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ゆとりのゲーム感想「ブレイジングビークス」


【はじめに】

インディーズゲームは良い。100円で数時間楽しめるものや1000円で30時間ぐらい楽しめるソフトばかりだ。しかも、3DSやWiiUの時代と比べて、量も質も格段に上がった。あぁ、「グーの惑星」で盛り上がってた子供時代が懐かしい。

さて、私が所有するSwitchにもインディーズゲームはたくさんあるのだが、その中でも屈指の人気を誇るジャンルがある。

「ローグライク」だ。

知らない人に説明すると、入る度に変化するダンジョンに入り、ひたすら奥地を進んでいく。道中でレベル上げやアイテム回収を行い、自身を強化していく。そして、最奥地にいるボスを倒せばクリアだ。ただ、他のゲームと違って一度死ぬと、レベルは初期値に戻り、全てのアイテムは回収される。(いわゆる不思議のダンジョン系である)

とまぁ、かなりハードな仕様のゲームだ。

歴史は古く、原点である「Rogue」が生まれたのは1980年代。本作は世界3大RPGとして「ウィザードリィ」や「ウルティマ」と並べられることがよくある。日本だと1990年代に発売された「トルネコの大冒険」や「風来のシレン」が有名だろう。"1000回遊べるRPG"というキャッチコピーの通り、奥が深く中毒性の高いゲームジャンルとして知られている。

日本で有名なローグライクゲーム
「トルネコの大冒険」

さらに時は進み、そのローグライクの要素を少し残し、別のジャンルと組み合わせたジャンルが生まれた。

「ローグライト」である。

ストアを見てもらえれば分かるが、もうあらゆるジャンルのゲームにローグライクの要素が追加されているゲームが山ほどある。

ローグライク+リズムゲーム
ローグライク+カードゲーム
ローグライク+弾幕アクションetc...

「ローグライク」+「リズムゲーム」の
「クリプト・オブ・ネクロダンサー」
BGMに合わせて移動するという面白いシステム

おそらく、一度死んだら全て失ってやり直し、というシステムによって常に緊張感のあるバトルが楽しめ、そこに"運"の要素が加わることで、「次ならいけるかも!」といったリプレイ性の高さを生んでいるのだろう。文字通り、神がかったバランスを作り出す優れたゲームシステムである。

さて、今回紹介するのはそんな「ローグライク」に「ツインスティックシューター」をミックスさせた「ブレイジングビークス」を紹介しようと思う。

インディーズゲーム
「ブレイジングビークス」

【ゲーム概要】

「ブレイジングビークス」は、Switch、steam、xboxONEに対応しているインディーズゲーム。ジャンルは先程紹介したような「ローグライク」+「ツインスティックシューター」である。

この「ローグライク」+「ツインスティックシューター」というジャンルはインディーズの中ではかなり人気なもので、少し検索すると多数ヒットする。一番有名なのは「Enter the Gungeon」(以下ガンジョン)だろう。ジャンルの火付け役でもあり、同ジャンルでは無類の人気を誇っている。ガンジョンを知っている方は分かると思うだろうが、ガンジョンは高難易度なゲームでも知られている。トップビューでアクションゲームの要素も強いのだが、並のアクションゲームでは見られない弾幕が襲ってくるのだ。これをプレイヤーは避けながら敵を倒し、ダンジョン内を探索してボス部屋に向かう。

「Enter the Gungeon」
ローグライトの人気インディーズゲーム

さて、ブレイジングビークスはというと、ガンジョンと比べてかなり地味で硬派なゲーム内容となっている。本作はガンジョンと同ジャンルなこともあって、似た作品として取り上げられている記事も散見したが、ほぼ別モンである。

本作品はトップビューのアクションシューティングゲームである。ゲームの流れを説明すると、プレイヤーは自動生成されるダンジョンを進み、奥地にいるボスを倒すとステージクリア。全6ステージ(途中分岐あり)で、ステージ6のボスを倒すと1週目クリアだ。その後はループしてハイスコアを狙うもよし、エンディングを見るもよしといった感じ。もちろんローグライクの要素があるので、死んだらダンジョン内で拾ったアイテムは全てロスト、もう一度ステージ1からやり直しだ。ステージセレクトといったものは無い。

