あんステDestruction*Roadと異ノ邦ノ人

2日かけて、2本芝居をみました。
1つは 9Project「異ノ邦ノ人ヘ」、もう1つは「あんさんぶるスターズ!エクストラステージ Destruction×Road」
この順で芝居をみてしまった私の、あんさんぶるスターズの話です。

9projectさんはつかこうへい劇団の流れを汲む劇団です。小劇場です。
いろいろ割愛しますが、イエスキリストをモチーフとした話です。(原作は異邦人という小説だそうです)
キリストが、最期に十字架を背負って、その十字架に架けられて亡くなりますね。その道のりになぞらえて、「生きるとは」を問う話だったように私は受け取りました。
その劇中で、男2人やりとりの中に、こんなセリフがありました(うろ覚えです)(戯曲買えばよかった)
神父「私は彼の中に神をみた!私は彼を信じたい。彼に懺悔を聞いてほしい。彼の言葉こそが私にとって正しいものに感じる」

そのあとに、「彼」が神父に言います(それは嘆きであり叫んでいた)
「お前の言う神とはなんだ。お前はただ、私に道を示してほしいと甘えているだけだ。生きる道はお前自身で見つけなければ、お前は死んだも同然だ」
「お前が勝手に俺のせいにして、俺に許しを乞うな。俺をお前は絶対に理解できないだろう。」
「お前たちのいう愛とは、何かを特別と思い、同じだけ何かを憎むことだ。俺の恋人が俺に向ける愛と、将来別の男に向ける愛に何の違いがある?明日俺が死ぬことと、俺が撃って死んだ男に何の違いがある?何の違いもありはしない。これら総ては等しく”素晴らしい”のだから。俺は総てを等しく愛している。俺はそれを愛と呼ばないだけだ。」

この男のことを、物語では「異端」とし、「理解ができない」と評されます。
「理解できない異端は、排除するしかない」
そうして彼は、首を落とされます。

彼が首を落とされる前、神父が呟く。
「(総て等しくなど)人間は、それでは生きていけない」

さてここからあんさんぶるスターズ!エクストラステージの話をします。
追憶 クロスロード からの、海賊フェスでしたね。
ご存じかと思いますが、クロスロードは蓮巳と朔間、また学園の過去の話です。
詳しくはゲームを読んでいただいて。

舞台第一幕終盤、朔間は「朔間零がヒーローとして君臨した世界」を語る蓮巳対して、その場にいた全員を舞台に上げて、その場の人間全員を勝たせました。
この場にいる人間を支配して、自分が指針になることを否定する。それは、朔間が、人間全員、それぞれが支配権を持っていると、「総てのものは等しく素晴らしい」のだと評していたから。
何かが特別ではない。たとえ特別だったとしても、それはほかの人と何も違わない。等しく「生きたい」。
朔間が言いますね。「一個の人間として生きてみたい。」
それが、人に信仰されつづけてた(憧れられてた)彼が、
他人の期待に応えるのではない、自分の望みで何かを決め、何かを得て、たまには失敗するような、そんな「生」を朔間は求めている。

朔間は、「総て等しく素晴らしい」という精神性も持ち合わせながら、
「何かを特別に想い、何かを憎んでみたい」とも思っていたのだと、私は感じました。人から道しるべを求められ、懺悔を聞きながら、「ほかの人のように、生きてみたい」と願っていると。

だのにどうだ、蓮巳が望んだことは、「道しるべ」になること(そこに朔間の望む世界感は無いしね)、懺悔を聞くこと。
蓮巳が「朔間さんを”使って”」と何度も言います。脚本家は意図しているんでしょうな、蓮巳は人間として扱ってないんですよ。モノのように言う。

使われて、蓮巳の夢見るようには出来るだろう。
でも、それは「お前はただ、私に道を示してほしいと甘えているだけだ。生きる道はお前自身で見つけなければ、お前は死んだも同然だ」という、異ノ邦ノ人ヘ での「彼」の言葉と同様に、蓮巳に、また大神にも、その場にいた他生徒たちも、自分とは関係なく「生きて」ほしかったのだと願っていました。
でもその願いは理解されず、蓮巳は膝を折り、「どうしていいかわからない」と言う。「それでは、人間は生きていけない」という神父と、なんの偶然かおなじ姿勢で。

彼は悪魔のように、膝を折った蓮巳に言います。俺は、世界の主人公ではないのだと。主人公は、蓮巳の言う「名もなき群衆」なのだと。

そして舞台上の朔間からは、「俺も、蓮巳も、ここにいる全員が等しく素晴らしいのだ」と、きこえたきがしました。

奇人たちはみんな勝手に信仰され、その望むように振舞います。
信仰は神の力そのものだが、彼らは人間です。信仰は力になりません。
その身にある、神性と人間性の間で闘っているのだと、
私ははじめて、小南さん演ずる朔間を観て分かりました。
ちなみに、第二幕の最後に奏汰と朔間、羽風で話すシーンで、奏汰がそんな朔間の闘いを知っているってのも伝わってきて震えました。


前日に観た作品をヒントに、DstructionRoadを観て、理解できることが沢山ありました。
異ノ邦ノ人ヘは正統派ストレート芝居としてとても素晴らしく、マイベストオブ舞台2019です(9月現在)。
そして、それを足掛かりにあんステ、ひいてはあんスタがひとつ分かったこと、感激、そして感謝したいです。

これは、わたし個人防備録です。
先人たちがとっくに語っていることばかりでしょう。
それを、私は、小南さんを通じて、やっとわかったのです。

あんさんぶるスターズ!エクストラステージを上演するために関わる、総ての人に感謝を。

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