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第6回闇キャンプ⑤伝説の始まり その者、青き衣をまといて闇チームの前に降り立つ【香川県・小豆島ふるさと村キャンプ場】

■マスカルポーネな朝がきた

アラームを鳴らさなくても、キャンプの時は不思議と必ず朝日が昇る前に目が覚める。前日深い時間までおしゃべりしていても必ずだ。

トレーラーハウスのウッドデッキから見た「小豆島ふるさと村キャンプ場」の早朝の景色。ほんのり染まって時がたつごとに煌めきを増していく海が美しかった

この時もそうだった。まだ早い時間に目が覚めた私は、寝床に敷いていたエアマットレスの空気を抜き、毛布を畳んで外に出た。ウッドデッキに据え付けらえているベンチに腰掛け、徐々に白んでいく空を眺めながら冷たい空気を吸う。晩秋の朝の冷たい空気を吸うと気持ちも体もしゃんとする気がするので、私はこの季節が大好きだ。リーダー達が眠る隣のトレーラーハウスからはディレクターのハッピーサウンドがグォーグォー聞こえてくる。まだ誰も外には出ていない。一足先に顔を洗って帰りに散歩気分で周りを見ながら歩く。楓の葉が真っ赤に紅葉しているのを見ながらウッドデッキに戻ると、ふとウッドデッキのすぐ横の木に2~3輪だけ花が咲いているのに気づいた。

私が泊まったトレーラーハウスAのすぐ近くに植えてある木に咲いた桜のような花。
未だ何の花かは分かっていない

桜のような小さな花だった。冬桜だろうか。予期せずに大好きな桜の花にそっくりな花に合えたことが嬉しくて写真を撮り、それを眺めながらベンチに座った。
海がキラキラしているのを見ながら簡単に化粧をしていると、隣から聞こえてくるハッピーサウンドの音量が一瞬大きくなった。リーダーとGOTOがトレーラーハウスから出てきたのだ。
「おはよう!」まだ寝ているディレクターやたっちゃんを起こさないように声を出さずにお互いに手を挙げて挨拶をかわす。

身支度を終えると芝生エリアで朝食の準備が始まった。リーダーがコーヒーを沸かす横でGOTOはアルミホイルに包んで芋を焼いている。芋の甘い匂いが漂い始めた頃。「じゃじゃーん!」と得意げにGOTOが瓶を取り出して、まるで勇者が宝剣を持つように高らかに掲げ、それをテーブルの真ん中に据えた。

瓶に入っている白い物体がGOTOお手製の自家製マスカルポーネ、通称・闇ポーネのお姿。前日から度々話題に挙がっては我々を震え上がらせていた憎いやーつ

大きめのジャムの瓶のような物にたっぷりと入った白いクリーム状の物体。そう、これぞ昨日から話題に上っては皆の心にもんやりと不安の種を植え付けていた存在。この旅のラスボスといってもいいだろう、GOTO特製の自家製マスカルポーネ(通称:闇ポーネ)である。

■コレもう一回作れる?

「出たーーーーーーーーー!」
笑い転げる私たち。
これが、これこそが、GOTOの自家製のマスカルポーネか!
ついさっき起きて顔を洗ってきたばかりのたっちゃんも加わり、我々はザワザワし始めた。それをしり目にGOTOは焼きあがった芋を適当な大きさに割ってパンに挟んでホットサンドにし始めた。なかなか質量のある朝ごはんができそうだ。
それを固唾飲んで見守る我々。どうやら、ホットサンドクッカーで焼く前に、GOTOによってたっぷりと闇ポーネも挟まれている様である。

焼きあがった焼きいもホットサンド(=重量級朝食)の側壁に闇ポーネをこれでもかと塗ってカロリーを鬼増ししていく地獄の料理長・GOTOの様子

焼きあがった焼きいもホットサンドを取り出すと半分に切り、皿に乗せていくGOTO。瓶のフタを外してあつあつのホットサンドの表面にこれでもかと闇ポーネを塗り付け「焼き芋ホットサンド闇ポーネ添え」として食べるよう我々に伝え、自分もやって見せた。焼き芋ホットサンドが大量に乗った皿が我々の目の前に置かれる。

