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第3回闇キャンプ★前編 キャンプ沼の案内人現る!星の降る日のデイキャンプで闇メンバーを密林へ誘う【久万高原町・千本高原キャンプ場】

台風接近の影響か、その日は風が強かった。
重信町にあるかすみの森公園には新調したタープの試し張りをするキャンプ歴4年の2人組キャンパーがいた。

メインロープの張り具合を確認していた1人が空を見上げ、「15日のキャンプ、天気大丈夫かな・・・」と隣で目印として打ったペグを抜いているもう1人に声をかける。
2人は雨男・雨女の夫婦なのだ。ワクワクすると雨を降らし、ワクワクの度合いによっては台風を呼び寄せる。今接近中の台風も、あるいは彼らの呪われし血が呼び寄せたのかもしない。楽しみなキャンプが迫っているのだ。
「GOTOさん、今日もキャンプしよるんやろ?」とペグを収納袋に仕舞いながらもう1人が返す。「今日は長浜でデイキャンプするって言よったよ。GOTOさん、完全にハマったね」と笑うのは、まなみんこと筆者の私だ。ペグを仕舞った旦那のたっちゃんがチェアに腰掛けながら「GOTOさんが来るんなら、15日は心配せんでも晴れるやろ」と晴れ女・GOTOが居るであろう長浜の方向に祈るように手を合わせる。
「それよりも、宮崎ユウも来るっていうだけで緊張するわー!」とチェアの背もたれに沈み込むたっちゃん。
私たち夫婦は4日後の8月15日に結婚式でメイクを担当してもらって以来の友人GOTOとデイキャンプをする予定なのだ。そのデイキャンプには、GOTOとともに闇チームのリーダー・宮崎ユウも参加すると連絡があった。実は私たちとリーダーはこのデイキャンプが初対面。何を隠そう、旦那のたっちゃんは学生の頃からリーダーがパーソナリティをつとめるラジオのヘビーリスナー。学校帰りに生放送を見るために遠回りしてスタジオのあるFM愛媛に立ち寄るほどのファンだった。まさにたっちゃんからすれば、リーダーは憧れの天上人。図らずもその天上人と一緒にキャンプをすることになったのだ。それを知った時「マジか!?すげぇ!」とこぼれ落ちん程に目を見開いて驚いた彼は、それ以来緊張してソワソワと落ち着きのない日々を過ごしていた。
この日のタープの試し張りは、新調したタープの確認はもちろんの事、次のデイキャンプで初めてタープを建てるというGOTOにどうレクチャーするのが分かりやすいかの確認、ならびに天上人・宮崎ユウの前で手際よくタープを張らねばという彼の気合いの現れでもあった。

こうしてやってきた2020年8月15日、第3回闇キャンプ当日。今回は久万高原町にある千本高原キャンプ場でのデイキャンプだ。

千本高原キャンプ場は、トイレや洗い場も綺麗、間伐した木の枝を薪として使えるように「ご自由にどうぞ」と置いてくれていることもあるなど、地元の方の愛があふれ、管理の行き届いた素晴らしいキャンプ場だ。この年の4月から有料化したものの、デイキャンプならテントひと張り300円、キャンプでテントひと張り600円とリーズナブル。しかも、テントに車を横付け出来るので荷物の上げ下ろしも楽というのも魅力的。足りないものがあっても車ですぐの場所に買い出しのできるスポットがある他、歩いて行ける距離に観光農園があり、秋にはりんご狩りやお芋掘りも楽しめたり、焼きたてのアップルパイが食べられたりと自然豊かな久万高原町を満喫できる場所にある人気のキャンプ場だ。
ファーストキャンプで利用した姫鶴平キャンプ場がいっぱいだった場合ここに流れてくる人も多く、休日となると早めの場所取りが必要になるスポットである。
我々夫婦も大のお気に入りで1番よく利用する場所でもあったので、GOTOとリーダーにレコメンドしてここでデイキャンプをする運びとなったのだ。

キャンプ歴4年の私に、GOTOは普段からキャンプギアの相談のLINEを送ってきており、私もそれにアドバイスをするなどしていた。今回、GOTOはタープと焚き火台を初おろしするらしい。タープの張り方を教えて欲しいと事前にリクエストを受けている。GOTO視点でのファーストキャンプの話も聞いて腹を抱えて笑っていたので、今日もGOTOは何かオモロいことをやるだろうという予感がしていた。
場所取りも兼ねて少し早め目に現場入りをしようと、ひと足早く久万高原町入りした私たち夫婦。受付のある「道の駅天空の郷さんさん」で手続きと支払いを済ませて千本高原キャンプ場へやって来た。

