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スタイルオブ東京の変遷NO11

〜設計事務所の話〜

中古を買ってリフォームのワンストップサービスを始めたときは、戸建ての建物の価値はほぼゼロだったのに、リノベすれば注文住宅を建てるよりも安くできることが一般的になると、逆に中古の価値が上がっていく。
そうなると20年くらい前の安普請な建売の性能を上げ、デザインをプラスすると新築建てた方がいいよね・・となる。
20年くらい前の建売は断熱性能も悪いものがほとんどだけど、今の新築建売はそこそこ性能がよい。
この先30年を考えると、頑張ってリフォームするより建売業者の新築を建てた方が安くてよい。
そういうとリフォーム会社には嫌われる。しかし媚びてまで仕事が欲しいと思わない。しかし不思議と以前に売ったお客さんから買い換えたいとか、紹介できたとか、お客さんは来るものだ笑
そんな中、5年前にマンションを買ってリノベをしたYさんから相談の連絡が。Yさんは誰もが知っている上場会社の社長さん。相談したいから会社に来て!というのがいつものパターン。

奥様が日本舞踊の先生をしていて、スタジオを借りているのだけど、自宅兼スタジオの戸建てに買い換えようかなと。しかし定年間際で老後もあるからそんなに豪邸は必要なくて、テーマは隠居ってことで考えてくれない?と。
流石に大企業の社長さんをしているだけあって、いつも目的や指示が明確。しかも忙しいから全部丸投げ。そして決断が早い。
早速土地を検索、10件の土地をピックアップしてそれぞれのメリットデメリット、建物面積と予算をまとめてコメントしてYさんにメールする。
すぐに2件をYさんはピックアップして、その土地週末奥さんと見てくるよ〜!と。
不動産は買いたい時が買い時。条件がちゃんと絞り込みができれば、2〜3件しか合うものはない。それでなければ予算の問題なので、予算が合わなければ仕切り直すしかない。
きっといつか自分だけ良い物件が降ってくるという人は永遠に家を買うことできない。
買いたいときに出てきた物件を買う。シンプルな話が理解できる人は決断も早い。
Yさんも2つのうち、1つを選んで、これ検討するけど、希望の間取り入るのかな?とすぐに連絡がありました。
不動産は生物。そして同じ条件のものはない。だからのんびり検討している時間はない。
その時は年末、あと数日で今年も終わるという段階。
プランを入れてもらう人もいないので、仕方なく、すっかり鈍った腕で方眼紙に手書きでボリュームを書いた。汚い絵(笑)
写メを撮ってYさんにメールすると、いいんじゃない〜!買うよ!と。
年明けに土地を契約し、さてプランをどうするかな・・。
その土地は84m2、建蔽率50%、容積率100%つまり1階の面積は42m2、延べ床で84m2まで。
地下室をスタジオとして作るというプラン。
夫婦二人暮らしで、1階にキッチン・洗面・浴室とすべて水回りを持ってくるので余計は廊下などは作れない。ほぼ四角の普通の間取りにしかならない。
予算も限られているので、斬新なものというよりは、テーマが隠居なのでシンプルにひっそりと、しかし建売!というよりもすこし遊び心が欲しい。
そんなプランを考えてくれる人・・。そうだ設計コンペをしてみよう!でもそんなに大げさでないものないかなぁと探していたら、無料の設計コンペをするサイトを発見。
そこにとりあえず条件を登録してみた。そうしたら8名の設計事務所が参加表明をしてきた。
私は代理で受けていること、そしてお手間を取らせるのも申し訳ないし、限られた面積と予算なので、斬新なアイディアというよりもどんな工夫をしてくれるのかというコンセプトを提案して欲しいと連絡した。
そのアイディアがいい人を選んであとは打ち合わせをして決めればいいと思ったからだ。
2週間のうちに、7名は図面を送ってきた。中にはパースまで作って。どうみてもほとんどの人が予算を無視したプラン。なんでそうなるんだろう?
設計事務所の世界はいったいどうなっているんだ!
また得意の探求が始まってしまった・・。
参加してくれた8名に会ってみようと思い、連絡をした。その話を友達にしたら、絶対その設計事務所の事務所へ行った方がいいよと言われた。そこでお伺いしますというと、3名の人は近くに行く用事があるというのでウチの会社に来た。残りの5社は茅ヶ崎から東上線の鶴瀬。行ってわかった。どうみても食えてなさそう・・。友達が言いたかったのはこのことだ!
そしてなぜこのプランにしたのか?予算をどう考えているのか?を聞いて行った。
荻窪駅から10分とナビにあったのをよく見たらタクシーで10分。青梅街道沿いの5階建てのエレベーターなしの5階マンションの一室。もちろんオートロックもない。約束の13時に玄関ドア脇のブザーを鳴らすと、「はい」という返事。13時に来る人って他にいるの?となんか嫌な予感・・。
その設計士は40代、過去にはヨーロッパで活動もしていたという事例や話を聞いて、設計力はありそうだなと思った。
しかし今回のプランについての話になると、まるで生活者の要件を聞いているようには思えない。
今回の予算でこのプランができるのですか?と聞くと。
そこなんですけど・・。設計料は別ですよね?と。設計料はいくらですか?と聞くと建築費の15%。
いやぁ。そんなに斬新な建物を作るわけでもないのに、その金額はないよ!予算が合わないじゃない!とプチ切れる。
そうしたら、設計料込みの予算なのかわからなかったので、設計料込みのプランを作りましたって。
出したプランが20坪に面積が小さくなったプランだった・・。
言葉にならないとはまさにこのことだ!容積率いっぱい使ってもLDKのスペースが広くはないのに、面積を小さくしてきて、設計料はそのまま。プチじゃなくブチギレて帰りました。
東上線鶴瀬駅徒歩15分またまたエレベーターなしの古いマンションのワンルーム。
ちょうど引っ越しする時期だったらしく、地べたでいいですかと。床に座らされた。お茶もでてこない。静岡の実家に帰るという。

