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コロナ禍において、推しへの愛を何ではかり、何で届けるのか

自分の推しの界隈がここ数日、少々ざわついている。

事の発端は、有観客ツアーのオーラスでWアンコールをし、その場で新曲を歌ったこと。(オーラス=ツアーの最終公演)

でも今回の騒動の本当の火元はここではないと私は思っている。

行きたいなら行けばよかったのに。では終われない

ずっとずっと火は小さくそこらじゅうでくすぶっていて、今回のは着火剤の一つにすぎないのだ。そしてそのくすぶっていた火というのは、「コロナ禍という状況において、求められる推し方が一つではなくなっている」というところにあると思う。

もめごとには触れないのが一番いいと重々理解はしているのだけど、新曲発表に落胆したファンに対して、今度は「ツアーオーラスで新曲発表なんてよくあること。これだから〇〇オタは…」などと別界隈の人などに言われはじめているのを見て、そして心優しくまじめなファンほど口を閉ざし個々で悲しんでいるのを見てどうしても黙っていられなくなってしまった。

私は推しとその周りの方々への批判感情は一切なく、困難な状況下で何とか有観客コンサートを実施しようと試行錯誤してくれたことに対し感謝の気持ちしかないのだが、いちファン目線で見た今回のツアーについて、ツアーに参加できてない人に何が起きていたのか書いておきたいと思う。

①そもそも1月に始まったツアー、延期による日程変更があり、「初日・オーラス」も当初の予定とは違う会場・日程だった。

「ツアーオーラスなんて重要そうなのわかってるのに、文句言ってないで行けばよかったじゃん」って思っている人に、これだけでも知っていてほしい。今回のツアーオーラスは「当初の予定とは日付も会場も変更になった結果のオーラス」だったこと。そしてその結果オーラス会場となったのが地方だったこと。

②ツアーに応募・参加することを「推しへの愛のために」自粛した人たちがいる。

コロナ前であれば、全ステ多ステと呼ばれるような「全公演に応募・見に行く=推しにとってよいこと、熱心なファンである証拠」という共通認識があったと思う。(以前からチケットの取り方等に一部問題はあるだろうけど。)

でもコロナ禍になり「感染拡大地域とされているところから、推しと同じ空間に行くことは果たして本当に応援になるのか?」という考え方がでてきた。いくら感染対策をしても、1000%安全な証拠はない。もし推しのコンサートでクラスターなんておきたら推しが叩かれる…。推しがもし感染したらと思うと不安でしょうがない。などコロナ前なら好き!会いたい!で終わっていたところに複雑な感情が発生した。推しへの愛のほかにも会場となる地域に対する配慮をした人もいるだろう。

もちろん自分や家族が医療従事者である、家族に高齢者がいる、自分や家族の会社や学校の規定で県外に出れないなど、推しへの愛もお金も日程も大丈夫なのに、普段なら応募できるのに!あきらめざるを得なかった。という人も多い。

③人数制限があり、今までよりもっと当選しにくくなっていた。

そしてコロナ禍での有観客コンサートということで、会場の人数制限がかかり、需要と供給の大きなミスマッチももちろん起きていた。全部申し込んで全部落ちる。そんな人もたくさんいる。コンサートに参加できるということは、(ありとあらゆる状況をクリアしたか、全くそんな配慮をしていないかはそれぞれだが)今まで以上にとってもとってもレアなこととなった。

④延期案内、日程変更、追加応募、増枠による追加当選などが半年以上にわたって繰り返され、そのたびにいろいろな感情が生まれた。

そんな中、始まった今回のツアー、本来は1月に始まり3月には終わっているはずだった。だから本来であれば11月に始まった応募の当落でファンの悲喜こもごもはいったん終了し、自粛した人・落選した人はDVDの発売と次のツアーへの期待に切り替えていたことだろう。

ところが今回のツアーは本当にありがたいことに中止ではなく延期をしてくれたことによって、私たちは半年以上もの間ずっと「最初の応募の時は感染状況から諦めたけど、いまなら行けるのでは?」「追加で応募できるようになったけど、どうしよう」「落選したのに後から当選してる人がいるから自分も可能性ある?」などと「何度も判断を迫られる」「落ちても諦めきれない」状況が続いていた。

見えてくる自分とは違う判断をしている人の存在

各々、やっぱり万難を排してでも申し込む、やっぱり今回は自粛する、どの段階でも応募できない状況だった、などありつつツアーが始まった。SNSで流れてくるレポ。見に行けてないんだもの。何があったか知りたいに決まっているから見る。でもその中で見えてくる、落ちたって言ってたはずなのに参加している人、全部のコンサートに参加している人、地域や学校、職場のルールを守ってないのではという人の存在。

あらゆるところで発せられる「有観客がやっぱり楽しい!」「コンサートこそが自分たちの一番の見せ場」「コンサートに来てほしい」という推しの発言。(伝えたい想いとしては「だから今後ももっとコンサートできるように頑張るよ」と続くのだが、受け取り側にも心に余裕がない)

正直者は馬鹿をみる?

