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EP1「僕は、一点の曇りもない気持ちで。」

くらたまみのエッセイ。

冒頭に、文章力のないわたしは伝えたい。
これから回を重ねて綴っていくエッセイ。
ガチガチに意味を持つ文章よりも、「なんか良い」と言う感覚を大事にしたい。

自分の何かに例えていったり、たまに救いがあったり、笑ってくれたらなと思う。

昔、付き合っていた彼が言っていた言葉をふと思い出すときがある。

未練とか傷ついたとか、そんな不穏な気持ちではなく。

ふと立ち止まったときや、人間関係で困ったとき「もう後悔しても、本当のことを話そう。」と開き直るとき、その言葉を思う。
嘘をつきそうになっている自分と出会うたびに何故か思い出す。

彼が言った。

「僕は一点の曇りもない気持ちで。」

と言う言葉を。



彼とわたしはちょっと変わったお付き合いから始まった関係で
恋人として「結婚について」のインタビューを受けていた。

実際の私達はあんまりうまく行っていなくて。(笑)
それは人の気持ちなので仕方がないのだけど。

それでもわたしは「もう上手くいっていない。相手はもう自分をこれ以上は好きにならないだろう。」と分かっていても「好き」よりも「意地」や「プライド」が上回っていたりして
なんとか上手くいけばいいのに、ともがいていた。

「結婚はどういったタイミングでされたいですか?」

と聞かれたとき、頭が真っ白にならないように、ある程度の言葉を用意していった。

だけど、実際に聞かれると「嘘をついていいのか。」と罪悪感で胸がいっぱいになる自分がいた。

この頃のわたしは、責任感に苛まれていて、不安な気持ちを棚に上げても誰かの気持ちや見られ方を意識する人間で、
「相手のタイミングもありますし、わたしだけのタイミングではないので、いつでも良いんですが、相手に任せようと思っています。」
と当たり障りのない言葉を吐くことができた。

その後続いて彼が答える。

そのとき彼はこう言ったのだ。

「僕は、一点の曇りもない気持ちで。
心からそうしたいと思えたときにしたい。」と

その後も、素直な言葉がたくさん並び、高校生の男の子が結婚観を語っているかのようなたくましさに、インタビューアーさんの目は点になっていたが、

わたしは出だしの“その言葉“に雷を打たれるくらいの衝撃を受けて、それ以外が頭に入ってこなかった。

わたしはその「本質」の言葉に、とても良い意味で激しく心を刺されていたのだった。

なんと言えばいいのかわからないが、人の無垢さや、きれいさがそこに全て詰まっているような気がして、なんだか泣きそうになっていた。

上手く例えるとしたら、いや、上手くは例えられない、変だと言われるかもしれないけど
「もし自分が一生懸命に彼を育ててきた親だったら。」と思った。
好きでもない人と簡単に結婚なんか絶対にして欲しくないなと心から思ったのだった。

彼がどんな立場で、どんな気持ちで必死に「自分の気持ちに素直でありたい」と叫んでいるのかと思う。

反面それは、自分に対して「曇りのあるレンズがかけられている」と言うことでもあって、そうなれなかった女の子の自分に胸が痛んだりもしたが、

とても大切な何かを感じた。

そしてそれは、もし彼が「一点の曇りのない気持ち」を見つけた日には、
本当に幸せになっていて欲しいなと思うほどの力だった。

そんなことをふと、思い出す。

「本質をつく」

これには勝てない。
どんな嘘もきれいも「本当のこと」「真実」には敵わない。

本当の気持ちかどうかは絶対にいつかバレるし、人はとても敏感な生き物で「なんか泣いた」とか「よくわからないけど感動した」と鈍感な人でも多分そこに気づいている。

人の本質をちゃんと見極められたらなと思って生きてきた。でも少し歳をとった今は「考えない」こともすごく大切にしている。
相手にとって自分の行為が重くなっていくと人間関係は絶対に崩れていくから。

そう分かっていてもできない時がある。相手が嘘をついたり、適当にしたり、その場しのぎをしたら許せない。そんな幼くて浅い自分が、まだ消えてくれない日がある。

またふと
「愛するとは相手を許すことだと思うな」と、いつかわたしは彼に話しながら笑っていたことを思い出した。

彼はとても素直で、そこにはなんの悪気も悪意もない。無垢で、怖いもの知らずな人は大人になると怖い思いをするけど、守ってあげたいとも思わせてくれた。

何より、わたしもそんな素直な人間でありたいなと心から思っていたのだ。

素直に生きて、何が起きたとしても、自分や相手の素直さにこそ「許す」と言うことを
大切にできる人間でありたい。何度も自分に言い聞かせていたい。

そしてあれからずっと
「私は、一点の曇りもない気持ちで。」幸せであろうと、
晴れた空を見上げて、今、大好きな人に向けて思うのだった。




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