【1】note紙上実践セミナー/動画付:消滅可能性自治体からの脱却講座:民間を超える市役所の実現
1.行政は失敗している
本講座は、「消滅可能性自治体」に関するリモートの講演やリアルセミナー、研修で使用している内容と動画を短縮して紹介するものです。以下の5回で紹介します。
(1回)民間を超える行政経営の実現(市民減に挑む市役所の創造)
(2回)市長は部課長と職員を改革する
(3回)市長の自己改革が成功の鍵
(4回)部課長の経営力を高める
(5回)職員の政策力を高める
♦「無力の地方経営」でさらに悪化する課題
まさに「無力の地方経営」です(下図参照)。人口減、女性離郷、雇用喪失……、すべて予測されものです。例えば、人口減は、統計局が2005年12月に、「1年前の推計人口に比べ2万人の減少、我が国の人口は減少局面に入りつつあると見られる」と発表してから言われ続けてきた課題です。約20年経っても解消されていません。いや残念なことに悪化しています。
例えば2005年人口は1億2776万人、2023年の人口は1億2435万人で341万人の減少です。この年、「日本人」の人口が1973年の調査以降初めて全都道府県で前年より減少しました。日本の人口は2050年代には1億人を割ることになります。人口減を外国人でカバーする以外は解決できていません。「無力の地方経営」です。首長と職員はこの現実を直視し、改革を先送りをしてはなりません。本講座を参考にした改革が必要です。
♦何も解決できず「消滅する地方自治体」
地方自治体自体に大きな脅威が予測されています。2014年、日本創成会議が「消滅可能性都市896」のリストを発表、10年後の2024年に消滅可能性自治体を発表します(人口戦略会議)。人口減の課題が解決できなければ、2050年から744の自治体が消滅する、そこで必要なのは、人口の「社会減対策」と「自然減対策」であるとする内容です。
♦税金を浪費続ける中央政府(内閣)
これらの予測も加味して取り組まれたのが、2014年から取り組んだ地方創生です。政府は、「まち・ひと・しごと創生法」を根拠として、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるよう、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、毎年相当な予算を投入して取り組みました。
しかしその取組も人口減に関する課題を解決するには至っていません。政府は2024年6月、「地方創生」の10年間の成果や課題を検証した報告書を発表します。
地方への移住者増加など一定の成果はあったとしつつ、「人口減少や東京圏への一極集中の大きな流れを変えるに至らず、厳しい状況にある」と総括します。
少子化対策や産業創出、自治体へのきめ細かな支援などに取り組む方針が明記してありますが、十分な成果が出なかった原因の明記はありません。自組織への批判になることから原因を記載できないのかもしれません。変化の時代ではまったく意義のない「無謬(むびゅう)神話(間違えない)」の存在です。対策が打たれなくなります。
地方創生の失敗→顧客である住民を消失→744自治体の消滅と、失敗の連鎖が続きます(下図参照)。この先は「失われた40年」が待ち構えています。
2.成果不足の真因は明らかである
♦現場からすると真因は「経営力とマーケティング力」の不足
地方創生の現場で支援してきた立場からすると、その真因は極めて常識的なことです。地方創生関連の予算や支援施策を活用して、地域に成果をもたら各自治体経営力と、政策でその成果を具体化するマーケティング力の不足と分析できます。
良質の食材があっても料理人の力量(経営+マーケティング)が不足していれば、顧客にとっての美味しい料理品の提案にはなりません。同様に自治体の経営力とマーケティング力が飛躍的に向上しない限り、予算を準備しても「地方創生の総括」にように、成果が期待できない取組になります。国民が支払った税金の浪費です。
♦数は少ないが成功例がある
地方自治体は、経営力とマーケティング力を高めなければなりません。課題の難度からすると、それは民間と同等か、それを上回る内容が必要です。大きな課題ですが、不可能なことではありません。
