2024年に作った小編成曲の紹介


1.Intermedio

公開日 1/6
編成 マンドリン×4

読みは「インテルメディオ」で、インテルメッツォと同じような意味です。ただ私としては間奏曲というより幕間劇のニュアンスが欲しくて、インテルメディオとした方が検索したときにちゃんと幕間劇と出てくるのでこうなりました。
音楽の形式をあらわす言葉ではないので構成は特に気にせず作りましたが、サウンドは一応クラシカルにしました。とはいえ対位法・和声的にはところどころ強引にやっていますから全く厳密なものではありません。
展開が多いので三分の曲にしてはなかなか密度が濃く、作ってみると実際より長く感じました。

2.Coffeehouse

公開日 1/13
編成 ギター×2

昔は全くコーヒーを飲む習慣はなかったのですが、何かきっかけさえあると何でも習慣化する癖があり、コーヒーもいつの間にかほぼ毎日の習慣になってしまいました。しかしこだわりはないので毎回インスタントコーヒーです。
コーヒーハウスはイギリスのイメージが強いようですが、特にそういった意図はなく、「喫茶店」「カフェ」よりも「コーヒーハウス」の方が曲の印象に合うな、と思ったというくらいの理由で付けました。

3.Lilium

公開日 2/3
編成 マンドラ×4

割と和声法を意識して作りましたが、厳密なものではありません。構成はメロディを三回繰り返すだけなので、もっと要素を足した方が良いか…?と心配にはなりますが、蛇足になりそうだったのでやめました。
マンドラにしてはかなり高い、hi-Gまで音があります。「海辺の時計台」でも使いましたが、よほどのことがない限り書くべきではない音域です。それだけに、ここぞというときに出すと効果は高いです。うまく弾けると天国的な透明感がありますね。

4.Elegia

公開日 2/24
編成 ギター

独奏は小編成に含まれるのかどうかわかりませんが…初のギターソロです。
私は中学生の頃から大学に入る直前まで、ギターを習っていました。技巧的なソロ曲は弾けませんが、楽譜作りには大いに役立っています。
私でも弾ける程度の曲なので、初心者の方でも練習すればちゃんと弾ける難易度になっていると思います。「Elegia」はイタリア語で、英語の「Elegy」と同じ意味ですが、語感を優先してチョイスしました。

5.Memories

公開日 2/25
編成 マンドリン、ギター

これは2024年に作ったわけではないのですが、他に紹介に妥当な記事もないのでこの記事で紹介します。
2023年に、The Sydney Mandolin OrchestraのOliver Rathje氏からご連絡をいただいて、依頼内容は、楽団の指導者・音楽監督であるWerner Ruecker氏とFiona Horbach氏のためのプレゼントとして、曲を贈りたいとのことでした。
ノスタルジックな雰囲気で始まり、最後には希望溢れる終わり方が好ましいということで、基本的にはその流れに合わせて作りました。ですから、曲の構成も大きく二つ、ゆっくりな部分と早い部分に分かれています。
こういった構成は自主的に作ろうとすると、なぜその構成にするのか?という必然性に困ることがありますが、依頼ならばその点に拘泥することなく、ストーリー性を感じさせる内容も説明なくポンと出せます。

6.Neon Street

公開日 3/9
編成 マンドロンチェロ×4

アメリカの東側の音楽を意識して作りました。具体的にはキャロル・キングとかスティーリー・ダンとかなので、強いていえばロサンゼルスになるのかもしれません。
と同時に、日本のシティポップも意識していて、場所はどこかと問われれば東京です。そもそも私はアメリカに行ったことがないですし…。
マンドロンチェロのノイジーな感じが、うまく雑踏やゴミゴミとした感じを出せていたので、歓楽街のネオンサインをアイコンとしてタイトルに使いました。
シンコペーションがとても多いですね。学生の頃にもっと細かい16分のシンコペーションだらけの曲を作って呆れられたのを思い出します。

