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第1回闇キャンプ 絶景の四国カルストで待望のキャンプデビュー【姫鶴平キャンプ場】

四国カルストへ向かう山道を、アーバンカーキのRAV4が颯爽と走る。運転席でハンドルを握るのは、我らが闇チームのリーダー宮崎ユウだ。助手席に座るGOTOのメガネには木々の緑が映り込み、後部座席で3人分のキャンプ道具と一体化しているディレクターの中岡ユウトに木漏れ日が射す。

2020年8月1日、今日はリーダーが1年近くずっと温めていたキャンプデビューの夢が叶う日だ。前年に愛車RAV4を購入したのもこの日の為と言っても過言ではない。
ある日、市内にあるリユースショップ「セカンドストリート」の店頭でダッチオーブンに出合い一目惚れ、衝動的に購入したことがきっかけとなり、元々アウトドア好きだったリーダーの心に「せっかくだからキャンプがしたい!」という夢が芽生えた。
その小さな芽はリーダーにSUV車を買わせるまでに育ち続け、ついには一緒にキャンプをする仲間を募るに至った。
リーダーの愛車は2019年末に納車された。すぐにでもキャンプに繰り出したかったが、新型コロナウイルスの蔓延が長らくそれを阻んでいた。この日が待ちに待ったキャンプデビュー。
キャンプ初心者の3人それぞれがこだわりを持って選んだ初めてのテントを引っさげて、グループソロキャンをすべく、リーダーの出身地である久万高原町にある姫鶴平キャンプ場を目指しているのだ。
車中は3人の夢と期待でいっぱい。そして荷物も車体がはち切れんばかりに載っていた。

記念すべき初回のキャンプが姫鶴平キャンプ場になった理由は単純だった。多数の候補が挙がり迷った結果、候補地を託したあみだくじで引き当てたのだ。
とはいえ、今回目指す姫鶴平キャンプ場は愛媛の、いや四国のキャンパー達の憧れの場所と言ってもいい人気スポットである。
標高1400mからのパノラマの絶景。立ち並ぶ風力発電の風車や草を食み歩く牛たちが織り成す雄大でのどかな雰囲気、夜空に広がる降ってくるような満天の星空も人々を惹き付けてやまない。そして何より、テントひと張り500円というリーズナブルな料金設定も大きな魅力のひとつである。そのため土日や連休となるとまるでひとつの村のようにテントが連なるのがこの場所である。
それだけに熾烈な場所取り合戦があるのもこのキャンプ場の特徴。
サイト内に車の乗り入れこそできないが高台に位置し、トイレや洗い場もすぐ近くにある第1グラウンド、車の横付けが可能な第2、第3グラウンドとあり、順にトイレや水場からは離れることになる。当然、1番人気は利便性の高い第1グラウンド。前日に宿泊をした人が撤収して帰り始める入れ替えの時間帯を狙い、タイミングよく入らなければ場所の確保は困難である。

キャンプ場の傍にある姫鶴荘で受付を済ませた3人がスペースを確保したのは、第2グラウンドだった。到着した時にはすでに多くのキャンパーたちが周りでテントの設営をしており、さらに空いている場所を求めて次々に車が入ってきていた。
早々に設営場所を決めて車を降りた3人は荷降ろしを済ませ、各々テントの設営に取り掛かる。
カメラのアングルを考慮し、1番奥に愛車のRAV4が入るように駐車し、その横にリーダーのテント、隣にディレクター、その隣にGOTOと並ぶように設営を始めた。
なんせ初めてのキャンプである。当然テントの設営も初めて。ここまでの道中とは違い、3人は黙々と自分のテント設営に集中する。思い思いの場所にグランドシートを敷き、それぞれのテントを出し始めた。
まず1番順調に設営が進んだのがディレクターだった。予算を1万円に設定し、その枠内でギアを揃えた彼が取り出したのは、フランスのスポーツメーカー「Decathlon(デカトロン)」製のソロ用のシンプルかつコンパクトなドームテントだった。
今思えば、リーダーやGOTOの性格を熟知した素晴らしいチョイスだと思う。何かと荷物が多くなりがちな初心者、しかも色々と不便を想定して荷物が膨らみがちな2人に対して、シンプルかつコンパクトで必要最低限のギアのチョイスは、車内の省スペースを叶えてくれる。彼がもし大きなサイズのテントをチョイスしたり、大量のギアを揃えていれば、後部座席は荷物でパンパン、座るスペースはなかったに違いない。彼は1時間程の道のりを車の屋根にしがみついてキャンプ場へ向かうことになっただろう。抜群のバランス感覚。彼のチョイスを褒め讃えたい。マーベラス。
手際よくサクサクと設営を済ませたディレクターは残るメンバーの設営をサポートし始めた。