お盆休み直後の土日という日の並びもあり、前日から泊まっている人たちが多い。撤収をしている人もいるが、木陰の場所は連泊する人で一杯だった為、今は日向ではあるが午後からは木陰が広がってくるであろうポイントを狙って奥の少し広い場所を確保すべく車を停めた。
リーダーやGOTOが来た時になるべく早く日陰に入れるように、先に2人でタープを張って荷物を降ろし、拠点を構えるとハンモックも設置した。
今日はペルセウス座流星群が極大を迎える日、撤収の準備だけ早めに済ませて少しだけ流れ星を見てから帰ろうと話していたこともあり、私たちは自立式のハンモックを持ってきていた。ハンモックの居心地の良さは最高だ。コイツの良さをGOTOとリーダーにも体験してもらいたい。心地良く揺られながら流れ星を見たら・・・欲しくなっちゃうじゃん、ハンモック!こうしてハンモック仲間を増やそうという算段だ。そう、私たちもギアを増やしていく荷物多い系キャンパー。キャンプを始めて4年。増えに増えたギアは家に収まり切らず、たっちゃんの職場の倉庫の一角を間借りして収納しているほどだ。キャンプの沼にどっぷりと浸かっている私は、絶賛ギア爆買い中のGOTOとリーダーの2人をより深淵へと誘おうとするキャンプの沼案内人でもあるのだ。

そんな企みはつゆ知らず、私たちが待ち構える千本高原へ向かう登り坂を1台のワゴン車がひた走る。
撤収を終えて帰路に着く対向車を巧みに避けハンドルを捌くGOTO、助手席ではリーダーがカメラを回している。後方のラゲッジスペースには今日初おろしのギアが段ボール箱のまま載っている。今回はGOTOの荷物が多かったこともあり、荷物の積み降ろしの手間を考えてリーダーの車ではなくGOTOの車でキャンプに向かっているのだ。

何台か対向車をやり過ごしてキャンプ場に入ってきた黒いワゴン。キャンプ場の出入り口がよく見える位置に拠点を構えていた私たちはすぐにGOTOの車だと分かった。「ここだよー!」と手を降る。
タープ前方に停めた私たちの車も目立つ色をしているし、なによりGOTOはウチの車を知っている。すぐに私たちに気がつくだろうと思っていたが、全然違う方へとチョロQのように真っ直ぐ迷いなく走っていったGOTOの車。
「あれ?ちがう人やったんかな?GOTOさんと同じ車やし2人組っぽかったけど・・・」と話す私たち。その時、LINEで「どこ??」とGOTOからメッセージが届く、と同時に2人を乗せた車がこちら目掛けて走って来ていた。相変わらずせわしないと苦笑いをする私の隣で緊張感を増すたっちゃん。
車の中から手を振る2人が見えていた。手を振り返す私、たっちゃんは隣で息を飲んでいる。そう、彼は今まさに天上人に認知されたのだ。手を振られているのだ。まさに胸いっぱいという状態だろう。
この瞬間のことを振り返るとき、彼はいつも「学生時代の俺に『お前、あと20年経ったらあの宮崎ユウとキャンプすることになるぞ!』と教えてやりたい」と語る。

こちらへ向かって真っ直ぐ来たと思ったら、ブォォン!とすごい勢いでハンドルを切り斜めに停るGOTOの車。刑事ドラマでご存知、対象車に立ちはだかる緊急車両のような駐車の仕方がGOTOのデフォルトだ。駐車枠に対して斜めであればある程彼女のコンディションはいい。枠はなくとも今日も斜め。うん、絶好調なのね、ご機嫌麗しゅう。
薄く舞う土埃の中、2人が車を降りてくる。天上人降臨だ。今にも召されそうな顔で立っている旦那・たっちゃんとともにリーダーに初めましての挨拶をした。

この日の予想最高気温は37℃、午前中とはいえぐんぐん暑さは増している。あまり長く日向にいると、本当に召されてしまいそうだ。日陰のスペースを広げるべく、早速GOTOにタープ設営のレクチャーを始めることにした。その様子を撮影するのはリーダーだ。
必要な荷物を降ろす中、GOTOのトランクの方からバリバリバリ・・・とガムテープを剥ぐ音がする。

