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自分が、どんな声で喋るかを知らない私。そして、未来の音声認識機能への望み

LITALICOの佐々木真美です。19本目のnoteのテーマは、自分が、どのような声で喋るのかを知らない私が、未来の音声認識機能に期待をしていることについてです。

脳性麻痺当事者で言語障害がある私は、自分の声は知っていますが、自分がどのような声で喋るのかを知りません。普段、施設ではペチャラやTobiiなどを使って話をしています。なので、自分の思いを相手に伝える分には満足していますが、機械音声で伝えることに違和感を感じています。しかし、あるきっかけから「近い将来に喋ることが困難な人も使える音声認識ができるようになるかもしれない!」といった嬉しい情報を知りました!そこで、私が今まで思ってきたことや、どのような願いがあるのかをこの記事に書きます。

機械音声が気に入らず、購入しなかった中学時代。大人になり、再び使いたくなったペチャラ

これまでの記事にも書いているように、私は4歳から17歳まで医療療育センター(以下、センター)で日常生活を送っていました。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

私は、センターにいた頃、言語聴覚士(以下、ST)によるリハビリを受けていました。その当時、自分は小学2年生だったので、学校へ通っていました。学校には、色々な福祉機器があり、その中にペチャラがありました。最初は、学校の授業で使っていましたが、訓練室にもあったので、より使いこなせるようにSTの時間に練習をしていきました。そして時が経ち、私は中学生になりました。進学して間もない頃は、五十音ボードを指で押すと代わりに喋ってくれることに大満足でした。しかし、中学3年生になると思春期が現れ、自分の声ではない機械音声が気に入らなくなり、購入しませんでした。

それから3年が経った春のこと、お世話になったセンターから今暮らしている施設に引っ越しました。センターでは、1人で近所にあるコンビニや郵便局へ行けませんでしたが、今暮らしている施設は職員からの許可をもらうと1人で出掛けることが出来ます。けれども、普段使っている文字盤は音声が出ないので、必ず誰かがそばにいないと話ができないことから不便を感じていました。そこで、中学時代に使っていたペチャラの存在を思い出し、仙台市にあるサポートセンターから試しにペチャラを数ヶ月間貸してもらいました。

ペチャラを使うようになり、PCに書いておいたことを自分でメモを取ることが出来るようになった

私は、自分のPCとプリンターを持っていますが、用紙やインクなどを自分で取り替えられないので、本当はないはずの障害を感じてしまいます。そこで、プリンターを使わずにPCに書いてある文字をメモを取る方法を考え、ペチャラに移したところ、1人でメモを取れるようになりました!そのことから、言語だけではなく記憶の面でもサポートになることを知った私は、機械音声は気に なるけれども、自分が30歳のときにペチャラを購入しました。そして、現在も買い物や日常生活で使っています。

「学校の授業やSTのリハビリの中でペチャラと出会って」
五十音が書いてあり、指でその五十音を押すと喋ってくれる福祉機器です。主に、私を含む言語障害の方に使用されています。

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暗闇時代の後半に見ていた福祉番組でTobiiを知る

私は、17歳のときに4歳の頃から入院していたセンターを退院し、今暮らしている施設に入所しました。その後、高校の担任の先生からとある企業を紹介されます。そこが、今自分が働いている株式会社LITALICO(以下、LITALICO)です。

自分は、高校卒業後、LITALICOで働くようになりました。最初は、順調に働いていたので すが、当時の生活と仕事との両立がだんだんとしんどくなり、心の調子を崩してしまいました。そして、「暗闇時代」という自分の人生の1部になっている時期を乗り越え、再び社会人になる前のこと、ある福祉番組でALSの方が福祉機器である視線入力のPC、(※1)Tobiiを使っている様子を見ました。

(※1)Tobiiとは
目線やまばたきなどで、文字入力からマウス機能まで操作ができるPCです。主に、私を含む脳性麻痺の人や、ALSの人に使用されている福祉機器です。

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Tobiiを使って、どのようなことをしているのかを知る。その姿に衝撃を受ける

その方を取材した番組が数回にわたって放送されていました。すると、Tobiiの中にある文字盤を使って取材にいらしていたディレクターさんと会話をしたり、目の操作でマウスを動かして音楽を聴いたり、お勤め先の会社の会議にSkypeを通じて参加したりしていました。

また、ご自身がALSになってから思ったことや感じていることを書いた本を出版されていました。その活動のすごさに衝撃を受けたことと、東日本大震災があった数年後にLITALICOの仲間が会いに施設へ来て下さったことがきっかけとなり、一緒に働くこととなりました!