この時点でリーダーが建てていたワンポールテントもほぼ形が見えていた。残すところフライシートのみという状態だったのだ。1人で建てることを考慮して彼女が選んだのは、設営が比較的楽なワンポールテントだった。テントだけでなく入口部分に日除けとしてタープ使いができる前室も付いた「Hill Stone」のテントはスグレモノだった。
フライシートを掛けようと必死に背伸びをするリーダー(オフィシャルなプロフィールでは身長:155cm)。ポールの先に背が届かない彼女が選んだ次の手は、テントの頂点目掛けてフライシートを放る投網スタイルだった。繰り返すこと数回。見事に引っかかったフライシートを引っ張ってインナーテントに被せた。前室部分にポールを立ててペグダウン。こうしてリーダーのテントも無事に設営が済み、おしゃれ番長のリーダーらしくテントのデコレーションに取り掛かる。

ここで光を放ち始めるのが問題児GOTOだった。2週間前には届いていたというテントを未開封のままキャンプ当日まで熟成、開封ですら現地で行なうというレビュー系YouTuberさながらのキャンピングスタイルを披露していたのだ。
もちろん、説明書も読んでいない。必要な物が全て揃っているか事前に確認もしていない。実にアグレッシブ。初キャンプに挑むデビューキャンパーとしては、なんともチャレンジングなスタイルだ。
ちなみに、高所も怖ければ閉所も苦手なGOTOが選んだ「モダン・デコ」のテントは5~6人用の広々としたファミリーサイズ。アンブレラの容量でカチッと開くワンタッチ式のヘキサテントである。通気性のいいテントが良いと小耳に挟んだ彼女は、全ての面に通気用のベンチレーションがあるこのテントをチョイスした。物の名前を間違えて覚えがちな彼女はこのモダン・デコのテントを「モンタデコだ」と我々に紹介していたため、闇チームではこのテントをモンタと呼んでいる。
直前までどちらを買うか悩んでいたもうひとつの候補が、ポイッと投げるとパッと開く簡易テントだったと言う。それは、浜辺で子供が着替える時に使うヤツだ。夜になると冷える高原のカルストでそれで泊まろうものなら夏とはいえ朝には氷漬けだ。まして強風になりやすい高地では、そのような簡易テントは強風にさらされて紙ゴミのごとく転げ回る地獄車と化すに違いない。GOTOよ、モンタにして本当に良かった。

さて、初めましてのモンタの設営に気合い十分に取り掛かるGOTO。取説書を一瞥して、「分からなければ書いてある電話番号に問い合わせの電話をするまでだ」と呟く。コールセンターの人よ、どうか速やかに逃げて欲しい。
我々にそう思わせる一言を発したと思うや、しぼんだままのモンタの腹に潜り込み、中から傘の容量で押し開こうと格闘するGOTO。萎んだふなっしーの様にグネグネと動くモンタの珍妙な姿にリーダーとディレクターの目は釘付けになっていた。
程なくカチッという音とともに心持ち広めに開いたモンタ。まだ少し元気なさげなモンタは大きな目のように見えるベンチレーションでこちらをジッと見つめてくる。まるで、我々に助けを求めているかのように見えるモンタの腹から元気よく飛び出して来たGOTOはロープを手当り次第にペグダウンし始めた。そして、「鉄の棒が余っとるんよねぇ」と不思議そうに話す。
その言葉に他の2人は崩れ落ちた。ロープやペグならまだしも、鉄の棒が余るなんてことは有り得ない。その棒はおそらくポール。絶対に何か大切な部分に支えが入ってないのだ。可笑しすぎる。