フィールド画面
キャラは小さく描かれている

ダンジョンはそれぞれの部屋に分かれており、部屋にいる全てのモンスターを倒すと扉が開き次の部屋に行けるようになる。この扉なのだが、種類がありそれぞれ別の部屋に分かれている。扉の種類は、

・通常の扉
・カギがかかった扉
・ボス部屋への扉
・ショップへの扉
・秘密の扉

この5種類に分かれている。

ゲームをスタートする時にはキャラクターを選択することができる。この辺は他のローグライトのゲームも同じだと思う。アイコンから分かる通り、本作はキャラクターが全員鳥、というコミカルな作品になっている。

キャラ選択画面
鳥。鳥すぎる

キャラクターは隠しキャラ含め10匹。それぞれに性能が違う。中にはHPが1で回復できない代わりに攻撃力が絶大(まぁ、洋ゲーのインディーズにはお約束みたいなもんだが)といったピーキーなキャラもいる。

部屋に入ると様々なモンスターがいる。プレイヤーと同じく銃を持っているシューターや無鉄砲に突進してくる奴もいる。プレイヤーは部屋にいる全モンスターを倒すまでその部屋からは出られない。モンスターを倒すと稀にアイテムをドロップし、拾うことが出来る。コインやカギ、そしてこのゲームの最大の特徴である「アーティファクト」をドロップする。

このアーティファクトなんだが、このゲームを攻略する上で一番重要なアイテムである。アーティファクトは約90種類で拾うとその種類に応じた効果を得ることができる。しかし、その効果というのは、

プレイヤーを弱体化するものである。

どういうことか。このゲーム、先に進んでいくと「ショップ」というのがある。そこにアーティファクトを欲しがっているカラスがいる。そのカラスにアーティファクトを持っていくと、弱体化の効果を全て消し、さらにプレイヤーを強化するアイテムと交換してくれるのだ。つまり、自分を強化したいのであればショップに辿り着くまで一定の期間、弱体化した状態でダンジョンを攻略する必要があるのだ。

ショップ
コインを支払い武器を購入するだけでなく、
アーティファクトの交換も行える
カラスにアーティファクトを渡す
カラス「!!!」
カラス「ホイっ!w」
弱体化の効果は消え、強化アイテムと交換できる


アーティファクトにはポイントが設定されていて、合計のポイントによって交換できるアイテムの数が変わる。したがって、アーティファクトはいくらでも持つことが出来る。つまり、多くのアーティファクトをカラスに渡せば、より沢山の強化アイテムと交換してくれる。しかし、ショップに着くまでは弱体化の効果も重複していくので、攻略の難易度もまた増していくのだ。ショップへの扉はいつ来るか分からない。運が悪いと、大量にアーティファクトを背負い込んだ状態でボスと戦わなければならない状況もありえる。このアーティファクトの管理とリスクを考慮しての立ち回り方、やっとアーティファクトを手放し一気にパワーアップできる快感、このゲームの面白さはこれらの要素に集約できるだろう。

上手くアイテムを貰うことで、
いくらでも強化することが可能

武器の変更も楽しい。ショップに入るとコインを払うことで武器を買うことができる。尚、持つことが出来る武器は一つのみ。ステージを進むごとに強い武器が店頭に並ばれていくので、立ち回り方を考えたり、自分に合った武器を選択したりして、カスタマイズすることができる。他にも、秘密の部屋やカギがかかった部屋に行くことで、武器が落ちていることもある。武器の種類は約70種類。自分に合った武器を探してみよう。

ダンジョンの奥にはボス部屋に行く扉があり、その扉を開くとボス部屋に行くことが出来る。面白いのは、必ずしもボス部屋がダンジョンの最奥地にあるという訳では無いことだ。浅い階層で普通の扉と一緒に並べられることもある。ショップに当たる確率を増やすためにボス部屋に早々行くことは危険だ、と考えるかもしれないが、早めにボスと戦うことでのメリットがある。それはボスのHPの変動だ。浅い階層でボス部屋に行くと、ボスのHPが低い状態で戦うことが出来る。逆にダンジョンの最奥地に行くまでボス部屋に行かないと、ボスのHPが最高の状態で戦わないといけない。プレイヤーの状態が万全なら早めに戦った方が良い。ただ、アーティファクトを持った状態で戦うのは厳しいから後回しにする。こういった駆け引きも本作ならではの魅力と言える。