そうして出て来たのが文字通り開封したばかりのキャプテンスタッグのタープだった。
初おろしの最上級「現地初開封」である。やだこの子、コワイ。
この感じだと、多分ロープワークも必要になるだろう。キャンプ前にGOTOとやり取りしたLINEの内容が頭をよぎる。

ロープワークなぞ、ぐー結び1本でいい!と豪語していたGOTO。本当に硬結びをしかねない、周囲の人達の安全のためにも全力で阻止しなければ。説明書を読んだり事前の確認を省きがちなGOTOの性格をこれまでの付き合いでよく把握している私たちは、タープのセットの中に必要なものが入っていなかった場合に備えてロープや自在金具、カラビナなど、補助用のギアを内緒で用意していた。それらを以てしても対応できないタープやポールが壊れているような事がありませんようにと祈りつつ設営に取り掛かった。
タープ設営レクチャーの様子はこちらの動画でもお楽しみ頂けるので、このマガジンを読みながらご覧頂きたい。

なんせ、たった今箱から出て来た状態なのだ。最初にロープワークでペグに引っ掛けるポイントとポールに掛ける箇所を作っていく。

カルミークノットという比較的簡単に結べてテンションに強く、解くのも楽なロープワークをレクチャーした。
さすがメイクアップアーティスト。GOTOは結ぶのが上手い。1度目で成功。その後何度か練習して慣れたなと安心した時、GOTOオリジナルの結び方に派生させてカメラを回すリーダーを笑わせていた。

 「なんて言う名前の結び方やった?」というリーダーの質問に「何やった?」と聞き返す。OK,GOTO、そうくると思ってた。ちなみに、今ではこのロープワークは、闇チームの中ではGOTOの名前をもじって「キャズミークノット」と呼ばれている。
縛り方を知りたい方に向けて撮っている動画もあるので、コチラからご覧頂きたい。

そして、我が家の愛猫おでんの可愛さに悶えるがいい!(↑親バカ)

こうしているうちにも気温は上がっている。ロープワークを済ませた後は、時短のために片側で私が説明をしつつ手本を見せて、たっちゃんがサポートをしながらGOTOに反対側を建ててもらう形で進めた。
建てる時に基準になる場所に目印のペグを打っていく。メインのロープを張る大事なペグを打つ時に、目印のペグを引っこ抜いてきて再利用しようとしたり、ペグハンマーを持たずにフリーハンドの状態で元気にペグを打ちに来たり・・・相変わらずGOTOの動きは面白い。

それをなんとか予測しながら懸命にサポートするたっちゃんの細かい気遣いにリーダーは感銘を受けている。しきりに「助手が素晴らしい!」と連呼していた。

止まっているのが苦手なGOTO。ポールを垂直に持ってじっとしているのが辛いようだ。フラフラとポールが暴れるのでメインロープを張るのが大変だった。あまりに大変でGOTOの応援団ネタを私がスルーするという、とても痛ましい事故が起きたがドンマイ〜ン。

それにしても、GOTOのペグ打ちは力強い。
聞こえてくるハンマーの音はまるで採掘現場にいるかのよう。ひと際大きく、甲高い音がする。彼女は手彫りのトンネルでも掘っているのかしら?


こうして、初めてにしては完璧にタープを張ったGOTO。炎天下に有難い日陰に喜び、タープの下にギアを並べて拠点を作った。その後は我々が設置しておいた罠(正式名称:木陰のハンモック)に興味津々の2人。

寝っ転がったり、リーダーと代わる代わるユラユラと揺られてひと休みしている。しめしめ・・・ぐふふ・・・。
「Amazonで買ったんですよー。家でお昼寝にも使えるし、キャンプ持って来ても気持ちいいし。最高ですよぉ!」と悪い顔で伝える私。
すると2人はスマホでハンモックを検索し始める。「えー、こっちが正解やったかなぁ・・・」最近コットを買ったばかりのリーダーが呟いている。GOTOは検索画面を見ながら揺られている。作戦成功か・・・ニヤニヤが止まらない私。
太陽は真上の位置に来ようとしていた。そろそろお昼だ。私のハンモック作戦の成果やいかに。濃~い1日はまだまだ始まったばかり。
この続きは、闇チームのアウトドアクッキングの様子なども合わせてまた後編で。

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