テーブルに所狭しと並べられた「焼きいもホットサンド」と淹れたてのコーヒー。

「あったかいうちに召し上がれ♪」というGOTOの言葉を受けてホットサンドを手に取った。甘くて香ばしい焼き芋の香りとともにトーストの小麦の香りが漂ってくる。そして少し遅れてレモンも香ってくる。闇ポーネの香りだ。
そして、今しがたGOTO料理長がやって見せた通りに闇ポーネをスプーンにたっぷりと取り、ホットサンドの側壁に塗り付けた。
意を決して、ホットサンドにかぶりつく。カリッという焼けたパンの歯ごたえ。同時にハンドクリームに近いクリーム感を感じる。もしかしたら闇ポーネはメニュー考案者が想定していた水抜き時間よりも早く瓶に回収されたのかも知れない。だからハンドクリームのテクスチャに仕上がったのかも。
小麦の香ばしい香りと焼きイモの甘い香りが鼻に抜けようとしところを、後ろから猛追して来たレモンの香りがすごい速さで追い越して鼻孔を駆け抜けていく。すっげぇ、レモンだ!分離が進まないとGOTOが施した1個分の追いレモンが効きに効きまくっている。
しかしこれが不思議と芋の甘さと調和しているのだ。ナニコレ、美味しい。

ホットサンドの断面を見てわかるように、ぎっちりと焼きいもが詰まっている。
我々のキャンプ史上、圧倒的質量を誇る朝食となった

「これ、マスカルポーネっていうよりサワークリームに近いね」
半分くらい食べ進めたリーダーが言う。なるほど、確かにそうだ。ホットサンドを頬張りながらコクコクと頷く私とたっちゃん。
「でもなんか美味しいよね」
続けるリーダーの声にまた頷く私たち。
「これさ、もしもう一回作ってって言ったら同じのまた作れるん?」と問うリーダーにGOTOは
「もう色々レシピに書いてないことしたけん、覚えてないなぁ。無理(笑)」と答える。
「作れんのかーい!」と我々はまた笑い転げた。その時、

上空に現れた彩雲。鳥の羽のような雲の一部に虹色の部分があるのがお分かり頂けるだろうか。
真っ青な空に浮いた彩雲の美しさは、忘れられない旅の思い出になった

見上げた我々の上空に鳥の羽のような形をした美しい彩雲が浮かんでいるのを見つけたのだ。
「おおおおおおおおおおおお!」
我々は感動の声をあげながら空にカメラを向けた。
少しずつしかし確実に薄くなっていく虹色をカメラに収めて、口々に「なんか良いことあるんじゃない!?」と言いながら我々は朝食を済ませた。

少し遅れて起き出してきたディレクターにGOTOが闇ポーネの塗り方を指導している様子を笑って見ながら片付けを進めて荷物を車に積み込む。正午過ぎのフェリーに乗船予約をしているのだ。
ディレクターの朝食も終わり、荷物もすべて車に積み終わった頃、スタッフの方がゴミを引き取りに来てくれた。分別したごみを引き渡してお礼を伝えると我々は「小豆島ふるさと村キャンプ場」を出発した。
目指すはフェリーの乗り場がある土庄港。途中で昨日からリーダーが気になっていた銀色バスの古着屋さんに立ち寄る予定だ。

■運命の出会い
 全てはここから始まった!

小豆島の美しい海を左手に眺めながら、2台の車は軽快に走る。
確かこの先のカーブを曲がって少し先に銀色バスの古着屋はあったはず。
先導する私たちの車が減速する。古着屋さんはこの道路沿い右手側にある。
前方に銀色のバスが見えてきた。あれだ!
しかし、様子がおかしい。昨日と違う。
すぐ目の前にある路側帯に止まって様子をみると店は閉まっていた。
不定休の古着屋さんは今日は開店していないようだ。
仕方がないので予約している時間よりだいぶ早いけど土庄港へ向かうことにした。また次に来たときに来ればいいよと言いながら車を走らせる。その車窓に、ふと気になる建物が見えた。