えっ静岡に帰るって、東京の建築できるの?って聞いたら。新幹線で管理に来るって。
だから・・。そんな斬新じゃないし!設計料は?と聞くと国交省で出している基準があるといいその算定だと・・という数字を出す。
お前の新幹線代を払うつもりはない!という金額。またプチ切れる。あのさー設計料って何すんのよ!というと、いろいろだという。考えたり、図面書いたり。って。CADは何使っているの?と聞くと無料のJWCAD、生産性を上げるのに今いろんなCADがあるじゃん。そういうの使って設計の生産性を上げて、プランに合わせて設計費を削減するとかするつもりはないのか!と言うと、いいCADは高くて買えないんだ!っていう。お前はビジネスで投資もしないつもりか!とまだブチギレて帰りました。
8人あったけど誰一人として共感できる人はいなかった。コンペなんてそんなものなのか・。
誰一人としてコストダウンしながら面白さがある提案をしてこない。斬新なデザイン、コストを無視、一体どうなっているんだ!
もう私には誰を選ぶこともできない、これはお客さんに選んでもらおうと思い、プランを持ってお客さんの家に行った。どの設計事務所も似たようなもんです。どのプランがお好きですか?と。
するとYさんご夫婦が「藤木プランで」と。そう私が年末に方眼紙に書いた汚い手書きのプラン・・。
だって一番無駄がないんだもんって。
そうだよ。42m2の中に水回りと階段を作るんだよ。廊下をなくした四角箱を作らないとLDKが大きく取れないんだよ!
だからそう8人の設計者にいったのに。そこから面白さを出せって!あんな斬新な絵を描きやがって・・。
結局私のプランをベースにその8人の中から一人の設計士に頼むことになりました。
8人中ただ一人私がブチ切れなかった人(笑)
大人しく真面目なOさんだった。
以前から飲み会などであう建築家とはよくぶつかっていた。建築家とはなんだろうと思って建築家の哲学書も読んだ。有名な建築家が出している本「もがく建築家」では、建築家はそもそも戦後ヨーロッパから入ってきたもので、戦前は大工が建築家だと言っていた。

そもそも家が足りない時代に設計だとか工務店ってできたのだから、今や家が余っている時代に建築家も工務店もいらないではないか。あるとすれば、建築家は芸術家のようなもので、一部のお金持ちが一緒に芸術を楽しむため、建築家はパトロンからお金をたくさんもらって作品を作るようなものとして選ばれた人がだけがなるもの。
それ以外の設計事務所は顧客が作りたいものを作る。その“作りたいもの”を可視化するのが設計することではないのでしょうか。
顧客の代理人として顧客の想いを可視化して具現化・実現化する。私が不動産エージェントに求めるもの。
設計事務所と話をしても、ファイナンスや不動産のことをあまり理解していない。顧客の住みたい暮らしを実現するためには、斬新なプランをすることではない。そこをわかってないことに無性に腹が立つ。だからついつい喧嘩をしてしまうのでした笑
私が不動産エージェントの教育をする理由はそこにもある。顧客の楽しい暮らしをサポートしたい人は誰でもいい。不動産屋でも建築屋でも設計事務所でも保険屋でもなんでもいい。
ただ不動産・建築・ファイナンスの知識や顧客の気持ちの寄り添える人間力が必要だとおもう。足りないところは学べばいい。
父の会社に入って、初めに宅建を取った。翌年二級建築士を取った。一次試験はなんとかなったけど、二次試験は図面。私は建築学部でもないし、設計もわからない。でも日建学院に入って毎日手を真っ黒にしてひたすら書いていたら受かった笑
二級建築士は取ったけど、設計はできない。そこで設計の学校に行こうとおもった。
御茶ノ水の小さな設計の夜間学校。私は元々お洒落な店舗設計をしたくて父の会社に入った。なのに父の会社は土建屋じゃん・・。毎日掃除と缶コーヒーを配るのと墨出しが仕事。

設計を学んで店舗デザインをするぞ!夢を持ってその学校に入った。
ある時少し早く行くと、先生が教室でコーヒーを飲んでいた。先生は30代くらいの現役の設計事務所を経営している。今思えば本業だけでは食えなかったんだろうな。
「先生!私店舗設デザイナーになりたいんです!」と話かけた。すると、「なれるわけないじゃん」と冷たく言い放った。27歳の夢いっぱいの私には残酷な言葉だった。
その時、私はいつかこんな私でも店舗デザイナーになれると言ってあげられる先生になりたいと思った。
その後私は店舗デザインをやった、それどころか、経営者になって、設計事務所に文句を言うまでになった。
誰でも学べばやりたい仕事はできるものだ。
不動産エージェントの教育にはそんな思いもあるのです。
もう少しつづくよ笑

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