7.SEVEN

公開日 3/21
編成 ギター×2

珍しく変拍子、7/8拍子です。
変拍子にすると、音を細かくしないと拍を追いにくくなるので、聴きやすい曲にするためには自然と音数が増えます。他にも、そもそも演奏難度が上がるといった制約が増えるので、あまり連発はしていられないスタイルです。
とはいえ、ジャズの名曲「Take Five」やホルストの「火星」など、変拍子であっても印象的なメロディが登場する名曲というものはあるので、制約があるから…と諦めずに、たまには作るのも良いものです。

8.Frustration

公開日 3/30
編成 マンドリン、マンドラ、マンドロンチェロ

最近のK-POPなどで使われているようなリズムを基調に、一風変わった動きのメロディを乗せてみました。
現代ポップスの旋律はいわゆる日本の歌謡曲タイプの動きとは全く違います。1コーラスでドラマを作っていくというよりは、旋律の動き自体を取り出してみたときの面白さを重視している感じがしますので、今回の曲でも動き自体の面白さを追求してみました。特にサビの動き方はマンドリン属にもよく合う、新鮮味のあるメロディになったと思います。

9.ゆりかご

公開日 4/6
編成 ギター

意外なほどにスムーズに制作できました。音数は多いように聴こえますが、ほぼ全てが掴みやすいコードなので、弾きやすいはずです。
ギターはマンドリンと同じく弾いた音が減衰する楽器で、トレモロ奏法もあることにはありますが、マンドリンほどオーソドックスな奏法とはいえないので、ギターの曲を作るときは音の時間的な密度不足をどうするか…という問題を抱えることになります。
その解決法の一つがアルペジオ(分散和音)です。アルペジオといっても音の配置の仕方は様々で、微妙にパターンを変えて最適な形を探していきます。この曲でもその点に時間がかかりました。

10.Duo D'Adieu

公開日 4/13
編成 マンドリン×2

タイトルはフランス語で「別れのデュオ」の意。デュオは二重奏でも二重唱でも、ニュアンスはどちらでもいいです。ゼクエンツ(同形反復)をジャジーに飾るとなると、ミシェル・ルグランを連想せずにはいられない…ということで、フランス語のタイトルです。
マンドリン二重奏は、過去に作ったものはいずれもピッキング主体だったので、そろそろトレモロ主体のものも作るか、ということでこういった曲調になりました。二重奏だとあまり休みを与える余裕がないので、結構弾いていて疲れます。

11.帰り道の思い出

公開日 4/14
編成 ギター×2

この「思い出」というのは、私の思い出ではありません。中学時代、吹奏楽部の友達がいて、その人が卒業文集に書いたのか、その人から直接聞いたのかは忘れましたが、部活の練習がキツかったり、学校で問題を抱えて、放課後の帰り道で涙が出たことがあった、というエピソードが私の記憶に残っていました。
だから私の記憶ではないのですが、このエピソードをもとにイメージを膨らませて、モヤモヤとした気持ちを抱えながら、ひとり家に帰る道を歩くという気分が、結果としてこの曲の雰囲気から感じられるように思い、こういうタイトルにしました。

12.天使の小舟

公開日 4/20
編成 マンドラ×2

曲のアイデア出しに苦労したのですが、6/8拍子にしてみよう、と決めてからはスルスルと音が出てきてすぐ完成しました。
6/8拍子というのは、伝統的に舟歌に使われたり、川の流れや海の波をイメージさせる曲でも使われてきました。この曲の印象は、それに則って舟のイメージではあるのですが、かなり軽く、場合によっては空を飛んでいるような印象もあるな…ということで、そういった印象を説明するために「天使」というワードをくっつけてみました。簡単な単語の組み合わせで意外性のあるタイトルを作れると達成感があります。