人口戦略会議の報告では、100年後も若年女性が5割近く残り持続可能性が高い「自立持続可能性自治体」が65あるとします。全体の4%弱で数は少ないものの、良好な実例があるということは、やり方によって他でも可能であることを意味します。
3.自治体の強みと成功例の活用
♦民間として比較して「勝る3つの強み」
さらに自治体には改革に有効な「3つの強み」があります。一つめは、住民から直接に選挙で選ばれる首長のリーダーシップです。住民から選ばれた正統性の下で、㋐住民起点の明確な改革方針、㋑ミドルアップの全員参画、㋒成功までのよく練られた改革計画で、経営とマーケティング改革を進めることが可能です。これには首長の真摯なマネジメント(経営)の習得も必要になります。これが不足すると「首長の暴走」になります。
二つめは、自治体職員の資質の高さです。行政経営改革で議論をしたり、改革案を作成していると、職員の潜在能力の高さには驚くことがあります。並行してコンサルティングをしている民間企業の社員と比較すると企画力と創造力ではやや劣るものの、組織活動の基盤になる規律性、責任性、協調性といった点については、自治体職員の方がバランスがとれています。総体的には地域一番の人材を多数抱えていることは間違いがありません。よって民間と同等がそれを上回る住民起点の行政構築の可能性があります。
三つめは、協働活動における強みです。「住み続けられる」まちを実現するには、住民や地域の知恵と行政組織の知識と技術が、相互活用できる協働の関係作りが必要です。協働による共創です。
この点、自治体組織には原則的には隠すものがないことから、協働が進展する可能性があります。民間よりも情報公開が徹底でき、政策立案プロセスに住民が参画することも容易になります。各所で、住民ニーズが反映した行政活動が実現します。
♦強みと成功例を活用した「民間を超える行政経営」の実現
「本講座」では、この3つの強みの活用と、住民起点の経営改革で先行した成功例も活用し、「消滅可能性自治体」からの脱却と「自立持続可能性自治体」への挑戦を可能にする「民間を超える行政経営」への取組を5回のシリーズで明らかにします(下図参照)。
今回はその1回目です。以下の動画で上記の内容と「民間を超える行政経営の実現」の概要を紹介します。経営改革の参考にして下さい。ここから(2)~(5)と続きます。
動画概要:消滅可能性自治体からの脱却(1)
(1)民間を超える行政経営の実現(市民減に挑む市役所の創造)
-既に起こった未来:現状の継続では危機は確実に到来します-
・2050年までに744の自治体が消滅する
・人口は2050年9500万人に
・人口は2100年6300万人に
【解説】
上記は既に起こった未来です。これまでの自己改革を避ける現状の継続では確実に発生します。発生の時期は早まる可能性もあります。役所が廃止され、あなたの故郷である地域は荒廃します。
人口が激減し税収不足から現在の生活環境は維持できなくなります。街は道路の破損が目立ち、ゴミは散乱し、公共施設の封鎖が常態になります。生活ができる環境ではなくなり、さらに人口減が減少します。
-実現すべきこと-
・必要なのは、住民増に向けて効果的な社会減対策と自然減対策を創造できる経営力とマーケティング力のある市役所です。
・それは、「民間を超える市役所経営」の実現です、下記の目標を設定し、必要な経営の仕組みを構築し展開します。
目標:2030年までの完成・展開し、2050年からの人口減少を防ぎます。
-必要な民間を超える仕組みの構築-
1.全庁使命と組織ビジョンの仕組み構築
2.社会・市民ニーズの理解と対応の仕組み構築
3.戦略的年度経営計画の策定と展開の仕組み構築
4.価値創造の政策形成の仕組み構築
5.職員と組織の能力開発の仕組み構築
【解説】
必要なことは即座に、住民増に向けて効果的な社会減対策と自然減対策を創造できる経営力とマーケティング力のある市役所の実現です。それは、民間を超える市役所経営の実現でもあります。その概要は上記の1~5の経営の仕組みの構築です。その先に地域の未来があります。https://youtu.be/U0g82xS3lus
※次回の「(2)市長は部課長と職員を改革する」に続きます。ご期待下さい。
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