笑い転げる2人を尻目にGOTOは「なんかなぁ・・・写真と違うなぁ」と言いながらまだペグダウンしていないロープを使ってベンチレーションを上へ上へと引いて強引にかっ開いていく。
テントを建てる時のことを想像してみて欲しい。通常ロープは地面にペグダウンするものだ。しかし、彼女は何故か上へ上へと縛り上げてアレンジを仕掛けて行く。全国53万人の美容師さん達に叱られてしまいそうだが、これが美容師の性(さが)だろうか。こうして、モンタに鼻フックをかましたGOTOは、「出来た!」と言わんばかりに意気揚々とテーブルや椅子をセッティングしたりリーダーやディレクターのテントの出来具合を見学をしようとお散歩を始めた。
いや、絶対におかしい。GOTOのモンタは完成などしていないはず。それを証拠に鉄の棒が余っているのだ。モンタは虚ろな瞳で力なく佇み、若干張りが足りずに風になびいているではないか。張りの足りない部分に引っ掛けるような場所を見つけたディレクターが、余っているという鉄の棒を手に取り差し込んだ。するとどうだ、まるで目を覚ましたようにモンタに張りが出てきた。強引にロープで吊り上げずとも目がパッチリと開くではないか。しゃんと立つモンタの姿にGOTOは「あー!こんな感じやったー!」と言い、先程施したモンタの鼻フックを解いてロープを地面へとペグダウンしたのだった。
ちなみにリーダーもディレクターも、勿論GOTOもモンタの説明書など読んでいない。あぁ、モンタ。貴方はホントにモンタなの?
良い子のみんなは着荷後なるべく早く開封して備品が足りているかのチェックや、ちゃんと説明書を読み込んだり試し張りをするなどして欲しい。ちなみに、GOTOのモンタは天井部分に装着する雨避けを固定するためのフックが1つ入っていなかったという。こういう事が割とあるのだ。事前の確認は必ず必要である。

こうして、無事にテントが設営できたところで、各々が揃えて来たギアを見せ合い始めた3人。ランタンやロッキングチェア、テーブルやキャリーカートなど大物から小さなものまで紹介しながら、互いのギアに刺激を受け合い物欲を爆発させるリーダーとGOTO。それをしり目に「これは誰かが用意してるだろう」と予測出来るものは買わずに借りるスタイルのディレクター。3人のその姿は荷物を増やし続けるリーダーとGOTO、荷物を減らし続けた結果、今となっては通勤に使うリュック1つで颯爽と後部座席に乗り込み、大量の荷物と一体化するディレクターという現在の姿そのままで微笑ましい。

一通りギアを見せあった3人、簡単に済ませられるカップ麺で昼食をとり始めた。
外で食べると何でも美味しい。とりわけ、カップ麺は最高に美味しく感じるのが不思議だ。
ここで辛いものが好きなリーダーがチョイスした辛ラーメンで、ひとつ教訓を学ぶ事になる。
キャンプをした事がある人はお分かりだろうが、キャンプ場では汁まで飲むのがカップ麺の基本である。汁を残してその辺に捨てたり、小さいゴミが詰まりやすい流し場に残した汁を捨てるのは頂けない。
普段カップ麺の汁を飲まない人は、辛いものが好きだからと言って辛いカップ麺を選ぶと汁を飲む時に大変な目にあうことになりがちだ。そういったところに気をつけてカップ麺を選ぶのがオススメである。
カップ麺の残り汁の処理については飲み干す他にも、一緒に小さな塩むすびを持って行っておいて残り汁に入れておじやのように頂くという方法もある。これなら楽に完食できるので参考にして欲しい。また最近では残り汁を固めて生ゴミとして処分するための粉末も日清食品から発売されて注目を集めているという。

昼食の後は、それぞれの選んだテント見ながらのんびりと過ごす3人。ここまでの様子はYouTubeチャンネルにアップしている動画でもお楽しみ頂ける。

初めのテント設営に奮闘する姿は何度観ても楽しく、キャンプを始めようにも1歩踏み出せない人にとっては「私も出来るかもしれない」と背中を押してくれるものに仕上がっている。スルメのごとく噛むほどに味わい深い動画である。1度見たことがある人も繰り返し見て欲しい。

さて、山の夕暮れは平地よりもずっと早く訪れる。日のあるうちに夕食を作ることは、明かりの少ないキャンプでは大切な事だ。それにより手元が見えにくく手を切るなどの怪我も防げるし、火の通り具合もしっかりと確認できる。何より、早く調理を済ませて移ろいゆく景色を眺めながら食事を楽しみ、のんびりと語らうことができる。それがキャンプの醍醐味だろう。
日差しが陰り気温も落ち着いてき始め、周辺の人々が夕げの支度を始めていた頃、3人も調理に使う焚き火の準備や材料の下ごしらえを始めていた。

斧の代わりに薪にナイフを当てがい、もう片方の手に持った薪を打ち付ける力で薪を割るバトニングや、焚き付け用にフェザースティックの作り方など、動画で勉強してきたキャンプの知識を披露するリーダー。
説明書を読まないのと同様に事前に予習をして来ることがあまりないGOTOは、生徒のようにそれを習う。まっさらなGOTOにやり方を伝授した後、実践とばかりにバトンタッチするリーダー。