13.Little Flower

公開日 4/27
編成 ギター

何か特定の花の名前にしようかと考えましたが、もっとざっくりと小さな花一般を指すほうが曲の印象に合っているな、と思ったのでLittle Flowerにしました。曲の構成はやや変則的で、ロンド形式をひねったような構成になっています。明確なメロディが常にあるわけではなく、ところどころ流れるような、ただコード進行だけがある、という部分も意図的に作っていますす。そうするとBGM的な雰囲気になりますが、たまには良いのではないでしょうか。

14.あの丘に立つ

公開日 5/4
編成 マンドロンチェロ×2

宮﨑アニメにはよく印象的な丘が出てきて、「風立ちぬ」や新作の「君たちはどう生きるか」でも象徴的な使われ方をしていました。あの丘と空の感じが監督の原体験の中にあるような気がしまして、私にも似たような原体験があるので、同じような要素の風景を繰り返し描くことにシンパシーを感じています。
昔住んでいた家はとても小さな坂を登ったところにあって、子供の頃にその坂から見た夕陽が、いつまでも自分にとっての美しい風景の原体験として記憶に残っています。大人になってしまうとそれは坂とも思えないような小さな勾配でしかなくて、現実にあるのにもはやその場で幼少期と同じ体験はできないのですが、記憶には残っているのです。そういう、いつになっても思い出すような、それぞれにとっての「丘」のようなものがあるのではないかな、と思います。

15.セピア

公開日 5/5
編成 ギター×2

ノスタルジックな曲が続いているのは、ジブリ作品の「海がきこえる」を渋谷で見て、それに影響されたからです。一度ハマるとしつこく反芻して、気に入った和声感やコードをとりあえず消化したくなり、自然とノスタルジーな雰囲気の曲を作りたくなります。

16.Skywalk

公開日 5/18
編成 マンドリン、マンドラ

重音をたくさん使っていますが、開放弦を多めにするなど、できるだけ掴みやすい形にはしています。マンドリン属の特徴は複弦であり、単純に掻き鳴らすだけでも味があるもので、一度そういった原点に立ち戻るつもりで作ってみました。そのため、トレモロはありません。

17.Feel Fine

公開日 5/19
編成 ギター×3

過去の記録を確認したところ、ギター三重奏は割と需要があったので、遅ればせながら作るか、ということで今年最初の三重奏です。
ビートルズを意識していて、タイトルはもちろん「I Feel Fine」からのインスパイアです。ビートルズの曲はブルースからの影響が大きく、しかもその使い方、コードに対するメロディの当て方がシンプルかつ効果的です。それを踏まえて、ブルース系のコード進行を踏まえてどう作るか、という点で色々と試してみました。

18.Old Home

公開日 5/25
編成 マンドラ、マンドロンチェロ

2024年4月にフジコ・ヘミングさんが亡くなられて、その追悼の意も込めて、彼女が歌った「Make It Home」という曲へのオマージュとして作りました。といってもどこがどうオマージュなのかわかりにくいと思いますが、コード進行が一部同じであることと、雰囲気をやや寄せています。
構成はわりと思い切りまして、イントロ(序奏)が1分ほどあり、全体の1/3ほどを占めています。視聴環境の変化によって、現代の曲は「飛ばされる」ということが当たり前になりましたから、飛ばされないようにイントロが短くなってすぐメロディに入る曲がほとんどですが、その流れに逆行してみました。
そして最後のサビは3回繰り返すという、これもやや珍しい構成にしています。普通、これだけ繰り返すならフェードアウトで終わるようにするところですが、繰り返しとは別にアウトロ(後奏)もあります。
地味ながら、色々と挑戦できたと思います。

19.Sweet Wave

公開日 6/15
編成 ギター

私はギターでソリスティックな演奏はできないので、デモ演奏をする必要がある都合、書く曲もソリスティックにはなりません。(自分が弾かなくてもいいならソリスティックな譜面になる可能性がある)
自然と使える音のパターンは限られますが、そのぶん弾きやすさは担保できます。私でも弾ける難易度に落ち着くということですね。
メロディが明確にある曲ですが、アルペジオと混じるとどれがメロディなのか検討する必要はありますので、そこで解釈のゆらぎは出てくると思います。強弱はほとんど指定していないので、その点の解釈の揺らぎも弾くうえで面白さになるかな、と思います。

