ゲームは「誰」のものか
ちょうど一年くらい前に、こんなニュースが話題になりました。
ナタリー - クリープハイプ「ベスト盤はバンドの意思ではない作品」
http://natalie.mu/music/news/109743
「呆然とした」 クリープハイプ、ベスト盤発売は「レコード会社が一方的に決めた」と声明 - ITmedia ニュース
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1402/13/news073.html
「憂、燦々」などの楽曲で知られるバンド、クリープハイプの2014年3月に発売されるベストアルバムが、事前にバンドや所属事務所への連絡がないままレコード会社が発売を一方的に決めたものであることがバンドの公式サイトで発表されました。
このように音楽業界において、事前の同意のないままベスト版のアルバムが発売されることは過去にもあり、宇多田ヒカルさんやスピッツも同様のトラブルに見舞われました。
そこで、音楽業界の事はその道の人に任せて、このnoteでは改めて「ゲームは『誰』のものか」ということを掘り下げてみたいと思います。
現在、特にコンシューマ機向けのゲームソフトの開発には多くの人的リソースが必要となっています。
例えば2013年にPS3で発売され、2014年にはPS4でリマスター版が発売された「The Last of Us」などは200人規模で開発されたと報じられました。
そういった意味では今やゲームはクリエイター個人のものではなく大規模なチーム、組織としての会社のものと考えるのが正しい考え方だと言えます。
一方で、ゲームには生みの親と言える顔となるクリエイターがいるのも事実です。
例えば「ソニック」シリーズであれば中裕司さん。
「ファイナルファンタジー」シリーズなら坂口博信さん。
「バイオハザード」シリーズなら三上真司さん。
こういった今も続く人気作品にも生みの親と言えるクリエイターがいます。
しかしながら、上に挙げた方々は現在、それらのシリーズを発売している会社から独立し、今はそれぞれの会社でゲームを開発されています。
それでも「ソニック」も「ファイナルファンタジー」も「バイオハザード」も新作がどんどん発売されているのは周知の通り。
「桃太郎電鉄」シリーズでお馴染みのさくまあきらさんの様にクリエイターのOKが出ない場合には作品を出せないというのは稀な例で、基本的にはゲームは会社のものとして立ち上げたクリエイターがいなくなってしまった場合も脈々と受け継がれて新作が発売されていきます。
さて、クリエイターの独立ということを考えた時に、外せない問題が過去にありました。
それがティアリングサーガ裁判です。
これは元々任天堂のセカンドパーティーであるインテリジェントシステムズ(以下、IS)に所属し、「ファイアーエムブレム(以下、FE)」シリーズの生みの親である加賀昭三さんが同社を退社後、自身の会社で開発した「エムブレムサーガ」(「ティアリングサーガ」の発表時のタイトル)に起因する一連の騒動です。
詳しい経緯などはwikiなどで確認して頂ければと思いますが、要約すると、ISを退社した加賀さんが新しく立ちあげた会社(ティルナノーグ)で開発中の「エムブレムサーガ」が「FE」シリーズと世界観やシステムが酷似しているほか、「FE」シリーズの続編であると匂わせるような発言がされていたため、任天堂およびISが同ソフトの発売元のエンターブレイン、開発元のティルナノーグ及び加賀さん本人を著作権侵害と不正競争防止法違反で訴えた、という内容です。
そしてこの裁判は不正競争防止法違反においては任天堂の訴えが一部認められ、エンターブレイン側に賠償金の支払いが命じられた判決が確定しました。
つまり、「FE」の続編っぽい作品ですって販売のやり方はダメだけど、こういった世界観やゲームシステムは一般的に考えられるもので著作権侵害にはならないと判断されたということです。
この裁判では「ゼノギアス」と「ゼノサーガ」、「タクティクスオウガ」と「ファイナルファンタジータクティクス」などが同様の事例として挙げられたそうです。
つまり、独立したクリエイターが今まで手掛けてきた作品とシステム面で酷似した作品を作るのはOKということが認められた裁判だったとも言えます。
ゲームの「権利」が誰のものかということは普段ゲームを遊ぶ上では気にしないですし、気にする必要もないことだと思います。
ただ、そういった「権利」がしっかりと運用されているからこそ、僕たちは人気シリーズの最新作だけでなく、あのクリエイターさんの新作も楽しめる訳で、今後も会社とクリエイターが折り合いをつけながら、滞りなく新しいゲームを世の中に送り出していって欲しいものですね。
会社とクリエイター間の平和をゲーマーは常に祈っています。
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