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まむおの小説シリーズ

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私が書いた小説をまとめました。
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#ご無沙汰しております

ボタン

「あっ…」 スーツからゆっくり落ちていく。ほつれそうと思っていた矢先だった。地面に落ちた茶色のボタンは、もの寂しそうな表情をしていた。僕は、まじまじとヤツを眺めることを止めなかった。 「こんなところに…」 立ち止まる人影を感じた。誰だかすぐに分かった。しゃがんで拾い上げると、ヤツの雰囲気が変化し始めた。華奢な親指と人差指に摘まれた格好で、申し訳なさそうにしている。拾ってくれた人と目が合った。 「これ…」 「取れてしまったんだ」 「付けてあげる。ほら、上着を脱いで」