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音を求めて三千里。

ここはとある一室、二人の男女が炬燵を囲んで音楽話に花を咲かせている。
傍にはハチワレの猫が一匹、眠いのか欠伸を一つ。
女が言った。
「SNS見てるとさ、たまに、これが求めてた音だ!とか、求めてる音が作れないとかいうツイート?意見がちらほら目につくんだけど、求めてる音ってなに?」
男が返す。
【何だろうね、それってギターとかベースの話だよね?】
「そうそう、音が作れないって何??音って作れるの?」
【そうだね、アンプのイコライザーとかいじるのを作るって言ってるんだと思うよ。】
「イコライザー?」
【うん、アンプから出る音の周波数を変化させる機能のことだよ。】
「ふーん、そのイコライザーで周波数を変えると音が変わって、それを音がどうこうとか言うの?」
【他にもエフェクター繋ぐと音って微妙に変わったり、音が太くなったり痩せたりラジバンダリ。】
「太く?痩せる?」
【音がさ、太くなるらしいエフェクターがあるらしいんだよ。】
「らしい?」
【うん、よく知らないから、らしい。】
【そもそも太い音が鳴らしたいなら、弦を太くすりゃいい。】
「そうなの?」
【ギターよりベースの方が太い音するでしょ?】
「あぁ、わかりやすい。」
「あと、痩せるってなに?」
【痩せるのはギターからアンプまでの電流が少なくなるからじゃないかな?】
【音が細くなるみたいな感じを痩せるって言ってる人がいる。】
「みたいな感じ?」
【そういう太い音とか音が痩せるとかって、その人によって何を指して言ってるか変わってくるから、断定的な意見は言えないんだよ。】
「そうなんだ。」
【この言葉はこの事って誰かが決めてくれたらわかりやすいんだけど、感覚で言ってる人がほとんど。】
「感覚ね!」
【だから、音を作るってのもその人なりの表現で、何をどうやってるのかはわからない。】
「ふーん、なるほどねー。」
【まぁ、アンプ通して出た音が好みの音じゃなくて、イコライザーいじったり、エフェクター繋げていじったりして理想の音を作るのに頑張ってる人が、音が作れないとか言ってるんだと思うよ。】
「なんか、わかってきた!」
【ちょっと考えてみたんだけど、ギターがあるじゃない?】
「うん、あるじゃない。」
【そのギターはそのギターの音が鳴るじゃない?】
「そうだね、あたりまえだのくらっかー。」
【アンプに繋いで音を出すとギターの音とアンプ特有の音が混ざった音がするでしょ?】
「そうね。」
【それで、間にエフェクターなんか繋ぐと、そのエフェクター特有の音も混ざる。】
【で、出る音は、ギター、エフェクター、アンプ特有の音が混ざった音。】
「うん、そうなるね。」
【そしたら、もうそれがそのギターエフェクターアンプセットの音なんだよ。】
「そうなんだ、音は作らないの?」
【うん、作らない。】
【それで納得する音が出ないなら、ギターなりアンプなりエフェクターなりを変える。】
「機材全否定じゃん笑。」
【てか、求めてる音ってなんだよ?】
「夢追い人なのでは?」
【夢か笑。】
【まぁ、その求めてる人が納得するならイコライザーいじるなりなんなりすればいいよ。】
【でも、そんな変わらんだろ?】
「変わらないの?」
【変わるっちゃ変わるけど。】
「変わるんだ笑。」
【何をそんなに求めるのさ?】
「なんだろね?」
【艶っぽさとか?】
「また新しいのでてきた!」
【立体感とか?】
「そういうのわかるの?」
【それか!求めてる音の正体は憧れのミュージシャンの音か!】
「あぁ、聴き比べ?」
【それは終わりのない沼への招待状だぞ!】
『にゃおーん。』

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