1/fって何すか。.2016.9月号

<#30 リオ五輪>

オリンピックでは96年ぶりにテニスでメダルを獲得して、国民的アイドルグループが28年の歴史に幕をおろす。
これを書いている今日は、終戦からは71年が経った8月15日で、個人的には30年目の夏を迎えている。

ある程度の年数を超えてくると、正直ピンとこないのは仕方ないことだが、試合を終えたばかりのオリンピック選手に「四年後は金メダルにむけて…」なんてインタビューする取材陣はどういうつもりなんだろうかと思うし、それに対して、「目標は四年後なんで」と簡単に言ってしまえる選手も、たくましいなあと思う。「一年間」だって長いのにね。
でも、コツコツやっていればきっとあっという間なのだろう。これはオリンピックから学ぶべき教訓の一つである。

初めて行く場所への道のりはとても遠いのに、帰り道は近い。1人で通う通学路は億劫なのに、好きな子と帰るとすぐに家に着いてしまう。アインシュタインは天才で、「時間」はいつも相対的でしかない。しかし、四年間は長い。私なら「おつかれさまでした、ちょっと休んでまた気が向いたら…」なんて言ってしまう。

オリンピックでは、異国の選手同士が手を取り合う瞬間に感激してしまった。
男子体操のウルグアイの選手が日本選手を讃えるシーン、北朝鮮と韓国の選手同士が写真をとるシーン。映画でも、音楽でも感じえなかった心を鷲掴みにされるようなあの感激というのは、それがノンフィクションだからだろう。BGMはもちろん「国境はなかった(テスラは泣かない。)」。人間はまだまだ捨てたもんじゃない。美しい心は確実にある。そう教えてくれた。

「争う」ことと、「競う」ことは根本的に違う。お互いを否定し合う“争い”からは何も生まれない。同じ方向を向いて“競う”から記録がでる。
ある小説家は「本当の革命は“否定”ではなく“新しいアイデアの提示”だ」と言っていた。地球の裏側でおこる連日連夜の革命に私たちは心をうたれるのだ。

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