見出し画像

出版物総額表示で書籍はどうなるのか考えてみた

こちらの文章は9/16に書いています。

そして書協(日本書籍出版協会)の見解を受けて9/17に加筆。

(本当はすぐ投稿したかったのですが、政治活動用に立ち上げたnoteで自分の選挙期間中の記事には向かないなと公開を遅らせることに。)

本職は本関係の仕事をしております。人生の半分くらいはこの仕事をしているので、それなりの知識はあるはずに。

さて、本題。

現在物議を醸しているのがこの話題。

要は2021年4月からは出版物にも消費税額の総額表示が義務付けられますよって話。今の本体○○円+税って表示がNGになりますよってことです。

ただし、スリップのボウズ(本に挟まっている売上&発注カードの頭)に値段が入っていればOK。もちろん本のカバーを付け替えたりシール貼りもOK。

『なーんだ、別にどうってことないじゃん』…ってわけはないですね。

○差し替えるのに必要な紙類&人的コストどれだけかかるのか

○スリップレスが進んできているのに、なぜコストのかかる方向に戻るのか

○本は返品できるので、書店だけではなく取次(いわゆる問屋)や出版社の負担は凄いものに。

ちょっと考えただけでこれだけ不安要素が。

とはいうものの、消費税なしの時代からこの仕事をしている経験からすると、もし強行されても今言われているような中小出版社は総崩れとまではならないんじゃないかと。

さすがに財務省も2021年4月1日から現在の表示の商品流通は一切認めないって暴挙には出ないと予想しています。現実問題として無理。最近の配信で1年で95%くらいの店頭の本が入れ替わるのではって言ってた人がいたようですが、そんなことは書籍についてはないです。1年って委託配本した書籍の返品がひと段落ってくらいの時間しか経過してない体感。まだまだ返品は続くのです。

新刊を現在の表示のまま流通させることはできなくなると思いますが、あくまでも緩やかに移行。最終的にはほとんどの商品は新表示になるけど、昔の表示の本も見受けられる展開になるんじゃないかなと。消費税5%の商品の返品もちょくちょく見ますよ…今でも。

<9/17加筆 書協から見解が出て、4/1以降の新刊から適用の方向で動いているようです。そりゃそうですよね…。>

ただし総崩れとはならなくてもやはり問題はあります。

この機会に現在のコードの商品管理が面倒なので、よほどの売れ筋以外は一気に返品してしまえという書店は少なからず出ると予想。売れ筋の本はまた出荷する機会が出てくるので、そう聞くと問題は大してなさそうと思われるかもですが、大手と中小とでは取次との取引条件が違うことが往々にしてあります。

大手は注文品出荷が翌々月上旬までにはお金になるのが、中小だと支払保留を2,3割されて、全額お金になるのは7,8ヶ月後というのはよくある話。そして返品は翌々月上旬までに必ず支払わなければならない(委託は別の話)。この利ザヤで取次は利益を出してる部分もあるのですが、出版社にとってはかなりきつい話に。

これで経営に行き詰まる出版社はやはり出てくると予想。

『特例措置が終わる可能性があるのがわかっているのに、なぜ出版業界は何の対策もしていなかったのか』って意見も散見しますが、書籍自体が総額表示には向かないし、意味があるのかって商品なので、このまま延長延長で無期限に逃げ切る構えだったのかなと暴論を。まぁ私も今回問題になって、そういえばそうだったなと思い出した体たらくなので、延長でなぁなぁになってもきっと気づかなかったと思われ。

書籍と総額表示の相性については、かなり前の記事ですがこちらを参考にしていただけると。最近この名前見たなって本好きの方もいると予想。先日の中田敦彦さんの書店業界動画の参考文献を出版していた会社の方が書かれたコラムです。


個人的まとめ(というよりは勝手に予想)

○業界中小規模社総崩れはオーバーだと思うが、総額表示導入は少なからず負担になるのは事実。

○カバーいじらなくてもスリップ入れれば解決じゃんっていうのは時代に逆行し過ぎているので、現在流通している商品についてはそのまま流通、4月以降の出版物は要総額表示が現実的では。

<9/17追記 上にも追加しましたが、この流れに。あとは、スリップを今更入れることについては否定的な意見はやはり多いですね。小さな書店だといっそのことvslipフル活用したほうが管理しやすいんじゃないかって気も。きっと開発の方は当日までに使いやすい場所に総額表示が出るようにバージョンアップするだろうと予想(めちゃ丸投げですがご容赦を)。>

○書籍は大多数が再販商品なので、本体価格表示=価格は明白って意見はごもっとも。これがあるので、流通のバランスをぶった切ってまで総額表示を急ぐ必要はない。

※新刊のカバー制作数や本の研磨スケジュール管理に影響大なので、結論は早く出して欲しいと思ってます。特に後者は決まらないと今の状態では何もできないし。

というわけで(?)しばらくは本職のほうに専念。政治活動関係は旦那や関西方面の手伝いをぼちぼちと。次の選挙が自分自身にあるとは現時点では思っていませんが、勉強しておくこと自体は無駄にはならないのでというところですね。

<9/17加筆絡みでおまけ>

○vslipってなんぞやって方は下記のリンクから。1枚だけスリップいるんだが全部使ったぞってときは出版社にとっても便利なサイト。きっと来春には総額表示への対応も(しつこい)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?