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えんとつ町のプペル THE STAGE@天王洲銀河劇場、観てきました。

2020年2月5日のFacebook投稿からの転載です。
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にしのあきひろ原作「えんとつ町のプペル THE STAGE」@天王洲銀河劇場、昨夜観てきました。
3階A列8番っていうステージ全体を俯瞰できるけど入り込みにくいお席でした(争奪戦出遅れ)。

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最近はほぼほぼ観劇日記を書いたりもしないのですが、千秋楽の夜公演もさっきお開きになったところですし、たまにはネタバレとか評判とかを気にせずに感想でも書こうと思います(長文ですよ)。
一応は友達限定だけど、その友達の公開範囲に西野さご本人がいらっしゃるのよね(トオイメ)。

観劇後1日経ってみての端的な感想としては「これはまた随分と中途半端なモノになっちゃったわねぇ」です。申し訳ない。

ちなみに観終わってすぐの感想は「ラストはちゃんと感動したし全体として面白くなかったわけではないのだけど、どうにもノリにくてだいぶシンドかったなあ」でした。

ワタクシが想像するに、その理由はたぶんみっつ。というか大括りだとひとつで分析していくとみっつになるって感じ。

ひとつめ。

舞台版プペルの世界が既存の絵本版プペルと公開予定の映画版プぺルとの狭間に落ちてしまったこと。

というか舞台の公式Twitterでは「大人気絵本『えんとつ町のプペル』が、原作者西野亮廣の書き下ろし脚本で舞台化!」ってアナウンスになってるんですよね。これで認識してたら「絵本版の舞台化」って思いません?

プレス記事などではもう少し丁寧に「本作はキングコングの西野亮廣による絵本「えんとつ町のプペル」をもとにした舞台作品。今回は西野自らの脚本により絵本では描かれていないオリジナルストーリーを児玉明子の演出で立ち上げる。」と記載があるし、観劇レポートなどでもそういったコメントはあるのですが、「絵本の世界を大幅にはみ出していくのが前提」の作品なのであれば、公式ページなりでそこを丁寧に強調しておくべき(というか実はランディングになる公式ページ自体ないよね??)ですし、「その差異をワクワクしながら観る」ための配慮はとても大事だったんじゃないかと思います。

というワケで今回の舞台版では「絵本では明かされていないいくつかの(とても需要な)設定」が比較的無造作なかたちで出てきてました。

また、今回登場した映画版プぺルにつながって行くこれらの設定の多くは、まだまだ作りこみが足りていなかったり舞台版としてだいぶ簡略化されてしまっていたりしたのではないかと思います。
えんとつ町の(地下構造を含めた)地理的特性や、煙突掃除人たちやスコップなどの絵本には出てこないサブキャラクターの役割、絵本で明かされていないアントニオやローラの行動理由など、こちらは「事前に知っているから予測できるし、グッともくる」のですが、正直随分雑な扱いだったよなあと思います(原作厨乙!)。

舞台単独であれば別ですが「絵本版→舞台版→映画版」的な情報整理の流れがあったことで、絵本だけの読者の「え、なにそれ。知らない」と映画版について多少なり知っているサロンメンバーの「ハイハイ知っていますよ」の知識差が。
実はどちらも知識ベースの反応に過ぎないので「舞台への没入」を妨げる要素になってしまったのではないかと思います。

なお、これはだいぶ個人的な視点なのですが「えんとつ町」という存在のキモとなる「異端審問会」の存在が軽すぎるのは非常に不満でした。「狂信的な宗教組織による歪んだ支配構造」というものをポップなスタイルでわかりやすく魅せるのは難しいと思うのですがもうちょっと工夫あるでしょ?って感じ。
そもそもカトリックである私の感覚だと彼らの存在を「異端審問会」なる用語で呼ぶのはあまり賛成ではなくて、映画版でも今回のような扱いになるのならば「秘密警察」「治安維持隊」ぐらいの扱いでいいんじゃないかと思うのです。

ふたつめ。

制作スタッフの「世界観の理解」や「方向性の統一」を整える時間が足りなかったこと。

西野さん監督下で30人強のクリエイターが完全分業制で作り上げた絵本版プペルの世界観はとてもしっかりしているし、そのテーマ曲も今回の観客にはそれなりに浸透しているのではないかと思うのです(ワタクシですら大サビのパートがハモれますもの)。おそらくは舞台版のスタッフさん、役者さんたちは絵本版の情報をまず頭に叩き込み心に刻んで事に臨んだのだと思います。そこは疑ってない。

しかしながら舞台版の脚本には「この冬公開の映画版で明かされる予定だった各種要素」がバリバリに入っています。しかもわりと骨太でワンダーで具材てんこもりで、けっこう消化しにくいんじゃないかなあと思うのです。