真面目に悩んで、応募すら自粛したり、受かったのに諦めたり、高額転売には手を出さなかった私がバカだったのかな?何も慮ることなく全部応募して、周囲の人間には県内に遊びに行くって言って、新幹線や飛行機のってコンサート行って翌日学校や職場にしれっと行けばよかったのかな?という嘆きがちらちらと見え隠れするようになった。

そして当初の日程が全部延期でこなせたかというとそうではなく、たった一か所だけ中止になってしまったところもあった。この中止に対して、オーラスまでの間に推しからはっきりと言及されることもなかったため、ここに対するくすぶりもちらちら見えるようになった。

でも、基本的にはみんな負の感情は頑張って押し込んでいたのだ。

推しが悪いわけじゃないのはみんなめちゃくちゃわかってる。推しとその周りの人たちが何とかして少しでも多くの人と会えるように試行錯誤してくれているのも感じる。延期した結果、ぎゅうぎゅうのスケジュールの中コンサートをしてくれているのに、マイナスな声を聴かせたくない。誰が悪いわけでもない。

だから、自分が行けないコンサートのことを思うと辛いから、次の新曲を楽しみにしよう。

もうすぐ発売される新曲。推したちはいつも謎解きのように伏線をはったり、サプライズしたりといろいろ工夫してくれる。今回もタイトルや文字だけの情報が小出しにされ、推したちがめっちゃ自信をもっているとあちこちで言っていて、最高潮にワクワクと期待が膨らんでいた。

どこで新曲発表かな?地上波の歌番組?これから大きな特番いくつもあるよね?あれかなこれかな?それともYouTubeかな?それともラジオの生放送?公式Instagramもあるし、有料ブログもあるし、FC会員限定の動画もあるし、推しとのつながれる場所はコンサートでなくても沢山ある!自分は自分のできる形で応援していればちゃんと愛は届くよね!


そんな中での今回の件だった。だから涙が出た。

いろいろ頭では理解してても、もう駄目だった。半年間悩んだり後悔したり、なんでこんな職業についちゃったんだろうとか、なんで私こんなところに住んでるんだろうとかいろいろ考えたことが一瞬で押し寄せてきた。

新曲がききたかったというよりも、自分の推しへの愛は高い壁の向こうへは届けることが難しいと示されてしまったような、ここにもファンはいるよって叫んでたけど見えてないのではとそんな気がしてしまった。

コンサートがファンと一番近くにいられるから一番大切にしたい。推しのその気持ちすごくありがたいし、理解できる。だからこそ、何とか全部のコンサートに入ろうとした人たちのことも私は否定できないかなと思う。コロナ前までの「推し・ファンへの愛の伝え方」と「コロナ禍だからこその推し方」が共存しているのだ。


今回のツアー、あんなにたくさんの場所で行ったのに一度もクラスターを起こすこともなく、推しも全員元気に過ごしてくれていて、大成功だと思う。

私は参加してないのでリアルな声はわからないけど、参加した人一人一人がちゃんと気を付けていたからこそ、オーラスまでたどり着けたんだと思う。本当に良かった。参加できた人は別に隠すことなく堂々と楽しかったと言っていいのだ。来てくれた人の楽しかったという声が推しへの最高のプレゼントなのだから。


そして、参加できなかった人。無理して笑わなくてもいいのだ。本当にいろんな感情があった。半年間もの間、期待とがっかりを繰り返して、なんだか疲れたよね。でも、いろいろ言いたかったこと、飲み込んだこと、後悔したこと、

全部それぞれが考えた「好きだからこそ」なのは、ちゃんと推しには伝わっていると私は思う。

私たちの推しはとてもやさしくて賢い人たちだから。

そして自粛したこともちゃんとコンサートの成功につながってるのだ。誰か一人でも無理を推して参戦していたらクラスターになってたかもしれない。だから行かなかったみんなの存在も、「すげー楽しい」って言ってくれてる推しの力にちゃんとなれている。全部落ちた人も「こんなに会いたいって思ってくれた人が存在してる」って示す証拠になれてる。

「ありがとうのギブアンドテイクが終わらない」の中に、teamの中に、一人残らず全員ちゃんと含まれているんだから、安心してていいと思うし、誰かを傷つけたり傷つけられたりする必要もない。大事な推したちにメンタルケアを求めなくても、彼らの仕事から元気をもらおう。見たくないものも見えちゃうし、届かなくていい声までとどいちゃうからSNSは難しいけど、同じ状況を分かり合える仲間もまたそこにいるから、離れきれない。どうしても呟きたいときはタグや推しの名前、固有名詞などをつかわない。鍵をかける。ふせったー等を利用するなど方法はあると思う。

早くファンの「好き」がそのまままっすぐ届けられるようにな世界になってほしい。この状況で広がったつながる場所の選択肢の多さを、今後上手に生かしてもらって、もっとたくさんのファンの笑顔が見れる状況になるとなお嬉しい。



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