働くようになり、自分から「Tobiiを使いたい!」と言ったものの

私は、2015年から現在にかけてLITALICOで働いています。入社してしばらくは、自分のタッチパネルのPCを使い、(※3)ポインターを被せてもらって仕事をしていました。けれども、そのとき既に、自分はポインターを長年使っていると頸椎に負担がかかり、4,50代になったときに頸椎の手術を受けるかもしれないことを知っていました。なので、Tobiiの存在を知っていた自分は、1人目の上司に「タッチパネルのPCだけではなく、Tobiiも使って仕事をしたいです。」と言いました。そして、その願いが通り、Tobiiを会社から貸与してもらっています。

現在は、自分のタッチパネルのPCと同じように仕事や遊びに使っていますが、Tobiiを使い始めた頃自分は、「仕事」というとテキパキするイメージがありました。なので、ポインターでPCを操作するより、時間がかかってしまうことからTobiiを使うことを遠ざけていました。そこで、2人目の上司となる金井敦司さんとも相談し、Tobiiでゲームをすることで操作に慣れていきました。

(※3)ポインターとは
工事現場などで使用されているヘルメットに棒が付いている道具です。私の手と口の代わりをしてくれています。

いつしか、Tobiiが日常生活に欠かせないものになった。でも、やっぱり機械音声が…。

Tobiiを使ってから6年が経った現在では、文字入力のスピードが速くなり、仕事やゲームの他に施設職員との会話にも使っています。ときには文字盤やペチャラも使っていますが、ポインターを被せてもらう必要がなく思ったことをすぐに書けるので、今では1番速く自分の思いを省かずに伝えられるようになりました!

でも、1つだけ「どうして?」と思うことがあります。それは、音声認識の設定の仕方についてです。Tobiiを使い始めた頃、私は「Tobiiは脳性麻痺の方やALSの当事者に使われています」と業者の方か、サポートセンターの方に教えてもらいました。なので私は、てっきり福祉機器ではないPCとは違い、「言語障害がある自分にも、音声認識の設定で機械音声から自分の声に変えられるのかな?!」と思っていました。

そこで今年、Tobiiにすっかり慣れた私は自分の声を録音し、機械音声から自分の声に変えようと、設定を変えるページを開きました。けれども、設定を変えるページを見た瞬間、言葉を失ってしまったのです。なぜなら、福祉機器ではないPCの設定と同じで、ある程度喋らないと声を入れられないということが分かったからです。

使い心地はものすっごくいいけれど、言語障害がある人向けでは…。

自分の身体を労わりながら仕事や遊び、施設職員との会話を豊かにしてくれるTobii。上記に書いたように、以前より自分の思いを大切にすることが出来るようになりました!しかし、やっぱり私が望むのは、たとえ自分の口から喋られないとしても、自分の声で会話をすることです。言語障害がある全ての人が本人の声でPCの文字盤を使って会話をしたいかは分かりませんが、私個人としては自分の声を自分のタイミングや長さで音声認識の設定をしたいのです。

1人の友人から、音声認識が進化してきていることを教えてもらった!小さい頃からの私の願いが叶う日が来るかも

3人目の上司で、今は友人である鈴木悠平さんにPCの音声認識機能について、自分がどう感じているのか、今後どう進化していってほしいかなどを話す機会がありました。そして、悠平さんから「言語障害がある人でも音声認識ができるように少しずつ変わってきている」ということを教えてもらいました。その情報は、小さい頃から「機械音声がな…」思っていた自分にとって、ものすっごく嬉しい情報でした!

私は、自分の声は知っていますが、もし自分が喋られるとしたら、どのような声で喋るのかを知りません。なので、PCなどの音声認識の音声が喋られなくてもPCに認識出来るようになったら、更に施設職員やLITALICOの仲間などとの会話を楽しみたいです!

また、生まれつきの病気や障害ではなく事故などで途中から、自分の声で喋られなくなってしまう方もいます。そういった方々の絶望も音声認識を使うことによって、絶望を少しは和らげられると思います!なので、「もしかしたら、自分 の声をPCに録音が出来て自分の声で文字を読めるようになる日がくるかもしれない」と思うと、その時が待ち遠しいです!そして、今後の音声認識機能の進化が楽しみです!

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