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安保関連法の強行採決から5年

『安倍さんだけがいなくなればいいのではありません』

私たち「安保関連法に反対するママの会 信州」は、この9月で立ち上がってから5年になります。
長野県に住むというだけの、もともと知り合いでもなく年齢も価値観も違う私たちがこうして繋がり声を上げるきっかけになったのは、ほかでもない、2015年9月に成立した法案、安全保障関連法でした。

あるママは、政治のことは知らなくてもいい、心が平和でいられたほうがいい、と考えてきました。
けれど同法案が大切に育てている自分の子を戦争に駆り立てるものになってしまうと気づいたとき「知りたい。知らなくちゃ。」とつよく思い、安保関連法から、市政や教育、福祉……と関心が広がって、価値観が変わりました。

あるママは、過去に畑を耕しながら「平和だなぁ」と、心から感じていた自分を「あの時、平和だったのは私だけだった。」と虚しく思い返します。
酷い決め方で可決されていく法案。人の命をかけることを真面目に審議しているとはおよそ思えない大臣達の答弁。
知れば知るほど、怒りが募りました。
そして政治が他人事ではなくなりました。

あるママは、安保法制に賛成する人の発言を聞くうちに、戦争というのは差別なのではないか、その気持ちが法制を正当化するのではないかと感じ始めました。
安保関連法に反対するママの会の掲げる言葉「誰の子どももころさせない」それだけが理由でいい、差別したくないなら迷うことはないと行動を決めました。

あるママは、いつもニュースを見ながらどう考えたらいいのかわかりませんでした。
自分で調べて「学校で今まで教わってきた事がひっくり返る」と気づき、子どもたちに、今まで教えてきた「人を傷つけたらいけないよ」という倫理に反している、子どもに説明できないとつよく感じました。

あるママは、疑問や憤りをずっと感じながらも自分と同世代のママと政治の話で繋がれず、孤独感の中にいました。
女性が、母親が、政治のことについて語ることのむずかしさ。声を上げることによる弊害。それもこの5年の間に私たちが感じてきたことの一つです。

さまざまな生活の中から気づき、学び、怒り、落胆し、それでも繋がってきた私たちが共通する思いは同じです。
これからの時代を担う子どもたちが、心も体も健やかに、笑顔で幸せに過ごせるような社会にしたい。

安倍首相が辞任し、7年8ヶ月という長期政権が終了しました。
この間に政治と私たちの暮らしも大きく変化し、状況は悪くなっていると感じます。
5年の間に私たちは学びました。
政治のこと、戦争のこと、歴史のこと、そして憲法のこと。
過去のあやまちを経て決められた、国民主権をうたい、権力を縛るいまの憲法。
一人ひとりの命を尊重する憲法を変えさせたくない。その思いで安倍政権の退陣も訴えました。

けれど、安倍首相がいなくなればいいわけではありません。
誰が権力を持とうと、私たちが絶対に阻止しなければならないのは、人を見なくなる政治、個人を大切にしない社会、お互いを尊重しあわない国です。
子どもたちのためにも自分の幸せのためにも、それがなくならないかぎり同じことは続いてしまいます。
為政者が「自助」「共助」を強調し、自己責任ばかりを押し付け弱い立場の人を切り捨てるような政治はいりません。責任を持って「公助」を充実させ、誰もが幸せを感じる生活ができるような政治を望みます。

5年前にまだ幼かった子どもたちは成長し、思春期を迎えるまでになりました。
この5年をふりかえり、政治は生活の一部でありタブー視することではないと、改めて思います。
忘れてはいけないのは、私たち国民全員が自分ごととして考え続けること、思考を止めないこと。
そして寛容さも大切ですね。

子ども達、孫達、その次の世代の人々が、未来で自分らしく生きることを謳歌できますように。大輪の花を咲かせられるように。
私たちは、社会を、政治を良くすることをあきらめません。
子どもたちのように私たち大人も成長して、変えていきたいと思います。
私たちは、声を上げ続けます。
これからも。
「だれの子どももころさせない」

2020年9月19日
安保関連法に反対するママの会 信州

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