人から記憶を残された方法
その日は海に向かっていた。どんどん人通りが少なくなり、山を登り、曲がりくねった道を下っていった。ああ、やっと目的地の海が見えたと思ったとき、小学校の同級生の彼女を思い出した。中学を卒業してから1度も会ってもいないのに。
「あのね、くもり空の隙間から光がおりてることを、天使のはしごって言うんだよ」
『天使のはしご』別名は薄命光線といい、太陽が雲に隠れるとき、雲の切れ間から光が漏れ、放射状に地上へ降り注いで見える現象の俗称。(Wikipedia参照)
小学生の頃、偶然一緒になった帰り道で、彼女が教えてくれた。帰宅してすぐ、母にも天使のはしごの話をしたことを覚えている。子供ながら素敵な言葉だなぁと、まだ見たことない光にワクワクしていた。
あれから何回か天使のはしごを見た。きれいと思い、そして彼女を思い出した。
彼女が今どうしているか は友達に聞いていけば分かると思いつつ、次の日には彼女のことを忘れてしまう。
今回も数年ぶりに彼女のことを思い出した。おそらく彼女が私の事を思い出すことは無いし、私が天使のはしごを見るたびに思い出していることを知ることはないだろう。
綺麗な言葉で私の記憶に残り続ける彼女に鮮やかだと思い、笑みが溢れる。
そして、私も彼女に連絡を取ることは無いだろう。
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