しかもこの舞台の制作期間は「脚本執筆期間ふくめて3か月」という鬼スケジュール。もし絵本版とかなくてイチから作り上げていたら絶対に間に合ってないのも確か。

おそらくはその結果、絵本版ベースのパートと映画版ベースのパートでクオリティのバランスがよろしくないことになったのではないかと。ふたつの要素をどうなじませていくのかどう膨らませるのか、特に導入部分での両者の組合せ具合がかなり粗く、ときに説明的になったり、いきなり唐突になったりと、だいぶ混乱していたように感じました。

また「和製ミュージカルにしたことのデメリット」という観点もあるかも知れません。「テーマ曲とほかの歌唱曲との説得力の違い」がもっとも顕著に感じた要素でしたが、音が整理されてなくて歌詞がものすごく聞き取りにくい歌唱シーンとか、「統一感のない」「どこかのハリウッド系映画で聞いた感のめっちゃある」「でも西野さん風ではけっしてない」BGM(にのせたどうにも近藤良平らしからぬダンス)とか。

なんとなく2.5次元系商業ミュージカル的な定番お仕事のニオイがすごくて、ここを払拭して「プペルらしい」納得感のあるクオリティを出そうとしたら舞台稽古に入る前に半年ぐらいスタッフ会議がいるんじゃないかなあとか感じます、よう知らんけど。

演出関連でまたもや個人的な納得いかないポイントとしては「スクリーンが白いよー」でしょうか。
舞台へのプロジェクション用に枠付きのジョーゼット幕が使われていて、フロントからシュートされる映像と幕のバックで演じられる芝居を融合したり、映像で説明を見せつつ裏で転換したりと大活躍していたのですが、この幕がえらく白くて興を削ぐこと甚だしい。

ステージへのプロジェクションマッピングを効果的に使っている舞台は最近増えていて、ワタクシ自身もケラさん(ケラリーノ・サンドロビッチ)の舞台でだいぶ素敵演出を観ているのでなおさらにつらかった。カミシモのプロセニアム(フレーム?)部分へのスモーク風の演出映像とか、スコップのラップ台詞だとか、地底世界の演出映像とか幕を使っていないプロジェクションで、面白いところが沢山あったので、余計に残念だった。

まあ「3階下手なんて席で観といて文句たれるんじゃねえ」って言われたら「ごめんなさい、1階の正面席取りたかったです」ではあるのですが。

さて、みっつめ。

観客席があるていど西野亮廣エンタメ研究所のメンバーで埋まってしまったこと。

いやいやいや、流石にこれは後付けの結果論だよなあとは思うんですけどね。

開演前の客席やロビーで「西野亮廣エンタメ研究所について」「映画版プペルについて」これまでの経験や知識を披露しながら交流する人々の会話、あと事前のSNS上での「観劇後打ち上げ会やりましょー」的なやり取りなどを眺めながら、それって「舞台を観る」という体験を(純粋に)楽しむにはちょっと邪魔なのかもしれないなあって思ったのですね。

なんとなく、西野さんが言うところの「人は知らないことに触れる為ではなく知っている情報を確かめるために足を運ぶ」ロジックと「場は目的のため(だけ)ではなく待ち合わせのために(も)ある」ロジックが、演劇鑑賞というより芝居見物な方向でがっつり噛み合ってしまった感じ。

それこそ四季劇場ぐらいのロングランで、できればもっと安価な舞台だと「ぼっち参戦で複数回リピート」とかの「待ち合わせ」効果を期待すべきところなんですが「神戸6日間8公演/東京7日間10公演」というステージ数(で、キャパ700席の9割がた埋まっている)だとどうなんだろうなあ、と。「待ち合わせ」というお楽しみが「舞台を観る」というお楽しみをちょっとマスクしちゃうことになったんじゃないかなあ、と。

ワタクシ自身、終演後にロビーでホームレス小谷さんと「あーオカさん!」「どうもどうも!」ってがっつり握手してたし、その後に近くにいた須賀ちゃん目当てっぽいJKふたりが「え、誰?なんか有名なおじさん???」とか囁いてたんで「あのひとはホームレス小谷といって…」って説明しちゃったもの。なあ、いらんやろ、その情報。

もちろんこういう感想は「舞台を観に行くことが日常に組み込まれている」ワタクシだから出てくるものなのかもしれません。ですが「舞台版プペル」を「絵本版プペル」と「映画版プぺル」の狭間に落として「随分と中途半端なモノ」にした挙句、なんとなく「それでよし」としてしまっているのは、実のところ観客である我々自身なんじゃないのかなと思ったりしたのです。

映画版プペルはおそらく動員数そのものの桁がまるっきり変わりますし、西野さん曰く「ディズニーを倒す」「この作品で一撃で仕留める」のが目標のガチの世界戦ですから、今回とは様相も違いそうだなと思うのですが「初見のワクワクをちゃんと心に抱えて観に行かないとなあ」と思ったのでした。

…ちなみに役者について音楽について音響について装置について照明について、言いたいことはたくさんあるんだからね!そこは求めて観に行ってないから言わないだけなんだからね!w


とっぴんぱらりのぷう。



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