ボス戦
プレイヤーと比べて巨大な敵ばかり

ボスを倒すとアクティブ能力を変更出来るアイテムを落としてくれる。初期のアクティブ能力は緊急回避ができる「はね」だが、敵を遠ざける「プロペラ」や動いてる敵を凍らせる「つらら」といったものがあり、変更することで自分に合った立ち回り方をさらに広げることもできる。

他にもNPCとの遭遇やコインやハートを使ってのスロットもある。ちょっとした演出の部分も光っているので、見てて楽しい。

ゲームの内容はこんなものだろうか。次にゲームのモードについて説明したいと思う。

このゲームは、最大4人で遊ぶことが出来るマルチプレイに対応している。同時にダンジョンを攻略することができるので、協力することでダンジョン攻略も楽になるだろう。私は1人プレイしか遊んだことがないが、アーティファクトの種類が変わるといったオリジナルの要素も追加されているらしい。

難易度もイージー・ノーマル・ハードと分かれており、親切。このゲームは正直ノーマルでも難しいので、最初はイージーをオススメする。

ノーマルモードでプレイすると、ランダムに生成されるダンジョンでプレイすることになるが、シードモードを選択し、ゲームを開始すると配られるシード番号を打ち込むことで、そのシード番号と同じ内容のダンジョンに挑むことが出来る。もう一度同じ状態で挑みたい、といった場合に使えたり、フレンドに同じシードを教えることで、同じダンジョンを挑んでもらうこともできる。

他にもチャレンジモードというのもある。こちらは通常のストーリーモードをやり込んだ人向けの縛りプレイのような内容になっている。武器の変更禁止、触ると即死のゴーストが常に追いかけてくるといったかなり無茶な内容となっている。

インターネットに繋ぐことでランキングに参加したり、デイリーモードで世界の人とスコアを競ったりもできる。私はやってないが、腕に自信のある方はやってみよう。

以上がゲーム概要となる。次に私の感想を述べたいと思う。

【私の感想】

ゲームの概要を聞くと、ガンジョンから探索要素を抜いたゲームに近いものだと感じるが、全く違う。まず、武器が全体的に弱い。ガンジョンでは浅い階層でもド派手な銃火器や強武器が登場するが、ブレイジングビークスの武器はかなりチャッチい。おもちゃのようなピストルや海外のアニメのエイリアンが持ってそうな光線銃といった武器が大半だ。性能も相応なもので、敵を全員一網打尽!みたいな武器は無い。

武器の一部のデザイン
おもちゃみたい

これらが何を意味するのかというと、敵に囲まれた時に打開することができないのだ。ガンジョンでは武器によっては敵に囲まれてもゴリ押しができたりするが、本作はそんなことはほぼ不可能。何とかして1vs1に持ち込んで、確実に仕留め続ける技術が求められる。ガンジョンと比べて弾幕も薄く、絵面はかなり地味だろう。

ゲームバランスもかなり大味だ。まず、何しても運が絡む。どんなにアーティファクトを拾っても良いアイテムが貰えるとは限らない。どんなにコインを貯めても良い武器が店頭に並ぶとは限らない。アイテムも運、武器も運、敵の数も運、ダンジョンの地形も運、ほぼ全てに運が絡んでしまう。合計4.1程のアーティファクトのポイントを貯めてもアイテム2個しか貰えず、合計0.2程のポイントでアイテムが3つも貰う、といったこともザラに起きる。

特にバランスが雑だと感じたのは、キャラクターである。キャラクターに性能の違いがあるのは説明した通り。ここで、アヒルとニワトリの性能をご覧いただきたい。

アヒル:HP5
武器を1秒撃たないでいるとリロードし、次のショットが3倍速くなる。
武器の射程が50%になる(半減する)。

ニワトリ:HP4
マークのついた敵を1発で倒すことができる。
走っている時は命中精度が落ちる。
武器の射程が80%長くなる。

こんなのニワトリが1番強いに決まってるじゃんか!!!!

