短歌連作series 春に詠む

短歌連作 「春に詠む」三十四首 2015年春

空眩し 軽きめまいに 襲われて 視線の先に 吾が影が伸び

影が落ち 光も落つる 月夜には 水面に静か 二つ目の月

朧なる 月の息づく 春の夜に とけて流るる 光の雫

息づくは 月の兎の 優しさで 夜を駆け巡る 吾が物想ひ

夜半に咲く 虞美人草の 想ふ場所 愛しき人の 生きてゆく場所

朱に染まる 朝の道には 風に揺れ 肩を並べて 進みゆく春

春の陽は 花に優しく 注がれて 色とりどりの 風作りだし

風の色 光りて染まる 空の雲 漂ひゆくは 未来への道

ひたすらに 日々は巡りて ふと気づく 見える未来を 虚しく思ひ

かりそめの 吾の行く末 想ふ刻 過ぎ去る日々は うたかたの夢

夢うつつ 人の世はただ 儚くて 悲しき宵を 月が照して

世を想ひ 人を想ひて 眺むれば 信ずることが 道標かな

進む道 惑ひて君を 求むれば 優しき微笑 吾を包みて

包まれし 柔らかな手の 温もりは ただそれだけで 物想ひ消し

消した過去 忘れたい過去 想へども 立ち尽くすのみ 悲しみ残し

悲しみを 日々持てあまし 生きたとて 何になろうか 何も出来ずに

惑ふ日々 何にすがりて 生きようか 想へば浮かぶ 君の面影

面影は 優しく照らす 星のよに 静かに落ちて 吾をはなさず

はなれない 日々を送りて こころには 甦(よみがえ)りくる 桜花びら

甦る 輝くあの日 戻らずに ただ追憶の 中に眠りて

眠れない 夜を抱えて ただ一人 闇をさ迷う 吾は旅人

生きてゆく 人生航路 旅をして 行きつく先に 何を見るのか

目に見えず こころに見える もののみを 追い求めゆく そんな人生

見えたとて 掴めぬならば その刻は 見ることをやめ 生きてゆこうか

掴めない 幸せならば いらないと 言えぬこころが 日々を惑わせ

光る星 煌めくように 言の葉は 掴むその先 遠き想ひ出

想ひ出は 刻を経てなお 色褪せず 寄せては返す 波の輝き

輝くは 夏の夕陽の美しさ 海原染めて 静かに燃えて

燃え上がる 陽が落ち果てる その時に 交錯するは 尽きせぬ想ひ

次の世で また会えることと 引き換えに 悲しみ続く ならどうするか

悲しみと 引き換えにして 得るならば
それでも良いと 願ふ吾かな

願ふのは 君の幸せ その中に 吾の居場所は ない悲しみよ

幸せを この手で掴む その刻を 待ち望みをり いつになろうと

何時何処に 吾がいようと 君の幸 願ふ想ひは 永久に続きて





★煌めくは 風か光か 吾がこころ 全てが空へ 溶けてゆく春

★白鳥と 見粉ふばかりの 雲ありて 吾に翼が あれば乗りたく