🆕「CHOOSE A」あとがき “ 6 冒険 ”

希望を持て」と人はいう。“希望”が叶わないとき、文字通りそこには“絶望”が待っているわけ だが、それは“希望”がただの“期待”に変わってしまっていたせいなのかもしれない。片方のポケッ トに“希望”を持つなら、それと同時に、もう片方には“勇気”を持つことをお勧めしたい。それは度々 訪れる絶望に向き合う為の勇気。それは自らの過ちや後悔や苦しみに向き合う勇気。それは希望 が希望のままの姿で燃え続けることを可能にする勇気。
少年の日々の歩みを冒険に例えるにはドラマチックさに欠けているかもしれない。しかし、そ こに数えきれない不安や葛藤と、それを振り払うほどの勇気や希望がある以上、やはり冒険と呼 んで差し支えないだろう。少年は何度も立ち止まり、その度に後ろを振り返った。無数の足跡が 蛇行して並んだ景色は少年の背中をもう一度押すこともあったし、座り込ませてしまうことも あった。冒険は続いた。少年の両方のポケットは今も膨らんだままである。冒険は続いた。胸を 高鳴らせ、口元に微笑みを残したまま、道なき道をまた歩き続けるのだった。