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この世界でいちばんきれいなもの。

私は自分の力だけで
本当にキレイなものを見たことがない。

映画も 歌も 本も 仕事の成果も
太陽も 夜も ご飯も
「喜ばせたい」と
見せてくれたあの日の景色も

貴方の何気ない一言も
お布団も、おはようや、おかえりも。

人はそんなことで生きていける。

キレイなものは
相手を通した自分の中に生まれる。

私がこれまで生きてきて、一番きれいなものを見た瞬間は、27歳の冬に見たマレーシアの夕陽だろうと思う。

振り返れば、約一ヶ月くらいの月日を過ごした場所。

誰にも言わずに、いつもと同じように、こっそりと。

この先、あれ以上にきれいな景色にはきっと、出逢えないような、もう出逢わなくてもいいと思えるような景色だったように思う。

とても多感で、かなしみや怒りや愛に包まれていた。その分描きたいことも、書けないことも沢山あって。それでも、毎日とてもとても、生きていた。

今の自分にはない。
きっとまたそんな自分と出会うかもしれないけど、今の自分には「生きているだけじゃ足りない」なんて思うこともないような、
「若気の至り」をより集めた瞬間達だった。

真夜中に飲んだウイスキーやカクテル。
満月の下、まっさらな白い砂の中を歩いて、ウミガメを探した海。
話せない英語も、身振り手振りで誰とでも仲良くなれた。

キラキラ光る海と、太陽と、お酒の中の氷。
聞いた歌。

おわりのような、はじまりのような。

海の中で、きれいな景色や、魚の群れに。
あまりにも感動して、はじめて流した涙も。

恋に恋して、愛ってなんだろう。と
毎日のように考えていた。
とても無意味で、生きていくのに必要のないことばかりを考えていた。

汚いホテル、綺麗なホテル、身内に電話した夜。
朝むいて食べたフルーツ。
こわかった飛行機。

二つの目玉焼き。何倍も飲んだコーヒー。ミロ。
暑くて暑くて、溶けてしまいそうな車の中の温度。

何気ない日々に、誰かがいて、
いつもその誰かを深く深く思って悩んだり
愛しく思ったり。

とても不思議な日々の中で、
だけどはっきりと

この瞬間を永遠に忘れない。そう思う「きれい」がそこにあった。


私は前に前に進もうとしてる。

今は聞こえない、連絡もとれない、
大切な人、そして、家族。

元気でいてくれたらいい。

そこそこ幸せで、たまに不幸でも、
笑ってくれてたら、
わたしのことなんか気にしなくていい。
わたしは元気でやっていく。

生きるってことはすごく単純だから。

聞かれると困ることがいっぱいあって
夜こわい夢を見る。
胸がもやもやとする。

今はそんなこと言ってられない状況ばかりだけど、

いつかまた素敵な景色を誰かと見に帰りたいと思う。

本当にきれいなものは
失うことなく、心に輝きつづけてる。
今日も。明日も。

ずっと、あの瞬間は永遠。

大切な人なら、大切な景色なら、また会える。
約束しなくても。

なんとなくでいいから、明日もがんばろう。
未来に、なにも約束されてなくても、自分を信じて。

一瞬は一生で、一生は一瞬になる。
永遠は、永く遠回りする時間。
一緒にずっと歩きたい誰かがいるなら、
遠回りして、いろんなものを見たり、いろんなことを感じて、共有して。

めんどくさいの中に、しあわせは沢山ある。



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