映画『HAPPYEND』2024日本★★★

坂本龍一さんの息子さんの空音央さんによる長編青春映画

よかったところ
(1)映像が美しかった
日本の都市部を映像美たっぷりにとるとしたら、こういう画がいいよね、
という映像が多かった。
ビルの合間に見える赤いクレーンからの都市映像、下にカメラを下げて出てくる地の底のような映像。高速道路の下、映画冒頭の赤いテールランプ、最後の歩道橋。この監督さんはまずは絵作りがとても綺麗な人だな、と思った。黄色い車も対比的で良かったし、教室のモップの拭いた跡の映像もよかった。

(2)音楽がよかった
DJの音楽のビートサウンドはもちろん、いろんな局面で流れる音楽がとても良かった。最後のラストシーンの音の付け方は、戦メリっぽいなーと思う。
わざとかなーとか思ってしまった。
緊急地震速報のサウンドも効果的だったと思う。

(3)ユーモアのセンスが良かった
この映画、ところどころにかなりアイロニカルなブラックユーモアが差し込まれていて、そこはとても良かった。ダイアローグの吹き替えシーンが2回くらいあるんだけど、それがかなり好き。佐野史郎もさすが名俳優。彼が出ると喜劇になる、と思う。

(4)陳腐でない友情の描き方が良かった
主人公2人はある秘密の暴露を巡って異なる態度をとる。その辺りがこの映画の肝かなと。通常の友情の描き方ならこうするだろう、という既定路線に走らず、大きなものに巻かれたり、経済格差を表したり、国籍の差を示したりする中での友情の描き方は良かった。ユウタ役の栗原颯人さん、とてもハマり役だったと思う。

イマイチだったところ

エスニシティの描き方がわざとらしい
この映画では日本で学ぶいろんな外国につながる生徒が描かれていて、そこは結構期待ポイントだっただけに、見終わった後、うーん、と思ってしまった。あんなにいろんな外国人生徒出すならお金持ちも登場させようよ。コウをわざわざ苦学生設定で描く必要あったかな?あそこで「寿司よりキンパ」的に出す必要あったかな?警察官が何度も職務質問するんだけど、それももちろんあるだろうけど、そこまで執拗に描く必要あったかな?
自衛隊のシーンも「なんじゃそりゃ?」というシーン。色々差し込みたいこと多すぎたのかな?日本にはいろんな外国人が住んでる。外国人生徒を日和見か革命家だけでなく、いかにも管理社会重視の発言させても良かったのでは?
自衛隊や警察の描き方も気になった。あんなに国家権力を頭ごなしに否定するのもどうかな?監視社会に対する批判は当然あるべきことで、安全と引き換えに自由が脅かされることへの反論は当然あるだろうし、そこに対して生徒が抵抗するのはスッと見られたんだけど。。。

まあ、やっぱり、伏線が多すぎて尖りが弱くなっちゃった映画、という印象。個人的におもしろい映画って、一見どこにつながりがあるのかわからないストーリーラインが複数提示されて、ラストに向けてそれが一気につながり、化学反応で爆発するような、そういうところがある。この映画はそういう化学反応は弱いかな〜


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