車窓をスローモーションで流れた謎の館「妖怪美術館」。
引き寄せられるように、我々はここに向かった。ここでまさかの出会いがあるなんて…

流れていく車窓の景色の中、その建物だけ妙にスローモーションに我々の目には見えた。「妖怪美術館」である。妖怪…この風光明媚な小豆島になぜ妖怪なんだろう。このまま帰ってはいけない、そんな予感がして気が付けば「妖怪美術館」を検索していた。それは後ろを走るリーダーの車中でも同じだったらしい。にわかにLINEが騒がしくなる。妖怪美術館は5つもあるらしい。800体を超える妖怪が展示されているらしい。ローストビーフも食べられるらしい。よくわからないけど、すごく気になる。行かねばならない。我々はそう思った。こうして車を引き返してきた我々は「妖怪美術館」に歩を進める。
古民家風の建物の横にアマビエ様の絵が描いてあるアートな建造物がある。いきなり建物に入るのが恥ずかしい人見知りを爆発させるリーダーはその建造物の方へ行って、それにぶら下げられている絵馬を見ている。
私とGOTOは建物の前に出されているローストビーフの写真入りの看板を見て「ナニコレ、旨そう!」と話す。たっちゃんは建物の全景をカメラに収めている。ディレクターはなにやら建物の前に貼りだされているポスターを読んでいた。
「ちょ、これ面白いんですけどー!」リーダーが手招きをする。

国民宿舎小豆島のナカノヒトが書いたチョーケシ絵馬。
このように、一人では抱えきれない悲しい事ややらかしてしまった失敗などを
絵馬にして奉納することで自分の気持ちに区切りをつける前向きなアートである

建造物は「チョーケシ様」という名前のアートらしい。そこにぶら下げられた絵馬には、自分が帳消しにしたいと思う失敗や、悪い癖が面白おかしく書いてあった。目についたものをひとつずつ読んでいく。どれも面白くて夢中になってしまいそうだ。「これ見て」とディレクターが読んでいたポスターを指す。行ってみると「闇くじ」と書かれてある。妖怪美術館が運営しているSNSをフォローすると無料でくじを引けるらしい。なんじゃそりゃ。無料でいいの?気になった我々が建物の中を覗き込むとなにやらオシャレカワイイお土産も見える。「行ってみよう。くじ引こうや」と我々はその建物の中に入った。ミュージアムショップと案内所を兼ねたその建物の中に入ると、お土産物を物色するチームと闇くじを引きに行くチームに分かれて動き出した。私とリーダーが闇くじに動く。

この時の男性スタッフさんが後に我々を小豆島の虜にする運命の人となるとは、
この時の我々は気付くはずもなかった

カウンターに立っていた青いカーディガンを羽織った長髪の男性スタッフの人に「闇くじ引きたいです」と明るいトーンで声をかける。我々は決して怪しい者ではありませんよーという気持ちを込めて。
闇くじは黒い袋に入っているらしい。その男性スタッフは黒い袋を手に持つと口を開いてどうぞと差し出す。なるほど闇くじっぽい。最初にリーダーが引くことになった。リーダーがくじの入った黒い袋に手を入れてくじを引き抜いたその時、「闇よ、降り注げぇぇぇ~!!!!」長髪の男性スタッフが少し恥ずかしそうに、でも大きな声でそう言ったのだ。その瞬間、全員の視線が合った。
オモロい人、おったーーーーー!そう目と目で会話をしたのだ。

■その男、チョーケシ兄やんにつき

結局、我々は全員が闇くじを引いた。
そして闇くじで手に入れた景品を手にミュージアムショップの前の広場で景品開封動画を撮り始めた。

景品が入った黒い袋は薄手のビニールなので、ほんのり中身が見えつつも張り付けたメッセージによってほぼ隠されているという、優しいんだかドSなんだかよくわからない仕様になっている
素敵なアヒルの笛を引いたディレクター。さっそく吹こうとするも笛は鳴らずスースー言うだけ。
実に闇が深い、そんなひとコマ

景品はいずれも黒い袋に入っていて開けるまで中身が何かは分からない。そして、その袋には中に入っているものになぞらえてオモロいメッセージが書いてあるのだ。
それを読み上げながら、袋を開封し中身を見ては爆笑する。

