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ASD(自閉症スペクトラム/旧アスペルガー)の息子を持つ母が見たミュージカルモーツァルト!の世界

■最初はただ好きだから見ただけ■

ドラマきっかけで山崎育三郎さんのファンになった私は、これまで推しとなってきた多くの俳優さんの「関連作」を見るのと同じ、軽い気持ちで「ミュージカル モーツァルト!」(2015年版DVD)を見ました。

育三郎さんが「モーツァルト!」で第36回菊田一夫演劇賞・演劇賞を受賞されたという話は聞いていましたが、正直どんな賞なのかも知らないし、それ以前にミュージカルというものを観劇したことすらなかった私。

いくつか発売されている育三郎さん出演のミュージカル作品の中から、モーツァルト!を選んだのも主演で出ずっぱりだから、イケメンイケボを満喫できるという、とっても素直で欲丸出しな理由から。

でも、実際に見始めて、彼の演じるモーツァルト(ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト)が登場し、一曲歌い終えるあたりにはもう

あれ…なんか 息子(のもつ独特の雰囲気)に似てる

そう感じていました。


■天才児(ギフテッド)の生きづらさ■

モーツァルトは「天才児」であったことは有名ですから、演劇用にフィクションを被せたキャラクターにはなっていても根本にある特性はそのまま表現されているはず。

天才児のもつ特徴には以下のような共通点があると耳にします。

よくしゃべる(言葉が早い)
・好奇心旺盛
・並じゃない記憶力と理解力
高い集中力
・心と体、知的能力の発達がアンバランス
・出来る事と出来ない事の差が激しい
社会性に欠ける(相手の立場と他者の感情を考えて行動することが苦手)
過興奮性(刺激に対して強い反応を示す性質)
・空気が読めない
・発想がユニーク
などなど

上記を見て、すでにモーツァルト!をご覧になった事がある方なら
ヴォルフガングじゃん」と、思われた事と思います。
神童と呼ばれ、並外れた才能を持ちながら、靴の紐も結べない、あの彼を。

物語のあらすじを読むと「モーツァルトが厳しい父と衝突しながら、貴族社会に歯向かい、持って生まれた才能を活かそうと奮闘するお話」と取れますから、お話としてはそうなんだと思います。

けれど天才モーツァルトが生涯において苦しみ、戦い続けたのは

「生きづらさ」ではなかったのでしょうか。
(これはあくまで、私個人の感想です)

才能の化身「アマデ」(幼少期のモーツァルトの姿をしている)は神様からのギフト
そしてそのギフトを持つ代わりに、欠けてしまったものが多くあった。
一般人のいわゆる「並」の感覚、社会性があり、周りに合わせて無難に生きる力

ヴォルフガングは周りに迷惑を沢山かけるけれど、それは彼の性格が悪いわけではなく天才児の特性によるものではなかったかと思えるのです。

彼の少年のような純粋な心

「並の男じゃない」ヴォルフガングの生きづらさが、天真爛漫な育三郎ヴォルフガングから、にじみ出て見えました。


■ギフテッドと発達障がい■

ASDADHD発達障がいギフテッド(天才児)は異なるとされていますが
ギフテッドの子が持つ特性と、ASD(旧アスペルガー)の息子の持つ特性はとても似ています
知的に高いというまれさ+発達障がいというまれな特性を重複して持つ子もいて
「二重に特別」という意味で「2E(twice-exceptional)」と呼ばれるそうです。

真実かどうかは分かりませんが、モーツァルトにはADHDの特徴が見られたともいわれています。

モーツァルト!の脚本や演出がそこまで考えて作られたものなのかどうかは分かりません、が、人とは違う生き方しかできない特性を持った息子を持つ母が見て、育三郎ヴォルフガングは自然で、嘘のない「天才」でした。

私は息子が生まれてこれまでずっと、他の子には感じないある独特の雰囲気を感じています。
よくしゃべり、明るくて、一見普通に見える我が子。
でも、こちらから話しかけた事に対する反応がどこか遠く遠く突き抜けてしまって
彼の小さな見た目からは想像できない、一般の感覚では理解しにくい答えが返ってきたりします。

幼い笑顔と内面に持つ複雑な特性とのギャップ

その独特の雰囲気を、育三郎ヴォルフガングからは感じたのです。

モーツァルトの人となりを調べ、寄せようとしてああなったのか
それとも、彼もまた天才であって、本性からにじみ出るものなのか
どちらにせよモーツァルトそのものだと称される理由が分かりました。

天才が演じる天才です。

それは歌唱シーンでも感じます。


■ミュージカルでの歌い方■

私は歌手、山崎育三郎のファンでもあります。
コンサートで生の歌声を聴いた時は、まるで空から星屑が降り注ぐようだと感動しました。
「歌」として聴かせるテクニックも実力も本当に素晴らしい方なのです。

ただミュージカルで歌う時は「セリフを歌う」のだとおっしゃっていました。

どういう意味なのかよく分かりませんでしたが、実際にミュージカルでの歌を聴いて納得。
歌唱力だけに頼らない、役の感情を伝えるための歌い方。
演技と歌とが入り交ざっても違和感がないよう、程よく調整された声と音色で歌われていたのです。