見て分かる通り、アヒルは少し攻撃力が高くなる代わりにこのゲームにおいて一番大事な射程を犠牲にしている。一方、ニワトリはたまに一撃で敵を倒せることもあり、射程もめちゃくちゃに長い。デメリットの弾がブレることも止まって打てばいい話であり、特に酷いデメリットではない。圧倒的にニワトリの方が優遇されているのだ。

いや、アヒルが極端に弱いのではなく、ニワトリ以外のキャラは皆こんな感じの性能である。特に強みも無いのにHP2のカモノハシやショップで少し値引きされる代わりに有り得ないほど移動スピードが遅いぐうたら等、ちょっとのメリットに対してデメリットがデカいキャラばかり。何か面白い性能があってデメリットを背負っているキャラならまだ使ってみようかな、と思うかもしれないが、本作のキャラは全く魅力が無い。単純にクリアするだけならば、ニワトリ以外を選ぶ選択肢は無い。

アーティファクトの内容も雑である。縛りがキツいアーティファクトだとその分ポイントも高いのだが、中にはそのポイントが適正か疑わしいものもある。例をあげよう。「ぼうきゃく石」と「つりのえさ」の内容を見て欲しい。

まず、「ぼうきゃく石」。これは"アクティブ能力が使えなくなる"という効果だ。ポイントは0.3に設定されている。

つぎに「つりのえさ」これは、"アクティブ能力がチャージされる時にHPが2以上あると、HPが1減る"という効果。つまり、アクティブ能力を使った時にHPが2以上あると1ダメージ受けますよ、といった効果だ。そして、これのポイントは0.5である。

めちゃくちゃ上位互換じゃねぇか!!!!

さらに、これらを同時に持つことでアクティブ能力が使えなくなるので、実質「つりのえさ」のデメリットは無くなる、ということになる。こういったシナジーみたいなのが他にもあるのだが、うーむ、意図的にやったとは思えないんだなこれが。

こんなゲームバランスなので、難易度ももちろん高い。これは運の要素を考慮しなくても難しいと思う。フィールドもガンジョンと比べたら狭いしな。私は難易度をノーマルにしてプレイしたが、1周クリアするのに10時間ほどかかってしまった。体感的にはガンジョンより少し簡単ぐらいだと思う。このジャンルに馴染みのない人はすぐに音を上げるだろう。

操作感覚は良好である。2つのスティックを同時に扱うので、最初は半端なくやりづらいと感じるが、慣れると気持ちよく操作することができるようになり、スティックをグルグル回すのも楽しくなってくる。

グラフィックは全てドット絵。インディーズゲームにありがちなGBAを少し綺麗にした感じ。細かい動きもドット絵で表現されていて、ドット絵好きな私にとっては大満足。キャラクターの表情も豊かだ。

ストーリーは無い!マジで無いのである。なぜトリ達が主人公なのか。このダンジョンはなんなのか。そもそもなぜ戦っているのか。一切明らかになること無く進み、急に終わる。一応ラスボスが意味深な行動を残すが結局は不明である。ストーリーモード()という状態。

音楽も微妙。特に白熱することも無く、耳障りなものでもない。全く記憶に残らず終わってしまった。

ここまで割とマイナスな点ばかりならべてしまったが、私はこのゲームがめちゃくちゃ好きである。

私がこのゲームを購入したのは1年ぐらい前で、なぜかその時は少しプレイしてやめてしまった。ローグライトの要素とツインスティックというのが受け入れられなかったのだ。しかし、ある時急にやりたくなり、やってみたらその面白さに気付いたのである。このジャンルにハマり同ジャンルのゲームを色々触った。有名であるガンジョンもプレイしたのだが、なぜかこちらの方が長くプレイしている。確かにこのゲームはバランスがかなり雑い。なのに、そのバランスが気持ちいいのである。一昔前の格ゲーやアクションゲームをやっている気分になるのだ。なんかこう、運が良い時の爽快感や一方的にハメ殺された時の絶望は「ゲームって楽しめれば何でもいいんじゃ!」といったプレイヤーに楽しみ方を委ねる、かつての感覚に似ている気がする。騙されたと思ってやってみて欲しい。

【まとめ】


Switchのインディーズゲームでは、ガンジョンと比べられることも多い本作。中身は硬派なシューターで絵面も地味なゲームである。ただ、武器の変更やアーティファクトの仕様、扉の場所ですらもほぼ運任せなシステムがローグライクの要素と組み合わさり、中毒性の高いゲームバランスを生み出している。まぁ、バランスは良くは無いんだけどね!
なぜか何度もやってしまう面白い作品である。


(定期的にセールをやっているのでセール時に買う方が吉)


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