琴線に触れまくる漫画/育児に葛藤を抱く人へ~ミステリと言う勿れ~

漫画を読んで心が震えるとよくスクリーンショットを撮ったりメモをしたりするのは私だけではないと思う。その時の感動を後に残しておきたいという気持ちから。今回は初めてそれを「記事」という形で試みようと思う。

今回記事にまでしようと思ったのは、それだけでは気が済まなかったから。男尊女卑、虐待、いじめ、あまりにも多くのことにめまぐるしくテンポ良く触れていく本作品は、脳内だけで処理をするには追い付かなかった。noteを初めて書いてみようと思うほどに素晴らしい漫画であり、「素晴らしい」と形容することが恐れ多いとすら感じるほどの作品。身近な人に勧める際いかに感動をしたか表現する術/語彙力がないことを恥じるくらいに素晴らしかった。

・何がそんなに素晴らしいのかを自分に落とし込む

先の自分にあの時このような感情を抱いたということを感じさせる

という目的でここに残してみようと思う。多くの共鳴を得るには拙い自負があるため、備忘録的な感覚で。まずはわかりやすく響いたシーンから

女性差別

このシーンの前には当然のように、悪意なく娘を責める父親の姿がある。主人公である久能整は「娘とのんびり暮らすのが”女の幸せ”だろう。」と諭す父親につらつらと語りだす。整が語ったのはある実験のこと。

『父親を集めて一時間以内に簡単な計算問題を解くようにという実験。主催者は電話を数分おきにかけたり話しかけたりするんです。父親たちはフラストレーションをためていく。結果全員が目標を達成できず、怒り出す。”こんなに邪魔されたら何もできない”と。そこで主催者は言うんです。「これが」「子育てをする母親たちの毎日なんです」と。達成感を味わうことのできない苦しみ。父親たちは黙ったそうです』

「『女の幸せ』と言い出したのは多分おじさんだと思うから。」

なるほど。そう思った。事実そうであったかなど知る術もないが、あまりにもその様子が想像できてしまう状況が育児には垣間見えすぎてしまう。少なくとも、周りで育児に苦戦している人々が、いずれではなくリアルタイムに「これが女の幸せなの」と言っている姿は間違いなく見たことがない。

続くのはこちらの写真から、先ほどの写真。

画像2

家にいて家事と子育てをすることが簡単で楽だったら、もっと男性がやりたがる

これはもちろんすべての人に当てはまる言葉だと思ったわけではない。が、育児環境が長い年月をかけてやっと少しずつ変わってきたということを加味すると、ストレートに響いた。そして「あなたが目の前の人がどんな顔をしているかに 気づいてないからです」という、これ以上ない皮肉を述べたところで娘の制止が入る。自分の大切な人がどんな表情でそれを聞いているかに気づかない、悪意のない言葉の暴力はあまりに多いと思う。『なんで私に説教しているのかな』という疑問からも辛辣に伝わってくるように。

このやり取りは父親の小言シーンを除けばわずかわずか4ページで帰結する。最後には「自分の中から出てきた言葉を使ってください。その方が娘さんは 絶対にうれしい」という言葉で。世の中に残っている言葉の多くは都合よくおじさんが言ったもので、趣味と都合が隠されているからという理由から。

ここまでで1000字を優に超えてしまうように、わずか4ページに詰め込まれている作者からのメッセージはあまりに多すぎるが、感じたことを記載するのであれば

・本人でない人が口にする言葉の信ぴょう性の低さ

・自分が試みない、手を出していないことを簡単だと思い込むことの浅慮さ

・自分の発言で相手がどう感じるのかを理解する重要性

上記の通りである。育児に関してのトピックであったものの、そこに留まらず思考をめぐらすことができることが醍醐味のひとつであると思う。自身の普段の発言を顧みるきっかけにもなるだろう。

最後に、もうひとつ本作の描写から述べるのであれば「母親のたおやかさ」である。このシーンでは父親の描写は早々に終わる。それは娘が整を離れた場所に連れて行くから。そこで上述のやりとりが繰り広げられる。娘は父親を嗜めようとすることも、整に制してもらおうとすることもない。それがなにを意図しているのかは本人にしかわかりえないことであるが、『育児に対する男性への批判をぶつけるストーリー』として描かない部分もとても個人的に好きなポイントである。少なくともこの話の中では父親を論破せずともこの女性の心は救われる。「世の父親に目にものをみせてやりたい。気持ちをわからせたい」そういった攻撃的な描写なく一人の女性を尊重する描き方はとても素敵であるし、女性がそれを望んだような構図もまさに「育児をする女性の気持ち」を代弁しているような感覚になる。経験がない私であるため創造の範疇は超えないが。

ただ、実際に私が育児中の姉にこの話をしたとき「向こうが私のことをわからないように、私も向こうの大変さなんてわかりようがないからね。」と言っていたのを聞いて、あぁやはりそういう感覚なのだなと腑に落ちた。反撃をしたいのでなく、理解をしてくれる人が欲しいという感覚なのだろうと。

育児をしながら葛藤を抱えている女性の中で一人でもこの作品に触れることで気持ちが軽やかになることがあればとても嬉しく思うし、このトピック以外にも多くの心に響くシーンがあるため、引き続き備忘録記事を書いていこうと思う。




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