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「Maison book girlは削除されました。」

2021年4月2日22:00頃ヒューリックホール、Maison book girlのワンマンライブSolitude HOTEL 404が発表されたのはその時だった。日付は5月30日、その時既にライブの特設サイトで始まっていたカウントダウンが0になる日。4時間かけての全曲公演Solitude HOTEL 9Fを見た直後十分打ちのめされていたところにこの発表は、正直混乱していたと思う。Solitude HOTELと題したワンマンライブの10回目。「9Fはむしろなくてもいいかな」とサクライさんが言っていたのに9Fはあって、10階はなくて10Fにはならなくて404。そして0になると同時に見つからなくなっちゃうのか、それってつまり…と当然思ってしまった。 

Maison book girl(以降ブクガ)の解散説が囁かれ始めたのはベストアルバム「Fiction」の発売が決定した頃だ。ベストアルバムを出すと解散する、よくあるジンクス。それでもこの頃はブクガに限ってそんなこと…と思っていた。が、ベストアルバムは新型コロナの影響で一旦発売延期、ツアーも中止となった。それ以降のブクガはメンバーのスキルだけでYouTubeLiveでトーク配信をしたり、Amazon primeVideoでの番組配信が始まったり、無観客配信ライブを単独で3本もやったりと想像以上に活発に活動した。エンタメが死にかけていてもブクガはかっこよく時代を駆け抜けてて頭ひとつ抜きん出てるとすら思えたし、それらはコロナ禍の中での支えであり刺激だったと思う。 Solitude HOTEL 404(以降SH404)のMCで本当はこのライブももっと早くやるはずだったと言っていた。あのコロナ禍の期間の活動は、もしかしたら寿命が伸びたことによるあるはずのなかった時間だったのかな。そうかもしれない。配信ライブで表現を見せつけたあの様からは未来への可能性ばかりを感じていたのに。

 ずっとコショージの「ブクガに解散ライブは似合わない」という言葉が残ってる。その言葉を見た時からずっと。きっとブクガはあれが最後だったんだって、その時になって分かる終わり方をするんだろうなって、漠然と、というより確信めいたものがあった。 SH404が発表されて以降、ブクガの公式サイトは徐々に崩れていった。ポジとネガの反転、人間の形を保たなくなったアー写、バラバラと崩れていくリンク先。そして消されていくTwitterとInstagramの投稿。解散説は依然として囁かれていたが、ブクガを好きな人たちはみんな素直に受け取っていいものか戸惑いもあった気がする、わたしもそうだった。こんなに綺麗に解散するものか?と思うくらいにはこれまでの活動は攻めた、ある意味突き放したものばかりだったし、いつだって明確な答えなんてくれなくて大事なことは見る側に委ねてきた。解散と見せかけて実は…みたいなことをブクガならやりかねない。でも、変わっていく公式サイトに、毎日0に近付いていくカウントダウンに、少しずつ覚悟を積み重ねていたんだと思う。ブクガは解散なんて事前にはっきり教えてくれないから。そういうグループで、そういう姿を好きで見続けてきたから。自分で勝手に考えて勝手に消化しなきゃいけないから。今になってみれば、散々突き放すかのような表現や演出をしてきたブクガが歩み寄ってきて伝えようとしてくれていたあれは、やさしさだった。 

色んな人が突然終わったと言っているのを見た。確かにわたしたちはライブ終演後に公式サイトにアクセスして初めてそこで「Maison book girlは削除されました」の文字を見た。Blu-rayの特設サイトで初めて「Solitude HOTEL(最終公演)」の文字を見た。音楽ナタリー公式Twitterの「Maison book girl活動終了」のツイートでようやく確信した。でも突然なんかじゃなかった。ちゃんと仄めかしてくれていた。開演前のコショージのツイート「今日はひとつ残らずみんなにあげます」「全部持ってってね」「ありがとう」だってそう。SH404の1曲目とラストの曲が「last scene」だったのだって。 

少しずつ仄めかして綺麗に去って行ってしまった。SH404の会場は舞浜アンフィシアター。夢の国のすぐそばで、「僕らの夢はいつも叶わない」と去って行ってしまった。

去り方があまりにも綺麗すぎてすごく鮮烈に残ってる。Maison book girlという存在が、わたしのなかに鮮やかに焼き付いてしまっている。それが少し嬉しい。悲しさも寂しさもある、悲しさや寂しさを感じていることが、悲しさや寂しさを抱えて生きていくことが、なぜか少し嬉しい。悲しさや寂しさがあるということが、Maison book girlがわたしの中に削除されずに残っているということの証明のようなものだからなのか。 この終わり方を選んだこと自体は案外すんなり受け入れらている。これが最後だったんだ、って後から分かる、そんなのはとっくに覚悟ができてた。終わる時までブクガがブクガらしくいれたこと、こんなにも美しく終わったことを誇りに思っている。これがMaison book girlなんだよって。責めたりしないよ、酷い仕打ちなんて思わないよ、最後までMaison book girlでいてくれてありがとう。

そんなMaison book girlが大好きだ。 

ありがとう。 

それでもね。 

なぜ前半パートでSH4Fを踏襲したのか、ブクガ公式TwitterにSH4F以前のツイートだけ残されているのはなぜなのか。説明なんてないから考える。ポエトリーリーディング「眠れる森」での一節「物語は巻き戻った」。SH4Fというライブはまさに巻戻りそのものだった。ならば、SH404は?巻き戻ったとして、どこへ。non Fictionでの一節「僕を見つけて」。きっと、ずっと、考える。考え続ける。見つけるよ。

 ブクガがブクガらしく最後を迎えられてよかった。「僕らの夢はいつも叶わない」それがブクガの「last scene」だったけれど、いつでもいい夢を見せて貰っていた。これからはそんな夢と、悲しさと、寂しさを抱えて生きていく。思い出したり、忘れられなかったりしながら。

 「Maison book girlは削除されました。 あなたが探していたものは現在このアドレスには存在しません。 ここには何もありません。 コンパクトディスク及びインターネット上のミュージックアーカイブは一部を除き削除されません。引き続きお楽しみください。」 

ありがとう。「僕らの夢はいつも叶わない」、その続きの歌詞は「鍵が開く音に目を覚ます」だから。さようならは、言えない。

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