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スタイルオブ東京の変遷NO9

〜職人養成(リノベーションカレッジ)を作る〜

I社は親会社の不動産部隊が買ってくる区分マンションをリフォームする会社。設計、積算がメインで、施工は全て下請け工務店、それでも自社施工を目指して施工部を作っていた。
下請け工務店の社長にI社の仕事ぶりを聞いてみたら。設計が悪いとか管理が悪いと言われる、施工部はその中でも最悪だと。
検証すると確かにうまく回ってはいなかった。
下請け工務店は安いコストでやっているので、元請けであるI社の段取りが悪ければ赤字になってしまう。それでも戸数があれば定期的に仕事がある。そんな関係性の中でやりくりをしていたため、下請けからは不満の声が大きかったのだ。
そこで、まず下請けの工務店さんに一円でも儲けてもらおうとおもい、コミュニケーションの改善、凡ミスをなくすため、システム構築を考えた。
色々検討した結果、コミュニケーション(案内図や図面をファックスで送るので、送り忘れがあったり、図面が最新になっていないことによる施工ミス、写真を報告するなどの手間などを改善する)システムを自社開発することにした。
予算の関係でシステム会社に共同開発をおねがいしたら、そのシステム会社いまやCMをするほどの会社になってしまった。あとで、当初予算をだしてくれなかったのに、システム会社が成功したら版権をとってないと責められた笑
しかし、作っても結局使わない。
新しいことには皆チャレンジをしたくないのだ。
自社施工のための施工部はひどかった。
管理ができていないため、社員大工は給与を日割りで計算すると外注の大工の倍の人工。これじゃあ自社施工、自社職人なんて難しい。
自社施工部でお願いしている外注の大工さんと話をしてみても、自社職人なんて難しいと言われる。よく話を聞いていたらあることに気がついた。
彼らは見て覚えろ!技術は教えてもらうものではなく盗むもの!という世界。
10年かかってやっと技術を自分のものにしているので、教え方がわからないんだ!って。
寿司職人を養成する学校があったのを思い出した。握る寿司ネタを絞り込み短期間で握り方を覚えて、わずか3ヶ月でミシュランの一つ星を取るくらいのお店が開けると。
マンションリノベーションはまさに絞られた施工方法。大工といっても多くの技術は必要ないし、養成講座を作れば短期間で養成できるんじゃないか・・と。考えた。
そこで、建設業界でなにか養成しているところはないだろうか?と探していたら原田左官さんという左官屋さんが養成しているということがわかった。
友達で原田さんにつながっている人を探し、紹介してもらい、会いにいってみた。
左官はバケツ持ちが10年、塗るまで10年かかるから、そこまで待てなくて若い子が育たない。原田左官さんには、芸大出身の子や若い職人さんが多くいた。みな社員。
熟練した職人をビデオ撮影して動画で流し、モニタリニングしながら塗る練習をする仕組みを行なっていると原田さんは教えてくれました。
きっとできる。でもどうやってプログラムを作るか・・。
ある飲み会で愚痴っていたら、そこにいた大手MリフォームのJ常務が東京都の職業訓練校を見に行こうとアポを取ってくれました。
そこにはすでにマンションリノベーション6ヶ月コースがあった。まさに理想とした形。
さらにそのプログラムを作っている元MリフォームのNさんを紹介してくれたのでした。
Nさんは少し頑固な感じだったけどJ常務の頼みならと引き受けてくれました。
あとは場所と仕組み・・。
まずは社員育成としてNさんの教育プログラムを作成。それを新卒の女子と施工部の若い男の子で実証実験。
3ヶ月間みっちりと研修をした。
結果、仮説通りのことがわかった。
そもそも肉体労働をしようと思う人種には学習能力が高くない。日雇い感覚でお金を稼ぎたいという入り方が多いから。だから学習能力のある人間がちゃんと教育プログラムがあって学習したら、吸収力が違うのではないかという仮説。
新卒の女子は学力の高い大学の建築学部を出た子、一方施工部の若い子は勉強意欲のない子。3ヶ月の研修を経て、実習になったとき、新卒の女の子には毎日施工方法の日報を書かせたら、半年後にはマニュアルまで作れるようになった。
ある時、その女子に実習の状況を聞いたとき、彼女が突然泣き出した。理由は一緒に実習を受けている施工部の若い男子が全然施工法を憶えないし、わからなくても聞かないから仕事がすすまないと・。一緒に仕事をするのが嫌だといった。
ここに職人養成の問題があるとおもった。
翌年一般から職人養成の学校(リノベーションカレッジ)を作り募集しようという話を進めた。色々な実際職人養成をやっている会社、団体、人、大学を回ってプログラムを修正した。
そこまで行くには色々と社内調整も大変だったけど、社長が賛成してくれたので、なんとか形となってスタート。
はじめは参加費45万円のお金を払ってきてくれるかと思ったけど、募集をしたら沖縄から北海道、25歳から60歳までの男女が3ヶ月間のプログラムに参加してくれることになり、研修がスタート。
3ヶ月間では、担当した社員が一番成長した。
卒業式は参加してくれた10名がみんなでサプライズのビデオを作ってくれて、はじめは職人養成なんて無理!って言ってた人みんなが味方になってくれて、本当に頑張ってやってよかった!と思いました。
その翌年にもまた第二期の職人養成リノベーションカレッジを開催することに。
今度は社員として一気に募集するという話になったのだけど、急に社内の事情で募集はしたけど、採用は一人という話になってしまった。これが組織の難しさだ。
急遽の求人募集だったのに関わらず、エントリーの人数は求人媒体の人は驚くほどの人数。
しかも大学・専門学校卒業、20代が圧倒的。中には有名大学の建築学部の第二新卒もいた。
面接でエントリーした理由をきけば、教育がある・上場企業の社員という理由だった。
やはり、ものづくりをしたいけど、教育もない、入りたいところがないから職人が増えないのではないか?とおもった通りだった。
会社の事情で一名しか取れなくなったので、10名程度に教育研修は当社で3ヶ月無料で行い、その後100%当社の下請けの会社で働かないか?と声をかけたら誰一人として来なかった。
やりたい人はいる。なのに受け入れ態勢が整っていない。
業界を変えるのは本当に大変なこと。
また厳しい現実を突きつけられた出来事でもあった。
なにからすればよいのか・。
結局、志半ばでI社を辞めることになる。
理由はとても大きなストーリなので、聞きたい人は飲み会で聞いてください笑
片足を突っ込んでしまった建設業界を変えるというミッション。
I社は辞めたけど、そう諦めることはできません。
次はどこへいくのか・・。
IT業界・・。
住宅コンサルをしたかっただけなのに笑

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