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100日後に死ぬワニの100日目の(偽最終回)の話。


この100日後に死ぬワニが我々に訴えかけるメッセージとは何なのだろうか?

何気ない平凡な、あるいは、ささやかな幸せも不幸せもある「日常」はいつ消えるか分からない。
あらかじめ死ぬという結末を知ったうえで皆で見て尊び、また自分も死は他人事ではない、そして「死」というものは、何の予告もなく突然訪れる事がある、それはワニだけの事ではなく、それを読んでいる私たち自身だって同じだ。という感じだろうか?

これだけの共感とか注目を浴びるのもうなづけるというものだ。

しかし、俺は何日か見て、自分がめちゃめちゃ捻くれているのか、サイコパスなのか分からないが、100日後に死ぬワニ自体に正直あんまり興味が沸かず、特に見かけたら見てみる。くらいの距離感で漫画としてもやはり漫画の中に非日常性とか異常性ばかり求めて漫画を読んで来たので、あの淡々とした感じもいまいち楽しめずフーンという感じだった。

しかし、99日目にスズキナオさんがこうつぶやいていたのをメテオ君が教えてくれた事でまた興味を持つようになった。

スズキナオさんは


とツイートしていた。

この意見は衝撃過ぎた!

ものすごい平和で優しさ溢れる視点!

俺には全くなかった!

しかし「創作物の中での何者かの死に様を楽しむのは怖い」とすると、結構多くの作品が怖い気のする作品になってしまうんじゃないか?
たとえば歴史もので主人公は死に様が有名な人物の場合は死ぬのが楽しみに待たれている気もするし、ヒーローものだと悪のボスが死ぬのが楽しみになる場合もある。北斗の拳の敵の死にざまとかは結構楽しみだったし、感動ポルノなんて言われていた「難病恋愛物」映画なんてのは必ず死別するわけで、確実にそれは楽しみにされていたはずだ。
「ナオさん、それはちょっと優しさの風呂敷を広げ過ぎでは?」と思ったんですが、T氏が「ナオさんは優しさが売りのプロレスラーなんです!」と言っていた事を思い出して、ナオさん本人がどう考えておられるかは分からないけれど、その例えに深く深く納得した。

プロの優しさ!!すげー!

俺たちの心が汚れ切ってるだけなのかも知れないが、その後は「100日後に死ぬラーメンマンだったらどう思う?」とか、「明日、死ぬとこだけ確認する」とかそういう事を言い合っていた。こえー!

とはいえ、登場人物の死を確認して「本当だった!」で笑っちゃうのも一つの楽しみ方だから、作り手としては受け手がどんな風に受け取るかをコントロールするってのはやっぱ不可能だと思う。

さて、この100日後に死ぬワニで俺が面白いと思ったのは、最終日、本家よりも先にニセモノアカウントが偽の最終回を発表した事だった。


オリジナルのきくちゆうきさんと同じアイコンで、一文字違いの名前「きくちゆつき」という名で自分の想像した最終回をツイッターに掲載した。

この二次創作ともパロディともニセモノとも言える最終回は、「ワニがテレビを見ていて「本日より「ワニ」の名前を「ワヌ」とすることで地球の偉い人が決定したことを知り、ワニもその瞬間からワヌとなり死なずにすんだ。」というオチである。

それを見た人がいろいろな反応をしていて非常に興味深かった。年齢も顔も分からないし、どんな人なのかは分からないが、怒っている人がほとんどだった。そのほとんどが内容には一切触れず、偽物である!紛らわしい!悪質だ!売名だ!という事で怒っていた。

この怒っているワニの熱心なファンの皆さんの多くはあの優しく実直なワニに感情移入し、今一番「ワニに死んでほしくない」と思っている人達のはずであるが、この「きくちゆつき」が投稿したワニはどんな理由であれ、とりあえず死なずに済んでいる。

「ワニは死んでいななかったEND」

である。
歴史IFみたいなものだ。

死んでほしくないにも関わらず、死ななかった事に裏切られた感があるのか?それとも死ななかった理由が唐突すぎる所が問題だったのか?
それとも理由がしょうもないと思ったのだろうか?

単に「偽物」にだまされたという事に怒りを抱いているのではないだろうか?
「きくちゆつき」のアカウントは同じアイコンながら、プロフィールを見ると「100日後が待てない」とだけ書いてあり、ワニのファンである事は間違いない。
しかも、本気で騙して成り済まそうというならば、わざわざ「一文字だけ変えた」名前を名乗るわけがなかろう。ユーザー名が違えば、Twitterで同じニックネームはいくらでも名乗れる。
これは、巧妙であって、悪質とは言えない。
本当に悪質なら絶対バレないようにやるからだ。

また売名行為は許せない!と怒ってる人もいたが、売名というのは、破天荒で突飛な行為であからじめ名乗っていた名を売ることが目的であって、この「きくちゆつき」はこの作品以外に何のツイートもしていないから、あとから「偽物は私です」と名乗り出ることも考えにくいので、別に売名する目的があったわけではなかろう。なので、「売名だ」と怒っている人もそんなに怒る事はないのではないだろうか?


おそらく偽物「きくちゆつき」はワニのファンでもあり、それと同時に愉快犯であろう。100日後に死ぬ、というセンセーショナルな設定はパロディしやすいし、大喜利状態になることは十分に考えられた。

騙されて怒ってしまった人はお気の毒だが、そもそもオリジナルがツイッターで流れてくるのをみんなタダで読んでいるわけだし、別に偽物が出てきて騙されたことであなたが物理的にも金銭的にも損害を受けたわけでもないわけで、何をそこまで怒っているのか?とは思う。

どうせ本物はこの後ちゃんと出るんだろうから、別にいいじゃないか。むしろ最終回前にちょっとそういう事があった方が盛り上がるんじゃないか?と考えればいいのではないだろうか?

俺自身が毎日欠かさず見てなかったので、毎日超楽しみに見てた人はすげえ怒っても無理ないのかなとも思うけれども。

いや、偽物の登場に怒る人こそが、きくちゆうきさんに対しての本当の意味でのファンでありお客さんなのかもしれない。

さらに、俺はナードコアとかサンプリングミュージックとか「偽物」ばかり作ってきたので、偽物に対するアレルギーが人よりもないのかも知れないな〜

とかなんとかいいつつ、昨夜から急に注目しはじめた無課金読者である俺も、なんだかんだ言って必ず死ぬことが決定しているならばせめてオリジナルのきくちゆうきさんによる「その死に様」を楽しみにしているわけである。

しかし、本編に興味がさほどなくても、色々と語れる!
そりゃ話題になるわ~!すげ~!

でもぶっちゃけ俺は作者さんにとっては、死に方自体はさほど重要じゃないんだろうなあ、と思っている。ユノ~? 🔥



おまけ:100日後に死ぬワニと街頭技巧師

1日目
「100日後に死ぬゥ〜?本当かァ〜?」

2日目〜98日目
特になし

99日目
「本当なのかァ〜?」

100日目

「本当だった!
…これがストリートトゥルース!街頭技巧!ユノーウ?」



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