大量の吹き戻しを吹いて伸びた数で肺活量を競う「地獄のピーヒャラ」。
ひと際大きな袋に入っており、恭しく手渡された

とりわけ、「地獄のピーヒャラ」には腹を抱えて笑った。気になるから帰りのフェリーで組み立てようと言いながら、フェリーの時間が迫ってきていたので、妖怪美術館を後にすることにした。我々は美術館の中に入館することなく、ミュージアムショップとその前だけで1時間以上キャッキャ言って笑い転げて遊んでいたのだ。今思うとどうかしている。
開封動画を撮っている最中、私は、先ほどの男性スタッフがミュージアムショップの出入り口から顔を出しファビュラスな長髪を風になびかせながら我々の様子をうかがっているのに気づいた。彼の視線は、私たちが何をしているのかというより、私たちは一体どういう人たちだろう、そっちを伺っているように見えたのが印象的だった。

チョーケシ棒を持ってチョーケシダンスを奉納するチョーケシ兄やんのパフォーマンス。
彼はこのダンスのために作ったチョーケシの歌で真面目に紅白出場を狙っている。
兄やんの後ろで「動かない」というアートを実演しているのは、妖怪画家の柳生忠平氏

後で分かったことだが、彼こそは「チョーケシ兄やん」。妖怪美術館を運営する「アートプロジェクトMeiPAM」の代表である。
これも後で分かったことだが、彼は、ミュージアムショップに入ってきた我々を見て「わ。何か言わなきゃ」と必死で考えた末にその時初めて来館者に対して発した「闇よふりそそげ~!」の一声で我ら闇チームを惹きつけ小豆島の虜にしたのだ。

円になって「地獄のピーヒャラ」を作る闇チーム。
この地獄のピーヒャラには後ろの席に座っていたお子様もくぎ付けになっていた
帰りのフェリーの甲板で開催された地獄のピーヒャラ大会で優勝を収めた宮崎ユウさん。
彼女による「ウイニング・ピー」で、吹き戻しが全部伸びるとピーッと音が鳴ることが判明した

帰りのフェリーの中、円になって笑いをこらえながら「地獄のピーヒャラ」を組み立て、甲板で肺活量を競う「地獄のピーヒャラ大会」を開催した。何をしても面白くてとにかくゲラゲラと笑い転げては、兄やんの「闇よ降り注げ~!」の言葉を真似して言い合った。
そして、また絶対に小豆島に来よう。今度は妖怪美術館とがっぷり四つを組むが如くしっかり向き合おう。と話したのだった。
この闇くじをきっかけにSNSをフォローしたことで彼らのオモロイ活動を知ることとなり、我々はどんどん妖怪美術館に、ひいては小豆島にハマっていったのである。

その後の我々闇チームと妖怪美術館ならびに小豆島のオモロい面々との交流の様子は、我々闇チームがまとめたマガジン「小豆島調査報告書」でご覧いただきたい。
また、闇くじについて愛媛に帰ってすぐにリーダーが作った動画がこちらである。

妖怪美術館の面白さにやられていく我々の様子が分かってもらえると思う。妖怪美術館を知っている人もまだ行ったことない人にもぜひ見てほしい。

こうして小豆島から高松港に着いた我々はそのまま凝りもせずにキャンパーの聖地・アルペンアウトドアーズに挑んだ。

帰り道に再度訪れたアルペンアウトドアーズで散財を楽しむ闇チーム。
私はこのCHUMSの「ブービーエプロン」に散財をした

リーダーとGOTOを堕としたやり手スタッフさんこと「ハンターさん」との感動の再会はできなかったものの、それぞれがそこそこの散財をして夕陽を背に家路に就いた。再び小豆島を訪れる日を思い描きながら日常へと戻ったのである。

【追記】
この記事を読んだ妖怪美術館ナカノヒトより、青き衣をまとったチョーケシ兄やんのイラストを送っていただきましたので、ファンアートとして緊急掲載させていただきます(笑)

青き衣を纏った兄やんが対峙しているのは王蟲じゃないのよ!
オリーブアナアキゾウムシっていうオリーブの実に付く害虫よ!とのことです


長かった小豆島キャンプ編もこれにて終了。
次回、闇チーム全員集合の2020年年忘れキャンプの様子をお送りしよう!
1年の最後に、リーダーがRAV4であるものをド派手に轢く!
こだまするまなみんの悲痛な叫び声!リーダーは一体何を轢いたのか!?
こうご期待!
See You Next CAMP!

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