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濃厚。【DULL-COLORED POP#7「マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」】


2009年08月21日に某mixiに投稿した雑文の転載です。

2019年に『福島三部作』の一挙上演で10,000人を動員。岸田賞・南北賞ダブル受賞という快挙を成し遂げた谷賢一さん率いる劇団DULL-COLORED POP。
その10年前の舞台レビューです。

DULL-COLORED POP
http://www.dcpop.org/
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先日、というか月曜日の夜。
ふと思い立ち、新宿はシアターモリエールに舞台を見に行ってきました。

演目は、DULL-COLORED POP#7「マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」。

ええと、そもそもが先にreset-Nの舞台を見に行った際の折込チラシが気になってはいたのだけれど、夏井さんのややテンション高めのレビューからオフィシャルのURLへ飛んで、はらでぃとケンシロウさんが出るってことと、彼が期待して行くんだから間違いは無かろうというだけで・・・あ、今日楽日ジャンよ!ってんで、何の予備知識も無く、仕事先から直帰体制で行ってしまいました。

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うーんと、おおあたりっ。


普段小劇場だけしか足を運ばないヒトにはどんなだったか知らないけどねー。

上演時間2時間15分(途中休憩10分)の二幕劇。

舞台は17世紀フランス、実在した殺人鬼マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人を描いたストレート・プレイ。ということで全てのキャストがきっちりとドレスをまとい、高々と髪を結い、あるいはキュロットで、あるいはサン・キュロットで舞台を歩きます。

圧倒されるのは紡ぎだされる台詞の数々。

「おとうさま、おとうさま。ああ、なんていうことかしら。私の心は悲しみとおののきで張り裂けそうですわ」
「いいや、今は悠長に嘆き悲しんでいる場合じゃない、早く神父様を・・・父上が息を引き取るその前に、最後の告白を聞いていただかなくては」
「まあ、なんてことをアンリ!パメラ、パメラちょっと来てちょうだい」

「おや、これは侯爵。昼間からお楽しみのご様子で」
「いやいや、君だってそうとうにお盛んだそうじゃないか。ああん、ゴオダン・ド・サントクロワ?」

とまあ、全編がこんな調子(セリフはイメージです)。

色とりどりの薔薇のような絹のような、古い葡萄酒のような言葉たち。

特に主人公のちょっとカンの狂った調子の高音と後半で対立する死んだ主人公の弟の妻(つまり未亡人。仲村みうに似ててちょっとドキドキした)のよく響くエロティックな低音のバランスがすごく心地よい。
この二人だけが正規のメンバーらしいけど、さもありなんって感じ。

あと、大塚秀記氏演じる「主人公の良人(侯爵)」とはらでぃ演じる「侯爵の遊び仲間で主人公の愛人」、侯爵の愛人・友人達の場面がイカニモな退廃貴族とそのとりまきを演じていてものすごく秀逸でした!

・・・20代の頃、六本木の俳優座で、銀座の日生劇場で味わったあの「新劇」そのものといった濃厚なコトバに圧倒され、目の前がくらくらします。

一方で、セットはモリエールのギャラリーや楽屋口をフル活用しての簡素な構成。たぶんカミシモの出ハケとギャラリーからの階段以外には、テーブルと数脚の椅子だけという、このシンプルな舞台セットと衣装や芝居とのギャップを敢えて作り出し、しかも不自然に見えないように、さらには二階ギャラリーから一階の舞台までの高低差を存分に生かした演出と照明はまさに小劇場のもの。

うーんとね、小劇場で「同ジヨウナちゃれんじ」を見た記憶としては98年の惑星ピスタチオ「大切なバカンス」@新宿・紀伊國屋ホールぐらいかな?故(!)平和堂ミラノさんの作品で夏のフランスの田舎を舞台にした万華鏡のようなお話だったな。

・・・いや実は、もうひとつこういったバランスで組み立てられている舞台があるのを知っているような気がする。

東宝ミュージカルだ・・・ただし唄わないww

「エリザベート」や「レ・ミゼラブル」の虚構と惑溺と省略をそのまま新宿の小さな芝居小屋に濃縮してのけたそんな舞台。てゆか、実はところどころで「あ、コレ。映画『マリー・アントワネット』で見たぞ」的な絵には出くわしたんだ。


でもね、アレ(帝国劇場)をココ(シアターモリエール)でやっちまえるってのは並大抵の力量じゃないよー。

最初はどこから「ふつうの小劇場芝居」に戻るんだろうと思いつつ、20分も経つ頃「ああ、コレずーっとこのまま行くんだ」と気付いた時の衝撃。そして休憩を挟んで二幕という小劇場ではありえない構成に「狂気を帯びた本気さ加減」を感じつつ酔いしれた2時間15分。なんか現実に戻ってくるのタイヘンだったわ。

残念ながらDULL-COLORED POPという演劇集団は「同じことは2度やらない」っぽいのでコレは伝説の舞台になっちゃうんだろうなー。

といいつつ、ちょっぴりてゆーかすごーく再演に期待だ。


蛇足)
そしてそのときにはぜひオイラを「カトリック監修」で呼んでくれ!・・・葬式とか終油の秘蹟とかでの所作、聖句の選び方その他いろいろ「専門家としてそれはありえへん!」があってちょっと辛かったの。
というか、大きな舞台での翻訳劇とかでもよくあるのよねーこういう萎えるミスというか知識不足。ダレカ仕事として依頼してくれないかなww

ちなみに実在の「ブランヴィリエ侯爵夫人」が何をしたのか?についてはこちらを参照するとわかりやすいです。
http://fusigi.jp/fusigi_4/works/works_3_i.html

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