1/fって何すか。2017.11月号

<#44 東京の秋>

冬が近づいていますね。今年は例年よりも三寒四温が激しい気がしますが、そんな気がするのもやはり例年通りなのでしょうか。私は夏になると暑いから早く秋にならないかなあと思い、冬になると寒いから早く春にならないかなあと思ってしまう性格なので、どの季節もあっという間に終えてしまうのですが、実のところ、春と秋が苦手です。もっと言えば、秋はセンチメンタルな空気に耐えかねるところがあり最も苦手です。どうも気が滅入ってしまう。
そんなときはだいたい日記を書き始めます。今日何があったか、何をすることができたかを客観的に見ることで、どうにか日々に明かりを灯そうとします。一種の認知行動療法みたいなものです。しかしこの日記、書き始めるのがだいたい9月の終わりころで、師走の半ばにはぱったりと書かなくなってしまいます。もちろん一年続けて書くつもりで毎年始めているのですが、結局は秋限定日記となって、それも今年で3度目に入りました。引き出しの奥にしまった日記をとりだして初めて、「なんだ、この日記、秋しか書いてないじゃん」ということに気づくのです。
この日記には失敗の記録も多く、ライブや制作の失敗や、その日あった嫌なことがつらつらと書かれているのですが、それでもどうにか次の日を当たり前のように迎えて、少し滑稽にさえ思います。そして、冬になって何も告げずに日記は終わり次の秋まで開かれることはありません。この日記が自らに教える唯一のことは、このモヤモヤとした気持ちは冬の訪れとともに必ず、もしくは高い確率で消えていくということです。それを実体験として提示してくれていることが、一番の灯火となってくれています。過去の足跡たちが、現在や未来に向けて教えてくれることは様々にあります。無駄なことはないし、無駄にしてはいけないのかもしれません。
私が生まれ育った九州に、東京のような秋はありませんでした。夏が終わると突然に冬が始まりました。秋のセンチメンタルなんてものはほとんど経験したことがなかった。まだまだ「東京には慣れた」とは言えそうにありません。

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