持ちがあったとしてもそれを形にしなければ何の意味もないということだ。

 投票選抜戦は応援の気持ちを分かりやすく形にできるイベントである。もし上位入賞を目指すとなると相応のお金と時間が必要になるが、そこは個人の裁量次第である。決して無理をする必要はない。また、大量購入したCDのように費やしたリソースが無駄になることはない。当然プレイしただけ麻雀を楽しめるし、規定の投票数を獲得すれば「優先マッチング権」が与えられる。推しプロがゲーム参戦中にモードを合わせれば現実的な確率でプロとマッチングできるようになり、これを目当てに投票しているユーザーも多い。投票選抜中は魚谷さんはもちろん、多数の有名プロが毎日麻雀闘倶楽格部に参戦する。期間中に何十回もプロと対戦できる非常に楽しい夏のお祭りでもある。

 誰かの為に麻雀を打つというのも新鮮で良いものである。あなたの参戦をお待ちしています。

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?