1/fって何すか。2015.12月号

<#22 傘っていう字には四人も人が入るんだぜ>

雨は突然に降ってきます。
傘を持ち合わせていようがいまいが。
雨は時に恵みの雨と呼ばれ、しばしば自然の脅威となります。
お天気ニュースキャスターはそれを「悪い天気」とは言いません。「天気が崩れる」と言います。

私は雨が嫌いです。
そして厄介なことに、傘を持ち歩くのも苦手です。家を出るときに「大丈夫だろう」と思って手ブラで出かけても、だいたいは大丈夫でないのです。

雨に打たれ風邪をひいたことがあります。もしかすると、雨のせいにしているだけで、そういうタイミングだったのかもしれませんが。

雨に打たれ帰ってきた家族に、家の人が「風邪をひくわよ、はやくお風呂にはいってしまいなさい。」という光景があります。主に映画や、ドラマのなかで。私はアレがすごく好きです。でも、実際にそんなことを言われたことは、どうだろう、あるかなあ。

 誰だって、雨に打たれたくない。

「ショーシャンクは空に」のジャケットになっているシーンみたいに、壮絶な脱獄にでも成功しなければ。

 私は考えてみました、突然の雨に打たれないためにできる事を。それは例えば、①常に傘を持ち歩くか、②雨の降らない世界で暮らす(砂漠か、部屋の中か、雲の上か)ぐらいでしょうか。

 こんな事を言った人がいました。僕の友達で、すごく変わった人でした。大学の夏休みに1人で無人島でカニを食べて生活していたような、そんな人。

雨が降ると彼は一度だけ天を見上げ、また前を向いて、変なステップを踏みながら、ボクシングでいうデンプシーロールのような動きをします。“シュッ、シュッ”と言いながら、人の目も気にせず。「何をしてるんだ?」と私が訊くと彼は言いました。

「目に見えない速さで、雨をよけているんだ、シュッ、シュッ」と。

私が呆れた顔でいると、続けてこう言うのです。
「まあ、俺くらいの強靭な肉体をもつと、こういことができるんだ。シュッ、シュッ」

これを暫定的に③番目の方法にしましょう。

彼は次の日に風邪をひきましたが、いつものように、学校に現れました。

雨は突然に降ってくるのです。
天気予報は当てになりません。

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