この絶妙な匙加減が、やはりミュージカル界のプリンス(天才)なんだなと思いました。

それはとりますよね、有名な賞も。


■親目線で見るモーツァルト!■

レオポルトパパは息子ヴォルフガングを愛している
でも、天才児の持つ凸凹の凹の部分性格や、精神が未発達なせいだと思っているから
本当の意味で「そのままの彼」理解することが出来ません
誠実に生きる事、社会性を学ばせようと厳しく接します。彼を守るために。

対する息子、ヴォルフガングは
生まれつき持っている天才児の特性ゆえに、目の前のことに集中する力はあるけど、先を見通す力や、他者の気持ちを汲み取る力が弱く、好奇心旺盛で刺激を求めがち。その行動が、考えなしの自分勝手と見られてしまいます。

彼には周りを困らせているという自覚はなく
何故自分がこんな生き方しかできないのかも分かりません。
ただ自分の信じる道を進み、怒っているパパも
自分が音楽で成功すればきっと喜んでくれる
褒めてもらえるはずだと全力で頑張ります。

お互いに愛し合っているのに
理解し合えない2人。

やっとの思いで自分の音楽が世間に認められ
パパに喜んで貰えると信じて成功を伝えたのに
パパは息子の身勝手さに疲れ、離れていってしまいます。

パパが去った後に、取り残されたヴォルフガングが歌う

「何故愛せないの?」

少年のように純粋な心が傷つき、そのままの自分を理解して貰えない事を嘆き、父親の愛を求めて泣いている。

ヴォルフガングの感情そのもの
歌声と共に流れ込んできます

もうヴォルフガングが息子に見えてしまい
理解し合えない親子の悲しさに、毎回泣いてしまいます。


■凸凹ではなく凹凹夫婦?■

ヴォルフガングと、その妻コンスタンツェはどこか似ている気がします。
お互いに魅かれあい、愛し合っていたけれど
コンスタンツェもまた自分の中に課題を抱えていたように思うのです。

ダンスへの依存、浪費、怠惰毒親に育てられた事による心の傷

心に余裕がなく、何かが欠けている
2人の足りない何かも似ていて、欠けた部分を補い合う事ができなかったのではないでしょうか。

そしてコンスタンツェもまた
天才の特性を持つ「そのままの彼」を理解する事ができなかったのだと思います。


■6月6日2021年版モーツァルト!奇跡のLIVE配信!■

コロナ禍で一部中止になってしまった今期のモーツァルト!

私は運良く4月に一度、帝国劇場で観ることが出来ました。
2015年版の少年のような育三郎ヴォルフガングに惚れ込んだ私は、
6年後の彼の姿が成長しすぎていないかやや心配でした。が、
2021年版の彼もやはり少年のように無邪気で天真爛漫
むしろ若返っている?

さらに二幕の晩年には年相応に貫禄も追加され、より完璧なモーツァルトとなっていました。

初めて生で観たミュージカル
育三郎ヴォルフガングの圧倒的な存在感
生のオーケストラ演奏、響き渡る歌声、細部まで作り込まれた衣装、市村正親さん含め、脇を固める超一流のキャスト

全身が震えるほどの感動でした。

こんなに贅沢で豪華な舞台が日本にあるのか
正直驚きました。

ぜひ一度観てみてください…と言っても
実は育三郎ヴォルフガングのモーツァルト!
人気すぎてチケットがなかなか取れません

取れたとしてもS席で14,500円A席でも9,500円
一般的なお芝居の舞台よりは少しお高いのです。
オーケストラ演奏ですし、舞台の豪華さ、クオリティの高さを考えたら妥当なお値段ですが、庶民が軽く買えるお値段では無いと思う庶民な私

しかし!

今回なんと!!LIVE映像配信される事が決まりました!!

しかも!!GoToイベント適用で、お値段なんと4,400円!!!

古川ヴォルフガングの配信と両方見ても
A席分の料金よりお安く、さらに今回アーカイブ配信もあるため
期間中は時間の許す限り観る事ができます!!!

これまでミュージカルモーツァルト!が配信されたことは無いと思います。
今後もあるかは分かりません、というか権利的な問題で難しい演目だと思います。

あったとしても育三郎ヴォルフガングがまた観られるか分かりません。 

今回の配信日は大阪で行われるはずだった2021年版育三郎モーツァルト!の
大千穐楽なので、少なくとも2021年版はこれが最後の公演となります!!

この貴重な機会をどうぞ、お見逃しなく!!!

■歌手 山崎育三郎■

先ほど、歌手として「歌」を聴かせるために歌う育三郎さんも
素晴らしいとお話しましたが、本当に、とってもとっても素敵なのです。
そして実力派の彼だからこそ実現したスペシャルなコンサート

フルオーケストラ×山崎育三郎 SFIDA がいよいよ開幕となります!!

こちらもぜひ、チェックしてみてくださいね!


★最後に★

今回書いた感想は、あくまで私の個人的な考えです。
ASDのある方でも、性格も人それぞれ
持っている雰囲気も違います。
たまたまうちの息子が、育三郎さんの演じるモーツァルト!に
似ていただけというただの自慢話である可能性も大いにあることだけ、補足しておきますね。

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