品詞分解

 さて中一の一学年六クラス丸々の国語を担当していた教科担任は一風変わっていて言う人に言わせればA女史は学者ぶるのが好きだからというその根拠或いは一つの表れ方として文法が異様に異常にある意味病的に好きで中でも副詞及び副助詞をこよなく愛していたので我々は県下全域と同じ教科書に従って授業を受けていながらその実ほぼ一年間丸々品詞分解ばかりやってそれしかした記憶がないほどで勿論試験ともなればごく普通に漢字を書き漢字の読みを書き二十字以内で要約し主人公の気持ちを当てたりなどするのだけれどそういう知力は専ら宿題によって培われ授業中は何をやっていたかというと生徒は皆赤ペンと青ペンと黒ペンそれぞれ一本ずつ計三本を同時に片手で持ち教師の指示通りに傍線や波線や傍点を記入するという妙な能力を五十人弱かける六クラス全員がもれなく獲得したものだが今にして思えば赤と青と黒の三色ペンを一本持っていれば済む話それとも当時そんなものはいやいくら何でもそんな物ぐらいあった筈それも今となってはどうでもいいがたいして役に立つわけでもないその能力を習得する傍ら理解は後から付いて来るとばかり念仏のごとく唱え続けた種々の活用その活用形を振り分ける枠のミゼンレンヨウシュシレンタイカテイメイレイが頭の中で未然連用終止連体仮定命令になったのは随分時間が経ってからだけれども兎に角そのA先生のおかげをもって品詞分解ソフトを用いなくても文章中の形容詞や副詞を判別できる能力を獲得したわけだがしかし問○は品詞に拘ることに本当にそれほど意味があるのか要するに説明や修飾を排除してSVOCだけで文章を作れということではないのかと疑ったりもしている。

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