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小さな「キュン」の物語

まだ社会人になりたての頃、会社のシステム部に気になる人がいた。
ハスキー犬っぽい横顔のそのラインが好みだった。いかり肩がまるでハンガーにかけたみたいに骨ばっていて、それがまたセクシーだった。

同じ会社だけれど、フロアも違うし、一緒に仕事する機会もない。見かけたらその日はラッキー! みたいな感じだった。

最近全然会えないな…と思ったある日、思いついた。
スケジューラを見てみよう、と。

すると、1月下旬から4月にかけて長期の予定が入っていた。
「あれ、出向かかな、だから見ないのか」と思いながら、中身を見てみると、書いてあったのは「花粉飛散」。場所もご丁寧に登録してあり、「日本全国津々浦々」となっていた。

うかつにも、「キュン」としてしまった。

彼のスケジューラは、仕事の予定でもクスっと笑える要素があって、そのあとも頻繁にチェックしてしまった。そのたびに「キュン」としていたことは言うまでもない。

ただの憧れの君であり、私は結局話しかけることすらできなかったのだけれど、いまだに花粉飛散の季節になると、あのシュッとした鼻筋の横顔とともに、思い出すのです。

サヨナラだけが、の下あたりに、「文房具カフェでお会いしましたね」と書いて店を出た。
こんな令和の時代に、伝書鳩よりも不確実なラブレター。
きゅん。

サヨナラだけが人生さ【さとゆみの今日もコレカラ/第71回】


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