すると、薪よ飛んでいけと言わんばかりに力いっぱい振り上げた薪を高い位置からナイフ目掛けて一気に叩きつけるGOTO。一点を見つめ、時折「ファイヤー・・・」と謎の言葉を呟きながら早送りの如くその動作を繰り返す姿は猟奇的ではあるものの、あっという間にいいサイズの薪が揃い着火も済んだ。
こうして、燃え上がる薪を見つめては時折「ファイヤー!」と発するGOTOと共に初めてのアウトドアクッキングが始まった。

キャンプの楽しみのひとつでもあり、経験が出るのがクッキングだと私は思う。普段とは違う外の環境で作る料理は家でしているそれよりずっと楽しい。そしてグループキャンプでは、それぞれのメンバーが作った料理を皆でシェアするため、食卓がちょっとしたビュッフェの様にもなる。他のメンバーが作る様子を見ることでアウトドアクッキングの勉強になる、自分以外の人が作った料理を食べて「次はこんなのを作ろう」と向上心を刺激されるなどいいことずくめだ。

そしてこの調理の場は、キャンプギアの披露の場になることも多い。人が使っているギアは眩しい程に光輝いて見える、言わば魔の時間。販売士と同じ作業をしながら通販番組や実演販売を見ているのと同義である。こうして、自分たち以外のキャンパーに囲まれ、展示場と化しているキャンプ場でただでさえ燃え上がっている物欲に更なる燃料が投下される。ある程度キャンプに慣れてもこうなのだから、初キャンプに挑むこの時のメンバーにとっては殊更にそうだったはず。
この後リーダーもGOTOも調理系のギアを中心に物を増やしたと思われる。グループキャンプは底のない沼の入口なのだ。
増えるのはギアだけではない。グループキャンプあるあるだが、作る料理の量も冷静にコントロールしなければ、とんでもない量の料理が出来上がる。

この時、リーダーはキャンプを始めるきっかけとなった大きなダッチオーブンから溢れるほどのビーフシチューを作り、3人でフードファイトのようにそれを食べることになる。
それでも、沈みゆく夕日を眺めながら頂く夕げは格別に美味く、食も進むもの。乾杯をして、互いを労いながら今日起きたハプニングを思い返して笑い合う。失敗してもそれが酒の肴になる。上手くいった事を褒め合い、失敗した事は笑いとばす。すごく素敵で豊かな時間である。この時間を過ごすためにキャンプをすると言ってもいい。
そんな夜を満喫して各々のテントに入り眠りにつく。

が、ハプニングは時間を選ばず忍び寄るもの。皆が眠りに就いた後、リーダーはパッチリと目を覚ます。
寒すぎて眠れないのだ。標高1400mの高地にある四国カルストの夜は寒い。8月とはいえ、夜ともなると気温が10度前後まで下がることもあるため、夏でも晩秋くらいの防寒は準備しておいた方がいい。この日は曇っていたから気温はいつもより低かったのだ。この時リーダーの防寒装備は毛布のみ。あまりの寒さにテント泊を諦め、愛車に逃げ込むも寒さはそう変わらなかったらしい。

結局ほぼ一睡もしないままリーダーは朝を迎え、ミノムシのごとく毛布に包まり、登る朝日を眺めたのだった。
キャンプにおいて防寒をはじめとした寝床の快適性を高めておくことは、ライフセービングの観点から見ても大切である。また、そういった快適な環境を作るためにも体力のある設営直後に寝床の準備を整えておくこともオススメだ。

日が昇り、暖かくなって活動がしやすくなると一睡もしてないリーダーと早起きなGOTOは夜のハプニングを報告しつつ、朝食を用意した。
朝の澄んだ空気の中食べる朝食は最高だ。その後ゆっくりと撤収をして帰路に着く。

途中牧草地へ向かい悠然と歩く牛の群れに巻き込まれる牛歩ハプニングもあったが、このキャンプ地が気に入った3人は再訪を心に決めて帰宅した。
それが叶うのはちょうど1年後の1周年記念闇キャンプになるのだが、そのお話はまた後日。それぞれがギアを増やしまくり、キャンプスキルをアップさせ、増えた闇メンバーと共にこの地に降り立つまでの軌跡を動画で、そしてこのマガジンでお楽しみ頂きたい。夕食の準備から帰路へつくまでの動画はこちらでご覧あれ。

こうして、楽しかったファーストキャンプを終えた3人。キャンプの魅力にすっかりハマったリーダーと闇チームは次のキャンプ地を探し始めたのだった。
Sea You Next CAMP!
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