骨折さん

※痛ましい画像が含まれているので苦手な方はそこをスルーしてください

1.熱中症に気を付けてたら別の理由で119番に

 知ってる人も多いかと思いますが、2022年7月末に腕を骨折しました。
 そして本日の診察をもって、通院終了。
 というわけで事の始まりである一年半前からを振り返ってみようかと思います。

 忘れもしません。
 殺人的な暑さの7月末。
 河川敷の多面式グラウンド。
 川から直接流れてくるスチームのような湿り気に息苦しさすら覚える。
 そんな中行なっていた草野球の練習試合でした。
 二番手投手として登板し、いつも通りピッチングをしていました。
 ツーストライクと追い込んで、仕留めようとしたときのことです。
 全力のストレートでねじ伏せてやろう。
 そう思って投げたその瞬間。

バキン。

 遥か後ろを守るセンター選手にまで届く破砕音。
 気づいたらその場に倒れ込んでました。
 そのとき目に飛び込んできた光景は今でも脳裏に焼き付いています。
 右腕が曲がるはずのない方向に曲がっていたのです。
 想像を絶する痛みに立ち上がることもできずただ悲鳴を上げるばかり。
 チームメイトに担いでもらってなんとかグラウンドの外へ移動できました。

 救急車を呼び、数時間後に搬送された病院で新た診断は上腕骨の骨折。
 いわゆる投球骨折。
 トップを作った後、加速期の外旋動作で腕が捻じれ折れた形となります。(野球わかる人なら伝わるはず)
 当時はあまりの痛さにどこが具体的に痛いのかわからず、最初は膝の脱臼か三頭筋の完全断裂かと思っていました。
 まさか骨折しているとは。
(ちなみに一昨日キャッチャーの子にその話をしたら「脱臼はないなって思ってましたよ。だって明らかにヤバい音鳴っててましたもん」と言われました)

 ちなみにどんなふうに折れていたのかはCT画像貼っておくので、それを見ていただければと。


 素人の自分でも画像見た瞬間「あ、手術やわコレ」って思いました。
 機械に挟まれたり事故にあったりしたわけでもない。
 ただボールを投げただけ。
 己の体から発する力だけでこうもバキバキになるのかと感動したぐらいです。
 過去に野球肘で手術をしたことがあり「また手術か……」とちょっとがっかりしました。
 その手術に代償があるものとはそのとき知る由もなく……。

2.通院開始

 週明けの月曜日、急遽仕事を休んで大きな病院に行きました。
 そこでされた話をまとめると以下の通り。

・腕が20度以上曲がっていると確定で手術。
・現在腕の角度は17度。かなりギリギリ。
・そもそもこんなにバキバキなので手術なしで骨がくっつくのか読めない。
・手術となった場合、橈骨神経をプレートが圧迫することになるので指を伸ばしたり手首を反らす動きに麻痺が出る


 最後の話を聞いて思ったのが
「…………ヨーヨー、できなくね?」
 でした。
 それらの動きで麻痺が出るってけっこうキツい。
 いやそもそも仕事でPCを使うし、日常生活でも地味な障害となりそう。
「手術はしんどいし嫌やけど、骨折なら骨くっつけば元通りやな〜」とか甘いことを考えていただけに、地味にショックでした。

 担当の先生からもどうするか聞かれたのですが、答えは当然「手術しない」
 ギリギリまで様子を見て、もしダメなら手術をするという方針になりました。
 
 結果的には11月末ごろにようやく安全ラインまで回復したので、手術をせずに済みました。
 それまでの四ヶ月間、診察のたびにレントゲンを見るお医者さんの表情が険しかったのは今でも覚えています。
 本当に悩ましいギリギリの判断だったんでしょう。

3.担当医交代

 固定装具が外れ、リハビリも開始し。 
 日常生活でも両手を使い始め、数か月ぶりに寝返りが打てる喜びに浸り、腕が完全に上げられない状態でAXEL YO-YO CUPに出場したりしていると、あっという間に月日が過ぎました。
 そんな中、2023年の4月に担当の先生が変わることとなりました。
 その最後の診察はいつも通り淡々と、それでいて丁寧に行われていました。
 そして一通り終わり、診察室を出ようと椅子に立ち上がりかけたとき。
「最後に一つお聞きしたいんですけど」
 少し怯えているような、いつものハキハキとした話し方よりもやや弱々しい声で。

「本当に手術せず、固定のみでよかったですか?」

 そのとき、診察のたびにレントゲンを睨む険しい表情が想起されました。
 ギリギリの悩ましい判断だったようです。
 他の医者なら即手術に踏み切っていてもおかしくない。
 本当にこれでよかったのかというのがずっと心に引っかかっていたんでしょう。

 これは恩を返す最高の機会だ。
 そう思い、自分はできるだけ明るい声と表情で
「はい、本当によかったです。ありがとうございました」
 と答えました。
 それを聞いた先生はようやく初めて顔を綻ばせました。
 恩返しができてよかったです。

4.謝罪

 そしてさらに時は経ち2024年3月。
 一昨日草野球の試合に参加しました。
 骨折以降三度目の試合です。
 しかもその相手は一年半前、腕を折ったときのチームでした。(16面もあるのにグラウンドまで同じでした)
 草野球人にとって週末の試合は大きな楽しみの一つ。
 せっかくの休日を台無しにしてしまったので、試合後「あのときは試合中断してしまってすみません」と謝りました。
 すると相手チームの一人から「いえいえ、また無事に野球できるようになったみたいでよかったです」と言っていただけました。
 その方は腕が折れたときに打席に立っていたバッターだったのです。
 最終回でマウンドに上がったときに「あ、あのときのピッチャーだ」と覚えてくださってたようで。
 ピッチングで無事を伝えられてよかったです。
 あのとき中断した試合をこれでようやく終わらせることができました。

5.卒業

 そして今日、最後の診察でした。
 いつも通り受付に行って、いつも通りレントゲンを撮って、いつも通り診察室に入って。
「もう大丈夫ですね」
 去年の四月から新しく担当になった先生に言われ、無事卒業。
 「ありがとうございました」と言いながら診察室を出ると自動精算機で支払いを済ませ、病院を後にしました。
 
 終わりはなんともあっさり。
 でもそれは何事もなく無事怪我が治ったという何よりの証拠。
 これにて骨折さんも終了です。

 そんな今日が晴天だったあたり、つくづく自分はついているなあ。


6.おまけ話

 自分の骨折を皮切りに、怪我をするヨーヨー人が続出していたような気がします。
 足の骨折、指の先端の切断、指の骨折、半月板損傷。
 世界大会のときは腕を骨折した男の子とその親御さんに声をかけられるなんてこともありました。
 みなさんも怪我には気を付けて、良きヨーヨーライフを……。

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