【ARK 銘柄】 CRISPR Therapeutics incについて

こんにちは。まめです。
”まめ”に投資していくことを目標に日々頑張っています。

TL上に流れてきたCRISPRという単語に職業柄つい反応してしまいました。

ということで,$CRSPについての解説記事 (初めてのnote投稿でぶっこんだテーマになってしまいましたが) 頑張って書いていきます。
ARKのETFは私も興味があったので,自分の勉強のついでに他の方のお役に立てれば嬉しいです。

1. ゲノム編集およびCRISPR Cas9 systemについて

$CRSPではCRISPR Cas9 systemを用いてゲノム編集を行い,病気の遺伝子治療を行っています。

2020年のノーベル賞にも選出されたのでご存じの方も多いかと思いますが,超革新的なゲノム編集ツールとしてCRISPR Cas9 systemがUC Berkeleyのジェニファー・ダウドナ教授とウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ教授らによって2012年に報告されました。

CRISPR Cas9 systemではDNAを切断するハサミであるCas9と,それを目的の遺伝子部位に導くGuide RNA (gRNA) の2つの道具が使われます (下図 HP内の動画より引用)。
http://www.crisprtx.com/gene-editing/crispr-cas9
これを読んでから動画を見るとなんとなくわかるかも?

スクリーンショット 2020-12-23 3.10.44

gRNAの配列によって標的遺伝子部位 (original target DNA)にハサミであるCas9が到着

スクリーンショット 2020-12-23 3.11.40

この後
1. ゲノムの単純な切断

スクリーンショット 2020-12-23 3.12.12


2. ゲノムの切断による遺伝子組換え効率の上昇効果を利用した遺伝子の組換え (黄色い四角の部分が全く同じ配列になっていると組換えが起きるので真ん中の赤い四角の部分が遺伝子に組み入れられる)

スクリーンショット 2020-12-23 3.12.46


おもにこれらによってゲノムを自由自在に編集していきます


私もCRISPRを使って研究をしたことがありますが,非常に簡単なステップでゲノム編集を行うことができます。これぞArkが投資対象とする「破壊的イノベーション」にふさわしい技術であると思われます。


2. CRISPR Therapeutics incの事業

$CRSPではおもに4つのパイプラインを進行させています。
http://www.crisprtx.com/programs/pipeline
1. Hemoglobinopathies
2. Immuno-Oncology
3. Regenerative Medicine
4. In Vivo Approaches
それぞれどの段階まですすんでいるかが上記のページに掲載されています。

書いているうちに長くなってしまったのでまずは1. 2. について説明していきます。

Hemoglobinopathies
β-サラセミアおよび鎌状赤血球症の治療 CTX001
β-サラセミアと鎌状赤血球症は,赤血球中に存在して酸素運搬機能を担っている「ヘモグロビン」の遺伝子に異常が起きて貧血になる病気です。
鎌状赤血球症ではその名の通り,赤血球が鎌のような形に変形してしまいます。(HPに模式図があります。)
鎌状赤血球症が世界で300万人,β-サラセミアが世界で60万人ほどの患者数です。現状では治療に何回もの輸血が必要であります。また,重症の患者の治療に用いられる骨髄移植では,治療後に免疫抑制を生涯に渡って摂取しなければならない点が問題になっています。
とにかく治療が大変なようですね。。

β-サラセミアと鎌状赤血球症の原因はヘモグロビン遺伝子の変異であるので,ゲノム編集をしてその変異を治してしまおうというのがCTX001のコンセプトになります。

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患者から自身の血液から造血幹細胞 (血液のもとになる細胞) を採取してきて ,体外でCRISPR-Cas9 systemを使ってゲノム編集を行い (manufacturing location),その造血幹細胞を患者自身に戻すという流れです (上図 $CRSPのHPより引用)。

造血幹細胞は基本的に体外で培養することができるので,正しくゲノム編集が行われた細胞を選別し,その機能が理想的に働きうるかを確認してから体内に戻すことができるのがよいところではないでしょうか。

すでに1/2相の臨床試験が進んでいて
・戻した造血幹細胞が定着すること
・対象となった患者において機能的なヘモグロビンのレベルが正常に達し,そのレベルが一定期間維持されていること
・大きな副作用がないこと
などが確認されているようです。


また,この12月にNEJM (査読つきの医学雑誌) に論文が出ています。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2031054
こちらではβ-サラセミアと鎌状赤血球症それぞれ1例ずつにゲノム編集を行った造血幹細胞を戻し,1年以上経過したのちの効果を見ています。
どちらの症例でもゲノム編集を行った造血幹細胞から血液ができており,輸血が不要になっています。また鎌状赤血球症の例では血管閉塞症の消失が確認されました。

現状では思わしい治療効果が見られているのではないでしょうか。
これからの臨床試験の進み具合が楽しみですね。
プレスリリースを読んでいる (○眺めている) とまずはこの事業が主力となっているのでしょうか。ほとんどこの事業に関するものでした。

Immuno-Oncology
がん免疫療法

がん免疫療法はその名の通り体に備わっている免疫の力 (=異物を排除する力)を利用してがんを攻撃する治療法です。
CAR-T細胞療法と呼ばれる方法を使っています。CAR (chimeric antigen receptor キメラ抗原受容体) という特別なタンパク質を作り出せるようにT細胞 (異物を攻撃する細胞) を改良します。改良された細胞をCAR-T細胞といいます。CARはがん細胞を認識することができるため,CAR-T細胞はがん細胞を特異的に攻撃することができます。

CAR-T細胞の作製時にゲノム編集が必要ですが,CRISPR THERAPEUTIDCS inc. ではこのときにCRISPR-Cas9 systemを使用しています。
CTX110 120 130の3つのプログラムが動いているようです。

https://www.clinicaltrials.gov/ct2/home
でそれぞれを確認すると

CTX110はB細胞性慢性リンパ性白血病・非ホジキンリンパ腫・びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の3つのがんを対象としています。
CTX120は多発性骨髄腫を対象にしています。
CTX130は末梢性T細胞リンパ腫・腎細胞癌を対象にしています。

いずれもRecruitingになっています。

また,1つのプログラムで複数のがんにまたがっているのは,標的とするがん細胞の細胞表面抗原 (細胞の表面にあるタンパク質) が同じ種類であるからだと思われます。

がんの分野は競争が激しく,CAR-Tだけでなく他の治療法も含めながらどのように優位性を築いていけるのかが鍵になると思います。


3.おわりに

調べるものの分量が多く書くのが大変でした。他の銘柄解説を書いている方たちの凄さがよくわかりました。
この記事で$CRSPのやっている内容がなんとなくでもわかってもらえたらと思います。

まずはここまでを公開します。後半がかける気がしないです。。。。


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