20.雨傘のステップ

公開日 6/16
編成 マンドリン、マンドロンチェロ

KANさんの「雨にキッスの花束を」を念頭に、90年代ポップスの雰囲気を参考にしました。スネアにゲートリバーブがかかっているような気持ちで聞いてみてください。
わりと音数多めで、シンコペーションも多用していますが、八分音符が基本なのでそこまで難しくはないと思います。要所要所のキメはむしろ音数少なくシンコペーションなしで、対比させています。

21.なみうつこえ

公開日 6/22
編成 ギター×2

タイトルを考えるとき、できるだけ簡単な言葉を使いつつ、組み合わせによって重層的なニュアンスが出るものが思い浮かべばいいなと思っています。そういう意味では、今回の「なみうつこえ」はなかなか良くできたと思います。「波打つ」も「声」も非常に一般的な言葉ですが、組み合わさると単語同士のちょっとした飛躍を埋めるような思考を促しそうです。
曲のニュアンスとしては、小さくて心地よい空間・関係で完結しているイメージで、そこで交わされる会話を声が波打つようだ、と喩えているわけです。

22.Sunday In The Park

公開日 6/29
編成 マンドリン(マンドラ)、ギター

マンドリンはマンドラに置き換えても弾けるような楽譜になっています。
タイトルは、Chicagoの名曲「Saturday In The Park」のもじりです。内容との関連はほぼないですが、雰囲気はまさに休日の公園というイメージなので、意味のないもじりというわけでもありません。
イントロから、すきまの多い特徴的なリズムでリフをやり、ずっと跳ねる感じの曲調で進んでいきます。トレモロはあくまで装飾として、バラード系の曲とは差別化した使い方をしています。

23.星の海のクジラ

公開日 6/30
編成 ギター×3

なかなかロマンチックなタイトルになりました。曲を作ってみて聞いた感じ、漂うイメージ、海のイメージ、星のイメージなどが重ね合わさっていると思ったので、色々と考えてクジラを使いました。せかせかせず、ゆったりと泳ぐようなイメージがこの曲に一番近いと思ったからです。
ギターは、マンドリンなどと違ってトレモロのように気軽な奏法変化が使えません。(トレモロやラスゲァードはありますが、メロディを弾く際に気軽に使えるものではないな、という印象です)そのため、単純なメロディの良さが試されるという緊張感がありまして、そのせいか今年作った曲の中ではギター曲の方が光るメロディを作った打率は高いような気がします。この曲もなかなか自信があるので、そのうち他の編成に編曲してみるかもしれません。

24.雨の光に包まれて

公開日 7/6
編成 マンドラ、ギター

以前、「雨の迷宮」という曲を書きましたが、それがメランコリーの真っ只中だとすれば、「雨の光に包まれて」はメランコリーの終わりに近い状況と言えそうです。
雨は降っていながらも、光があり、明るさがある。雨上がりではなくて、まだ降っている。そういう微妙なグラデーションのある雰囲気です。

25.懐かしき夢

公開日 7/13
編成 マンドロンチェロ、ギター

夢といっても二種類あって、寝ているときにみる夢と将来に向けての希望を表す夢があります。今回は「懐かしき夢」ということですから、昔みていた夢、つまり後者の意味での夢ですね。しかし、つい思い出してしまう寝ているときの夢があるならば、思い出しているときの幸福さはどちらの意味であっても大して変わらないかもしれません。
ゼクエンツ(繰り返し)に頼ると簡単に曲ができてしまうのであまり使わないのですが、簡単に作れたから曲がダメになるとは限りません。むしろシンプルでわかりやすい曲になりやすいので、連発すると飽きますがたまにはいいのではないかと思います。

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