1/fって何すか。2014.3月号

<#2 祖母の言葉>

「頭の中のものは火事がおきても泥棒が入っても盗られないから勉強しなさい」と母方の祖母によく言われていました。「健忘(物忘れ)」を症状とする数種の疾柄を除けば、それは正しい考え方です。

いや、数種の疾病に罹ったとしても、この考え方は当てはまるのかもしれません。

例えば「言葉づかい」というものにそれを感じることはありませんか?自分は割と人に影響を受けやすい人間なので、これは一通りではないとは思いますが、その人がつかう言葉の後ろには、その人が好きだった人のイントネーションや、昔見たテレビ番組のフレーズがきっと隠れているはずです。「ねえそれどこの方言?」と聞かれても「分からない」すなわち「憶えていない」、そんな過去の記憶たちが言葉の裏に見え隠れしていると僕は思います。(プルースト効果はこれとはまた少し違う現象ですが、根本は似てるんじゃないかな。)

もう失くしてしまったと思い込んでいる記憶たちは、ただ何処にしまったかが分からなくなっただけで、倉庫の机の引き出しの中かもしれなければ、実はポケットの中で、さっきからずっと指先でいじっているソレなのかもしれません。

明日の天気を予想するのに、過去の天気図とその日の天気の相関を使うのと同じように、僕の次の一歩は僕の中にいる過去の僕が指示しているのかもしれません。そしてその過去の僕というのは、僕が今までで好きになった、嫌いになった人や物で構成されているのでしょう。

両親、友達、恋人、大人、子供、いじめっこ、いじめられっこ。
僕たちがこれから10年20年愛されるバンドになればそれに越したことはありませんが、おそらく今日僕らの事を好きだと言ってくれる貴方が何年後かに、テラスだっけ?ステラだっけ?なんて言ってくれても構いません。でも貴方のポケットの中に僕たちの欠片がいてくれたらなと思います。それが出来たなら、ミュージシャンというのは素晴らしい職業です。

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