どんぶらこと流れていったのは、父とその浮気相手だった
この その2とでも思っていただければ!
これを書いたあと、エッセイ書けと言うてくれてた子に「まだ知らんことあったんだが?」と言われました。そうだっけ…。
そんなわけで幼少期の話をしてみようかと。
どれにしようかな〜と思ったけど、七夕ですし。
天の川よろしく流れるプールを流れていった父親の話でもしようかなと…。
全然七夕関係ないな、まあいいか。
それはたぶん、私が一年生か二年生か…小学校低学年くらいのことかと思う。
4つ下の(両方血の繋がった)弟がいたし、離婚前だとたぶんこんくらい。
当時父親が浮気してたのは家族全員知っていた。
その時点でなんでやねん感はあるが、なんか知っていた。
カラオケで、父と母が「別れても好きな人」を「別れたら他人になろう」と替え歌して歌ってたし、キテレツ大百科の「はじめてのちゅー」を我々子どもたちは浮気相手の名前に変えて歌っていた。
はじめてのちゅー ゆっことちゅー!
そう、浮気相手は同じ会社の「ゆっこ」さん。
いやもうこの時点で何書いてんだこれ感すごい。どんな家庭だったんだこれ。まあいいか。
そんなある日。
休みのある日。
父親が早朝からバタバタしていた、らしい。
私達は寝ていた。
そして行き先も告げずに出ていった。
が、行き先をつげるかのようにチラシだかチケットだかを落としていったらしい。
馬鹿である。
寝ていたふりをしていた母は、父親が出ていったあとにそれを見つけ、行き先を確信した。
屋内プールだった。
プールズって覚えてる方いるだろうか。
大阪の弁天町に昔あった大きな大きな室内プールの遊園地みたいなところだ。
朝からバタバタしていたのは水着を探していたんだね。
そしてそれがないのも確信の一つになったんだね。馬鹿である。
どうやら車で行ったらしく、うちの車はない。
そして母は行動を起こした。
我々子どもたちは叩き起こされ、笑顔で言われた。
「プールいくでー!」
行くな。
親になった今なら心底思う。なんでや。いくな。
そんなこと、当時の我々が考えるわけもなく、やったー!と喜んで準備をする。父親が見当たらんがまあ、そんなもんだった。
プールズ、別に電車で行けないわけではないのだが、母はここでひとつ手に出る。
近所に住む仲良しの友達に車を出してもらうことにしたのだ。
そこの家族は母子家庭で、私のひとつ下の女の子と弟の一つ上の男の子がいたので、感覚としては4人兄弟のような幼なじみ一家だ。
ここに関してもいろいろ思い出はあるがそれはまた今度。
なぜか全く分からないけど、仲良し家族とみんなでプールズ!
いえーい!!
だが、行きの車の中で言われた。
「わりとすぐ帰ると思うからな」
なんでやろう。
疑問はあったが、ここでゴネると殴られるだけなので、素直に従う。はーい。
ついた駐車場で、なぜか車を停める前に駐車場内をぐるぐるする母友人。
「あった」
「うん」
……? うちの車に似ているなあ。と、思った。
呑気なガキだった。うちの車だそれは。
それを見つけ、確信を深くした母と母友人は車を停めた。
うちの車の場所を覚えて。
そうして我々一行はプールズへと入っていった。
プールズだー!!
最初三十分ほどは完全に遊んだ。楽しんだ。
だってプールだ。キッズが楽しくないわけがない。
母親の顔が完全に死んでたことなんて気にしなかった。だってプールだ。
さて。
弁天町のプールズは屋内型のでっっかいプールで、目玉が空中散歩出来るかのような流れるプールだ。
その上を渡れるように橋も架かっている。
さて、しばらく遊んだあと「いくで」と、母親に言われた。どこへ??とついていくと、流れるプールを見下ろせる橋の上だった。
しばらくそこに、いた。
つまらん。せめて流れるプールに行きたい。なんでここにおるんや。
まあ、文句は言えない。
言ったら殴られるだけなので。(そんな母親だった)
そこで、待った。わりと待った。
そして、母が言った。
「おった」
おった。
いたのだった。馬鹿が。
プールズの目玉、流れるプール。
そこをどんぶらこと桃のごとく流れてきたのは、父親とその横でピンクのマット浮き輪に乗ってる知らん女の人だった。
あれ?
パパ今日ここにおったんや。
それで来たのかな。
まだ呑気なガキだった。
母親が言った。
「あんたら、パパって呼び」
全然状況は読めなかったが、まあ、そこにいるパパを呼べばいいだけだった。
私と、弟と。
母と。
母友人と。
その子ども二人。
計6人が、橋の上から元気に手を振った。
叫んだ。
「パパー!!!!!」
パパじゃねえんよ。
今考えると地獄絵図でしかない。
分かってなかったけど。
狼狽える父親(と、しらん女の人)。
私はひたすらなんで??で、あった。呑気というか馬鹿であった。いやどうかなあ。小学校低学年そんなんわからんくない? 許されたい。
そしてくだされる母の命令。
「行け」
はーい!
行くな。行けじゃねえんよ。
親になった今の私が当時の私を止めたがっているが、そんなん無理であった。
行った。弟と二人。
「パパー!」
「なにしてんのー!」
無邪気だった。
後ろから飛びついておんぶしてもらおうとした。
「知らん!!!」
振り払われ、水の中にぶん投げられた。弟とふたりとも。
ひどい話だ。
ゆっこは…どんな…気持ちだったんやろうね…。
振り払われ、父とゆっこは流れていった。
悲しい。
母に報告に行った。
「知らん言われた〜」
告げ口だ。いやまあ、混乱するだろうよこの状況。
だからって投げられた方も困りますけどね。
母はたぶん、笑ってた。
笑ってなかったと思うけど、笑ってた。
「帰るで」
もう? なんやったん??
パパは置いていくん??
理由がわからなかったがグズれば(以下略)。
そそくさと着替え終わった我々は、駐車場へ向かった。
でも、あれ? 母友人の車を停めた場所にいかない。母友人とそこでいったん分かれた。あれ?
行きに見つけたうちの車によく似た車の場所だった。ちがう。これ、うちの車だった。
スペアキーで鍵を開けた母は、我々子供を車に乗せて、そのまま、家に帰った。
……。おそらく、ゆっこと父親が、乗ってきた車を、奪還して帰った。
まあ、駅近の娯楽施設だしなんとでもなったとは思うけど、おもうけども。
当時の父親とゆっこの混乱と困惑とパニックぶりは考えるとちょっと面白い。
母は最初からこれを想定していたらしい。母友人に車を出させたのも、そういうことらしい。
なるほどな〜。と少し大きくなってから納得した。
そんなわけで、そこから三日ほど、父親が帰ってこなかった。
その当時どんな修羅場が繰り広げられたのか、私には分からないけれど。
高校生くらいになったとき、そのプールに遊びに行ったらとても懐かしかったな…という、そんな記憶。
懐かしいって話じゃねーんよ。
浮気現場とかに、子ども連れていったらあかんよ。たぶん。ふつうは。
そんな、夏とプールの思い出話。
今回はここまで!
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