ぞうきん

保育園の授業で、ぞうきんを作る事があったのですが、それまでいかに目立たない様にするかを目指してたので1番最初に出来てはいけないし、最後に出来てもいけないと思って、常に真ん中くらいを目指してる子供でした。

そういう事もあって、まず最初に針の穴に糸が通らないフリをして時間稼ぎをしました。
周りを見渡すと少しずつ縫い始めた人もいたので、そろそろ針の穴に糸を通そうとしたのですが、これが全く通らないのです…。

人生経験が浅すぎるのと絵はそれなりに上手かったので、自分の手先が想像を絶する不器用だとこの時点では知らなかったのです。
後に、プラモデルとか全く作れなくて絶望するのですが…。

徐々に焦りはじめ、針の穴に糸が通ってない人も減って来て、中にはこっそりぞうきんを作り終えた人に通してもらってる人もいましたが、先生に見つかるのが怖かったからかプライドなのかは覚えてないけど、とにかく自力でやろうとしてました。

そして、終わった人達は帰っていい事になり、少しずつ人がいなくなって行き、焦りは加速して行きました。
結局、友達か先生に糸を通してもらって最後になってしまい、最悪の結果と今までごまかせてたけど僕は本当は全てにおいて出来損なんじゃないかと思って泣いてしまいました。

泣きながらトイレに行ってる途中で、僕の家の前に住んでる家族ぐるみで付き合いのあるおばちゃんが、その保育園に給食のおばちゃんとして働いていたので、園内でばったり会って泣いてる僕を見て、

「あれ?直くんどうしたの?」

と聞かれたので、正直に話して、慰めてもらいました。

家に帰り、母にぞうきんが出来たかと聞かれたので、母に言うとがっかりさせそうだけど、流石に1番は心が痛むので2番目に出来たと嘘を付きました。

少し経ったある日、母親と給食のおばちゃんが井戸端会議してて、僕もなんとなくその辺にいて、母親達が色々話してるうちに、僕の自慢を始めてしまい、嫌な予感がしたのですが、

「この子ねー、ひらがな覚えたし、絵も上手いし、この前もぞうきんを2番目の速さで作ったんよ」
「あれ?直くん…」

やばい、やばい、やばい!

恥ずかしさとこの後の母親の逆鱗に触れそうな予感で、とりあえず給食のおばちゃんの顔を見れなくて、母親の背中に隠れてモジモジするしかなかったのです。

給食のおばちゃんに爆笑しながらバラされ、その後に母親に懇々と説教されたのでした。

あの時は、この世の終わりだと思いましたね!

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